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49、まさかの展開

「オモチさん、ごめんね」


 コンセプトカフェを出ると、ラムネさんは私に謝った。ごめんの意味がわからないけど、どうしよう。でも、彼女は何かを話したいように見える。


「ラムネさん、何か話があったんですか?」


「うん、ちょっと歩かない?」


 私が話を聞く気になったとわかると、ラムネさんの表情は、明るくなったように見えた。気分屋なのかな。



 ラムネさんは、携帯機を見ながら歩いている。この世界に二年も居るのに、まだ道を覚えてないのかな。あっ、別の街から移ってきたのかもしれない。


 大きな公園に繋がる遊歩道を、ラムネさんは進んでいく。あまり人は居ない。彼女は人の少ない場所を探しているのかな。



 公園に入ると、ラムネさんは、やっと立ち止まった。ここって、デートコースなのかな。女性同士なのは、私達だけみたい。居心地が悪いな。


「オモチさん、ごめんね」


 また、謝った。


「さっきから、何を謝ってるんですか?」


「あのね、断れないんだよ。理由も話さない契約になってる。だから、謝っておく」


 何? 私は嫌な予感がした。私は、ラムネさんに、ここに連れて来られたの?


「私、そろそろ帰りま……」


 えっ? 何? 引き返そうとしたのに、身体が動かないし、喋れない。ラムネさんの手が淡く光っている。もしかして魔法?




「遅かったじゃないか、ラムネちゃん」


 この声は、カイル? 


「ええっ? 拘束したの? オモチは、俺のフレンドなんだよ? 乱暴なことは、しないで欲しいな」


 私の後ろに人の気配がする。だけど、身体が動かないし、喋れない。ラムネさんは、私の顔を見ない。


 私の視界に、レオンが移動してきた。服は、もう王子様ではない。私の腕を掴むと、パチンと指を弾いた。動こうとしていた私は、倒れそうになる。レオンが抱き止めてくれたけど、私の頭はチリチリしていた。


 私は、罠にハメられたんだ。油断した。ラムネさんのことは警戒していたのに、暗い表情をしてるから、気になって……。



「オモチ、大丈夫? そんな怯えた顔で俺の腕の中に飛び込んでくるなんて、やっぱり可愛いねー」


 私は慌ててレオンから離れようとしたけど、ガッチリと掴まれていて動けない。


「レオンさん、離して」


「どうして? フレンドだろ? あぁ、心配しなくても、唇を奪ったりしないよ。恋人にはならない。俺達と遊ぼうよ。俺、アース星の子は好きなんだ。特にアース星の主人公なら、変な魔法を使わないからね」


「キスはしないってことですか」


「あぁ、唇にはしないよ。恋人になると、24時間も一人に縛られるだろ? そんな愚かなことをするわけがない」


 どういうこと? 何も考えられない。だけど、これは危険だと、頭がチリチリしている。



「私は、ウィルが……」


「ウィルはやめておく方がいいって、教えてあげたよね。酷い目に遭いたいの?」


「嫌っ!」


 私は、レオンの手を必死で振り解いた。そして、公園から出ようと駆け出す。だけど……。



「逃げるオモチも可愛いな。鬼ごっこしようか」


「転移魔法を使う人と、そんなことできません」


 目の前の道を塞がれたから、私は遊歩道から外れた。だけど、どこに逃げればいいの? 周りにいる人達は、見て見ぬフリをしてる。まさか、本当に鬼ごっこをしてると思ってる?


 どこに逃げても、レオンは、すぐ目の前に転移してくる。こんなの、絶望しかない。ラムネさんの姿は、いつの間にか消えていた。カイルは、私が逃げるのを楽しそうに見てる。


 ありえない。こんなの。まだ、外は明るいのに。



「もう、諦めなよ。飽きてきたよ」


「レオンさんが諦めてください! 私は、ウィル推しです!」


「だーかーらー、ウィルは……」


 突然、レオンの表情が変わった。彼の視線を追うと……まさかのウィル? もう、ダメだ。逃げられない。




「キミは、こないだルナシティで、店の前でパンを食べてた子だよね? ウィル推しって聞こえたけど?」


「えっ? は、はい……」


「そうか。俺に会いに来たんだね」


 キラキラな笑顔。やっぱり、ウィルはカッコいい! ん? えっ? ええっ!?


 私、今、ウィルにキスされてる!?



「ちょ、ちょっと……」


 慌てて離れたけど、状況把握に時間がかかって反応が遅れた。3秒……ギリギリセーフ?


 ウィルは、自分の携帯機を出して、何かを確認している。


「オモチさんか。珍しい名前だね。この街には、まだアース星の子が残ってたんだな」


 ギリギリアウト!?



「ウィル、また、おまえ、俺達の獲物を横取りしやがって!」


「は? この子は、俺推しだぜ? 横取りしてるのは、おまえらの方だろ。オモチさん、行くよ」


 どこに? 


 私は、白い光に包まれた。身体が浮遊する直前、一瞬だけ、シャルルさんとセルさんが現れたのが見えた。助けに来てくれたんだ!


 だけど私は……。




 ◇◇◇



 ウィルの転移魔法で移動した先は、豪華な部屋だった。窓の外の景色には見覚えがある。ルナシティの王城だ。


「ここは、俺の私室だ」


「えっ? ウィルさんの……んっ」


 どうしよう。また、ウィルにキスされている。もう、私は帰れなくなるんだ。そう考えると、涙が出てきた。



「その身体は、まだ処女か?」


「は、はい……」


 しまった! こんなことを言ったら、逆効果だ。ラムネさんは以前、処女なら攻略対象が恋人になってくれるって言っていた。



 するとウィルは、私から離れた。


「俺に抱かれたいと思っているか?」


「いえ……私は、ミッション完了したら、自分の星に帰りたいです」


「子を作らなければ、ミッション完了で帰れるよ。もう一度聞く。俺に抱かれたいか?」


 どうしよう……。


 考えているうちに、私はウィルに抱きかかえられていた。気づけば、大きなベッドの上に寝かされている。


 ウィルの顔が近づいてくる。


「嫌っ!」


 私は咄嗟に、彼を押し返していた。



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