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41、せっかく会えたのに

 始まりのカフェの前にいた人達が私が通れるように移動してくれたことで、店内が見えた。


 新たな主人公はどの人だろう?


 私には主人公の放つ魅了魔法の光は見えないけど、人が集まっている場所よね? テーブル席の一つがすごい人だ。逃がしてあげなきゃ!



「オモチさん、どの席にしますか?」


 あっ、私の後ろから、入り口で話したフレンドさんらしき男性がついて来ている。


「すごい人だから、ここで食事をするのは、またの機会にしようかな。新たな主人公さんって、どの人でしょうか」


「そこで囲まれてますよ。意識するんですか? でも、オモチさんの方が可愛いですよ?」


 この人達は、完全に魅了魔法にかかってるな。


「意識というか、どんな人かなって……」



 ダンッ!



 テーブルを叩く大きな音が聞こえた。それに驚いたのか、店内にいた大勢の人達は、静かになっている。


「誰が、私より可愛いって!?」


 人をかき分けて、一人の女性が私の方に近寄ってきた。正確には、私とはまだ目が合ってない。私の周りにいる人達を睨んでいるみたい。


 とんでもなく強そうな女性だよ。私が助けに来る必要なんて、なかった。あっ、シャルルさんがすぐに店を出たのは、放っておいても大丈夫だと思ったのかも。



「あはは、いや、新しい主人公のエリーさんは、可愛いというより美人な感じだから」


 フレンドさん達は、タジタジね。エリーさん、か。


「そっちのお嬢ちゃんのことか? 主人公が一番じゃないのかよ!」


「彼女も、主人公なんですよ。この街には、5人ほどの主人公がいますからね」


 新しい主人公さんと目が合った。怖い。



「私はエリーだ。おまえも主人公なのか?」


「はい、エリーさん、初めまして。私はオモチと申します。今日で5日目の主人公です」


「なぜ、ここに来たんだ? 先輩ヅラをしたいのか? 言っておくが、私は、ロッコロッコ星から来た魔導士だ。さっきも変な女に絡まれたけどな」


 ロッコロッコ星? シャルルさんと同じ星だ。


「悪役令嬢に会ったんですか?」


「知らないね! 私が名乗ると偉そうにしやがったけどな。で? おまえは、何をしに来た? 主人公として自分の方が上だとでも言いに来たのか!」


 どうしよう。心配したと言うと、逆上されそう。


「私は、フリーミッションをしてて、ここが混んでいたから、何事かと思って……」


「ふん、見え透いた嘘はいらないよ! 私は、ロッコロッコ星の魔導士だと言っただろ? 全く警戒しないおまえは、アース星だね? もしくは、私をバカにしに来るってことは、イービー星か?」


 彼女は、手に光を集めてる。周りの人達が、慌てて離れていくってことは、魔法?



 えっ? 何? 強い光が迫ってくる!

 私は思わず、目を閉じた。怖い、どうしよう……。



 ふわっと、緩やかな風を感じて目を開けると、黒い背中が見えた。誰かが、身を挺してくれたの!?


「おまえ、突然現れたな? 私の邪魔をするのか!」


「主人公同士で、何をやっている? 店内での攻撃魔法は厳禁だ。俺には、くだらないケンカを止める役割がある」


 この声って……。


「は? この世界では、主人公が一番偉いんだろ? 主人公に口出しする悪役は、引っ込んでろよ」


「心配しなくても、あんたには関わらねぇよ。俺は、迷子の子猫を探しに来ただけだ」


「はぁ? 何を……」


 言い返そうとした彼女は、言葉を飲み込んだ。少し怯えた表情にも見える。



「オモチ、俺にどうして欲しい?」


 振り返ったのは、やっぱりセルさんだった!


「セルさん、助けて……んっ」


 私の言葉を遮るように、彼は私の唇を奪った。しかも、以前とは違う。こんな混雑した店の中なのに、激しいキス。


「んはっ……ちょ、セルさん!」


「あぁ、悪い。オモチの魅了が濃くなってたからな。ちょっと、酔った。だが、これでいいだろ?」


 わしゃわしゃと私の頭を撫でると、セルさんはスッと姿を消した。えっ? どういうこと?




「あちゃー、悪役だね、ほんと。オモチさんに話しかけられなくなってしまった」


「掻き乱すのが趣味なんじゃないのか? くっそ〜」


「オモチさんのメモリーが出たから、邪魔したかったのかもな。あの相手って、乙男オトメンの主人公だろ?」


 私と食事をしたいと言っていた人達は、互いにそう話していた。私には話しかけられないからか。私から話しかけることはできそうだけど……やめておこう。せっかく、助かったんだもんね。



 私は、携帯機を見てみた。だけど、セルさんの居場所は、もう圏外だった。


 セルさんは、私が助けてって言ったから、24時間の恋人になってくれたのよね? 何も言わなくても、私が強い魅了魔法を放っていたことは、わかっていたみたいだもの。


 でも、どうしてすぐに、私の前から消えたの? 忙しいのかな? セルさんに会えて嬉しかったのに、全然、話もできなくて……。




 私は、始まりのカフェから、外へ出た。みんな笑顔だけど、避けられていると感じた。笑われているようにも思えて、ちょっと辛い。



「ちょっと、アナタ! また恋人に捨てられたわけ?」


「あっ! シャルルさん!」


 私を心配して来てくれたんだ。


「ちょっと、来なさい。歩くわよ」


「シャルルさんは、私に話しかけられるんですね。来てくれて嬉しいです」


「悪役令嬢だからね。一緒に食事はできないけど、世間話をしながら移動することくらいはできるわ。そもそも、なぜ出歩いているのよ! サリィさんから、忠告されたでしょう?」


「新しい主人公が困ってるんじゃないかと思って……」


「はぁ? あの女が困るわけないじゃない。エリーと言ったかしら? ロッコロッコ星から主人公としてこの星に放り込まれるのは、ほとんどが罪人なのよ」


「えっ? 罪人?」


「ええ、ロッコロッコ星からの追放刑よ」



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