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42、月の王都ルナシティへ

「ロッコロッコ星から追放された人も、ゲーム舞台の主人公になるんですか?」


 シャルルさんと並んで歩きながら、そう尋ねると、彼女は軽く頷いた。


「アバターを身につけるから、主人公の間は、魔法が制限されるのよ。オモチさんはもともと魔法は使えないから、わからないと思うけど、魔導士だったとしても、ほとんど使えないよ」


 そういえば、そんな話を聞いたことがある。でも、さっきのエリーさんという新たな主人公は、魔法を使った。それにシエルさんも主人公だけど、魔法が使える。


 あっ、でも、シエルさんは、転移魔法などは使えないって言ってたっけ。主人公のアバターから放たれる魅了魔法のせいで、何かが不安定になっているとか。



「さっき、エリーさんは私に魔法を使ったみたいです。セルさんが突然現れて、防いでくれたけど」


「ふぅん、それでキスをして、立ち去ったってことなのね。主人公が始まりのカフェにいた人達と話す機会を完全に邪魔した、悪役らしい行動だわ」


 えっ? セルさんが悪いんじゃないよ。


「私が、助けてって言ったから……」


「わかっているわよ、それくらい。なぜ、オモチさんは不安そうな顔をしていたのかしら?」


 シャルルさんは、強い口調だけど、その表情は優しい。


「せっかく会えたのに、すぐにどこかへ行ってしまったから、その行動の意味もわからなくて」


「オモチさん、恋人ミッションが出たのは昨日なのよね?」


「はい、昨日の昼食のときに気づきました」


「恋人ミッションが成功しやすいように、主人公の魅了が濃くなっていたのよ。時間が経過しているから、さらに強く濃くなったのかもね。悪役の耐性の限界を超えたんだと思うよ。だから、セルシードは逃げたのね」


 セルさんが逃げた? なぜ……。



 シャルルさんは私に携帯機を見せた。サリィさんからのチャットみたい。だけど、文章は短い。


『オモチさんのフォローをしてあげて!』


 そうか、始まりのカフェには中継機があるって言ってたから、サリィさんは聞いていたのかも。



「オモチさん、恋人の再登録不能期間のことは、知っているかしら? セルシードとの恋人の時間が終わった後、丸3日間は、再び恋人にはなれないわ」


「はい、フレンドさんから聞きました」


「オモチさんのデイリーミッションに、再び同じミッションが出ても大丈夫になるまで、次のデイリーミッションは、やらない方がいいわよ。かなり進んでいるのよね?」


 私は、携帯機を開く。



【ミッション16】未達成

 コンセプトカフェに行こう!

(残り11日10時間50分)


【ミッション5】酒場に行こう!

【ミッション6】宿屋で宿泊予約をしよう! 

【ミッション7】友達と話そう!

【ミッション8】ファン会館に行こう!

【ミッション9】ゲームキャラの舞台を見よう!

【ミッション10】恋人を作ろう!

【ミッション11】夕焼けに染まる湖を見に行こう!

【ミッション12】酒場に行こう!

【ミッション13】ショー劇場に行こう!

【ミッション14】看板通りに行こう!

【ミッション15】恋人を作ろう!



「ミッション15まで、クリアできています。次はコンセプトカフェです」


「そう。恋人と行きがちな場所ね。残り日数は、10日はあるわよね?」


「はい、11日あります」


 シャルルさんは、話しながらチャットを打っているみたい。相手はサリィさんかな。


「恋人がいる時間は、ある意味、安全な時間でもあるわ。一人で不安かもしれないけど……」


 シャルルさんは、私に携帯機を見せた。やはり、サリィさんとチャットしていたみたい。


『今のうちに、推しの誰かに会いに行くのも良いと思う。私は引きこもってなさいって言ったんだけど、状況が変わったからね』


 そうか。シエルさんは、私の友好値の順位を変えるといいかもしれないって言ってたっけ。それに、永住したいと考えていると思わせたら、とも話していた。



「主人公は、転移屋が無料でしたよね」


「ええ、誰に会いに行くつもりかしら?」


「ウィルがいいかと思っています」


 すると、シャルルさんの表情が変わった。明らかに怒っているみたい。でも、こんな外での立ち話では、本音は言えないかな。


「オモチさん、わかってて言ってるのかしら? だとすると、あまりにも愚かな子ね」


「わかっています。ただ、私の勘ですけど、来るとは思ってないんじゃないかなって」


「はぁ? 本当に愚かだわ。あの人達は、メイン舞台にいると思うわ。私もちょうど、後で行く予定をしていたんだけど。あぁ、転移屋なら、そこにもあるわ」


 シャルルさんは、一緒には行動できないけど、来てくれるつもりなのかな。心強い!


「シャルルさん、ありがとうございます。自由に動けるチャンスだから、ちょっと行ってみます」


 シャルルさんとは別れて、私は転移屋へ入った。



 ◇◇◇



「いらっしゃいませ」


 転移屋さんには、お客さんは居なかった。宿屋ノームの裏にある転移屋さんよりも魔導士の数は多い。時間帯の差かな?


「月の王都ルナシティに行きたいんですけど」


「ルナシティのどちらかに行かれますか?」


 転移屋の魔導士さんは、パッと地図を出した。乙女ゲーム『月の世界の王子様』に登場した地名もあって、テンションが上がる。


「攻略対象を見に行きたいんですが、どこにいるか、わかりますか?」


「今、昼の公演中のようですね。彼らはゲーム舞台の王城にいるようです」


「じゃあ、王城へお願いします。あっ、そっか。どのルートも同じ場所だったんですね」


「主人公さんからは、よく、その質問を受けますよ。舞台となる王城は、一つしかありません。8つの王国ではないので。では、稼働します」


 私は、転移魔法の光に包まれた。


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