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36、突然の求婚

「私が、シエルさんと結婚したがっているように見えますか?」


 シエルさんの質問の意図がわからなくて、私は少し嫌な言い方をしてしまった。でも、彼は気にしないのね。


「オモチの場合は、わからないから尋ねてみた。この星では、僕と結婚したがる人が多いんだよ。イービー星ではセルフィア王国が一番豊かだから、僕は誰から見ても都合の良い相手らしいよ」


「都合の良い相手? でも、私はここに永住するつもりはないんです。だから、ミッションを失敗しないように気をつけていて……」


「もちろん知ってるよ。あっ、そうか。オモチは、まだ知らないもんな」


 シエルさんは、私が全く食べてないメイン料理を皿ごと取った。私が頷くと、それも食べ始める。本当に食べてくれるつもりなのね。




 食事が終わると、紅茶が運ばれてきた。同じコンセプトカフェのAランチだけど、食後の飲み物の提供方法が少し違うみたい。お代わり用のティーポットもあって、ご自由にどうぞというスタイルかな。広い店だからかも。


「僕達が、この星に来る理由から話しておくよ。サリィさんから聞いたかもしれないけど、イービー星の様々な国が資金提供をして、この人工星が造られた。だから、出入りは自由なんだよ」


「はい、サリィさんは自由で楽しいと言ってましたね」


「うん、だろうね。この星には様々な星から、乙女ゲームが好きな人が集まっている。だから共通の趣味があって、生まれ育った環境が違うから楽しいよ」


「確かに、同じ趣味ですよね」


「あっ、難民以外は、だけどね。メイロ星から来た人達は少し異質なんだ。それを利用しようとする国もあるから、オモチのミッションがおかしくなってる」


 その難民の受け入れと監視をしてるのが、オルフルさんだっけ。『月の世界の王子様』の攻略対象は、メイロ星から来た人ばかりだと、ラムネさんやサフスさんが言っていた。


 私に接触してきた謎のフレンドを自称するクローラさんが、イービー星のロックダム王国の人で、メイロ星から来たウィル達とつるんでるかもしれないと言っていたのは、サリィさんだっけ。



「サリィさんが怒ってましたよね」


「うん、かなり怒っておられたね。本来ならこの星は、王族の人達にとっては、楽しい観光地のはずだったからね。僕達にとっては、相手を探す場でもあるんだけどさ」


「あっ、それで、結婚したいと思っているかを質問されたんですね。でも、私は自分の星に帰りたいので……」


「だから、僕なら都合が良い相手でしょ? 僕は三男だから、家を継ぐことができないし、どこで生きるかを選ばないといけない」


 シエルさんの答えが、よくわからない。私の主張が伝わってないのかな。



「あの、私はアース星に……」


「うん、あっ、そうか。大前提を話してなかった。僕は、オモチがミッションを終えて星に帰るときに、アバターを脱いで、移住することもできる」


「えっ? 地球……アース星に?」


「うん、そうだよ。アース星には、既に何人か移住者がいるはずだ。アース星は魔法のない星だから、気をつけないといけない規律は多いけど、僕が移住するには生きやすい星だよ。それに元の身体に戻れば、星間転移もできるからね」


「ええっ? 移住って……でも私は、このアバターみたいに若くて可愛い女の子じゃないです」


 私は、今の見た目とは違ってアラサーだし、そもそも、こんなカッコいい人が来たら、大騒ぎになるよ。


「ん? 見た目に何の価値があるの? それは乙女ゲームの世界だけでしょ。僕が話してるのは、ゲーム舞台ではなくて、現実の話だよ?」


「へ? えーっと?」


「僕は、アバターの中のオモチを見ている。さっき、オモチが言っていた自然現象の話を聞いて、アース星は本当に穏やかで暮らしやすそうな星だと思ったよ。大雨や地震で大騒ぎするなんて、可愛らしい種族だ。そんな中で暮らすと幸せだと思うよ」


「魔法のない世界だから、大雨や地震は大災害になるんです」


「僕が移住すれば、大きな災害を起こさせないようにできる。もちろん規律があるから、魔法を使うことがバレないように上手くやるけどね」


「ええっ?」


 そっか。地球は、彼らから見れば、下等な星なんだ。



「僕が誰から見ても都合の良い相手だと、伝わった? 星間転移で行ける範囲内のことしか知らないけど、この付近では、イービー星は最も強い星なんだ。国々には厳格な序列がある。だから、国同士の戦乱も起こらないし、隕石が降ってきても、星が壊れることもない」


「すごい星なんですね」


「うん、でも、この人工星のような自由がない。あらゆることが生まれたときから定められている。個々の能力が高いから、移住先も管理されている。弱い星が滅ばないようにね」


 シエルさんの口調は、自慢には聞こえない。まるで、不幸な話をしているようなテンションだ。



「それで、サリィさんは、この星にいると自由だと言ってたんですね」


「そうだと思うよ。それにこの星にいると、王族がヘラヘラと笑っていても、咎められない」


「イービー星では、笑えないんですか?」


「笑えないわけじゃないけど、王族が笑うと解釈が加わるんだ。だから、笑顔を返すと不敬になる」


「ええっ!?」


 私が驚いた顔が面白かったのか、シエルさんは、クスッと笑った。



「やっぱり、オモチは可愛いな。僕と結婚しないか?」


「へ? いや、そんなに簡単に……。あっ、主人公の魅了にかかってません?」


「アバターの下品な魅了にはかからないよ。僕は、オモチが放つ本当の魅了に酔うだけだ」


「いや、でも……」


「オモチがアース星に帰っても、僕なら移住できる。この星に残ることになっても、一緒にいられる。イービー星がいいなら、連れ帰ることもできるよ」



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