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裂界の帰還者  作者: 霞山 大和
遠征編
28/33

28話目

忙しくなってきたので、一旦投稿頻度下げるかもです。

定期的に読んでくださる方がいるのか、一定数のページビューがついている気がします。ありがとうございます!

 瓦礫地帯を抜けた先。

 崩落した地下鉄入口付近で、ナツメが急に片手を上げた。

「止まれ」

 一行が即座に遮蔽物へ散る。

 ナツメは膝をつき、端末へ目を落としていた。いつもの眠そうな顔が、僅かに険しくなっている。

「反応二つ。接近中」

「距離は?」

 レイナが低く聞く。

「百二十……速い」

「種類」

 ナツメが答えるより先だった。カツ、カツ、と硬い音。

 崩れた車両の上へ、白い影が飛び乗る。

「――キツネツキ」

 ハヤテが小さく呟いた。

 細長い四肢。狐に似た頭部。だが口元は裂け、黒い牙が幾重にも並んでいる。

 そして何より異様なのは、“尾”だった。

 複数ある。

 黒煙のような尾が、揺らめきながら空中へ伸びている。

「え、あれがB……?」

 ユウトの声が引き攣る。

「サルガミより速い。イヌガミより賢い」

 レイナが静かに言う。

「あと地味に硬い」

「嫌な情報しかねぇな」

 ハヤテが双剣へ手を添える。

 その瞬間、キツネツキが消えた。

「上!」

 ナツメの声。

 次の瞬間、二体目がビル壁面から飛び掛かってくる。

「ッ!」

 ユウトが反応しきれず硬直しかける。

だが。

 バンッ!!

 レイナの銃撃。

 着弾した衝撃でキツネツキの軌道が逸れる。

「ユウト、右寄り!」

「は、はい!」

 そこへナツメが投擲した杭が地面へ突き刺さった。直後、ワイヤーが張る。

 キツネツキの脚が絡まり、動きが一瞬止まる。

「今」

 レイナが短く告げる。ユウトが踏み込んだ。

「うおおッ!!」

 片刃剣が振り抜かれる。

 火花。硬い感触。だが浅い。

「硬っ?!」

「首狙い! 胴は抜けにくい!」

 レイナの指示が飛ぶ。

 その間にも、もう一体が側面から回り込んでくる。

 速い。サルガミより明らかに速力が上だ。

「ハヤテ!」

「分かってる!」

 踏み込みかけて――止まる。

 レイナ達の動きが視界へ入った。

 射線。位置取り。誘導。

 合わせるべきか。

 連携するなら、タイミングを――

「ハヤテ!」

 レイナの怒声。

「考えすぎ!!」

「っ」

 一瞬遅れた。

 キツネツキがレイナ側へ跳ぶ。

 だが。

「遅い」

 ナツメが低く呟いた。地面へ撃ち込まれていたワイヤーが巻き上がる。

 キツネツキの脚が引かれ、僅かに姿勢が崩れた。

 そこへレイナの銃撃。さらにユウトが横から踏み込む。

「はぁッ!!」

 今度は首。刃が半ばまで食い込む。黒い血が飛び散った。

「そのまま離れろ!」

 レイナが叫ぶ。直後、キツネツキの尾が爆ぜた。

 黒煙のような尾が鋭く伸び、周囲を薙ぐ。

「うわっ?!」

 ユウトが転がるように回避する。

「だから離れろって言った!」

「す、すみません!」

「生きてるからヨシ!」

 そのやり取りを横目に、ハヤテは小さく舌打ちした。

 動きが鈍い。合わせようとしすぎている。

 独立前も、よく言われた。

『お前は考えて合わせると弱くなる』

 その意味を思い出す。

「……あー、クソ」

 息を吐く。

「レイナ」

「なに!」

「一体もらうぞ」

「やり過ぎないでよ!」

 ハヤテが笑う。

 次の瞬間。地面を蹴った。世界が加速する。

 今までと違う。迷いのない速さ。キツネツキが反応するより先に懐へ潜り込む。

「まずは」

 斬撃。浅い。だがハヤテは止まらない。

「挨拶」

 キツネツキの前足の強度と新品の武器の強度を確かめる。返す刃。

「流石だ。そんで首は通る」

 確かな手応え。振りたい分だけ、切りたい分だけ切れる。完璧な整備に口角が上がり、そこへ尾が迫る。

 それを半歩だけズラす。

「尾は予備動作あり」

 キツネツキが咆哮する。

 さらに加速。ビル壁面を蹴り、頭上から襲い掛かる。

「上は遅ぇな」

 双剣が交差した。

 斬光。一瞬遅れて、キツネツキの首が落ちる。

 黒い血が崩れた道路へ広がった。

 静寂。

「……うっわ」

 ユウトが呆然と呟く。

「試し斬りで倒した……」

「今のがハヤテ」

 ナツメが淡々と言った。

「さっきまでのは、“合わせようとしたハヤテ”」

 レイナがため息を吐く。

「あんたそんなに動き悪かったっけ?カグラの時より酷いわよ?」

「いやぁ、学ぼうかなって」

「不器用か」

 残った一体が低く唸る。だがもう、空気は完全にこちらへ傾いていた。

 ハヤテが双剣を軽く回す。

「で、次はどうする?」

 レイナがニヤリと笑った。

「今度はちゃんとお勉強なさい」

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