28話目
忙しくなってきたので、一旦投稿頻度下げるかもです。
定期的に読んでくださる方がいるのか、一定数のページビューがついている気がします。ありがとうございます!
瓦礫地帯を抜けた先。
崩落した地下鉄入口付近で、ナツメが急に片手を上げた。
「止まれ」
一行が即座に遮蔽物へ散る。
ナツメは膝をつき、端末へ目を落としていた。いつもの眠そうな顔が、僅かに険しくなっている。
「反応二つ。接近中」
「距離は?」
レイナが低く聞く。
「百二十……速い」
「種類」
ナツメが答えるより先だった。カツ、カツ、と硬い音。
崩れた車両の上へ、白い影が飛び乗る。
「――キツネツキ」
ハヤテが小さく呟いた。
細長い四肢。狐に似た頭部。だが口元は裂け、黒い牙が幾重にも並んでいる。
そして何より異様なのは、“尾”だった。
複数ある。
黒煙のような尾が、揺らめきながら空中へ伸びている。
「え、あれがB……?」
ユウトの声が引き攣る。
「サルガミより速い。イヌガミより賢い」
レイナが静かに言う。
「あと地味に硬い」
「嫌な情報しかねぇな」
ハヤテが双剣へ手を添える。
その瞬間、キツネツキが消えた。
「上!」
ナツメの声。
次の瞬間、二体目がビル壁面から飛び掛かってくる。
「ッ!」
ユウトが反応しきれず硬直しかける。
だが。
バンッ!!
レイナの銃撃。
着弾した衝撃でキツネツキの軌道が逸れる。
「ユウト、右寄り!」
「は、はい!」
そこへナツメが投擲した杭が地面へ突き刺さった。直後、ワイヤーが張る。
キツネツキの脚が絡まり、動きが一瞬止まる。
「今」
レイナが短く告げる。ユウトが踏み込んだ。
「うおおッ!!」
片刃剣が振り抜かれる。
火花。硬い感触。だが浅い。
「硬っ?!」
「首狙い! 胴は抜けにくい!」
レイナの指示が飛ぶ。
その間にも、もう一体が側面から回り込んでくる。
速い。サルガミより明らかに速力が上だ。
「ハヤテ!」
「分かってる!」
踏み込みかけて――止まる。
レイナ達の動きが視界へ入った。
射線。位置取り。誘導。
合わせるべきか。
連携するなら、タイミングを――
「ハヤテ!」
レイナの怒声。
「考えすぎ!!」
「っ」
一瞬遅れた。
キツネツキがレイナ側へ跳ぶ。
だが。
「遅い」
ナツメが低く呟いた。地面へ撃ち込まれていたワイヤーが巻き上がる。
キツネツキの脚が引かれ、僅かに姿勢が崩れた。
そこへレイナの銃撃。さらにユウトが横から踏み込む。
「はぁッ!!」
今度は首。刃が半ばまで食い込む。黒い血が飛び散った。
「そのまま離れろ!」
レイナが叫ぶ。直後、キツネツキの尾が爆ぜた。
黒煙のような尾が鋭く伸び、周囲を薙ぐ。
「うわっ?!」
ユウトが転がるように回避する。
「だから離れろって言った!」
「す、すみません!」
「生きてるからヨシ!」
そのやり取りを横目に、ハヤテは小さく舌打ちした。
動きが鈍い。合わせようとしすぎている。
独立前も、よく言われた。
『お前は考えて合わせると弱くなる』
その意味を思い出す。
「……あー、クソ」
息を吐く。
「レイナ」
「なに!」
「一体もらうぞ」
「やり過ぎないでよ!」
ハヤテが笑う。
次の瞬間。地面を蹴った。世界が加速する。
今までと違う。迷いのない速さ。キツネツキが反応するより先に懐へ潜り込む。
「まずは」
斬撃。浅い。だがハヤテは止まらない。
「挨拶」
キツネツキの前足の強度と新品の武器の強度を確かめる。返す刃。
「流石だ。そんで首は通る」
確かな手応え。振りたい分だけ、切りたい分だけ切れる。完璧な整備に口角が上がり、そこへ尾が迫る。
それを半歩だけズラす。
「尾は予備動作あり」
キツネツキが咆哮する。
さらに加速。ビル壁面を蹴り、頭上から襲い掛かる。
「上は遅ぇな」
双剣が交差した。
斬光。一瞬遅れて、キツネツキの首が落ちる。
黒い血が崩れた道路へ広がった。
静寂。
「……うっわ」
ユウトが呆然と呟く。
「試し斬りで倒した……」
「今のがハヤテ」
ナツメが淡々と言った。
「さっきまでのは、“合わせようとしたハヤテ”」
レイナがため息を吐く。
「あんたそんなに動き悪かったっけ?カグラの時より酷いわよ?」
「いやぁ、学ぼうかなって」
「不器用か」
残った一体が低く唸る。だがもう、空気は完全にこちらへ傾いていた。
ハヤテが双剣を軽く回す。
「で、次はどうする?」
レイナがニヤリと笑った。
「今度はちゃんとお勉強なさい」




