表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/59

第7話 バベル要塞法務戦略室

要塞中枢部にある法務戦略室は、壁面を埋め尽くす法条文のホログラムが青白い光を放ち、床面にはセクター管理権の立体地図が緩やかに回転していた。オーナーはその中央に立ち、リアム副官との会話に微笑みを浮かべていた。


「見てくれリアム副官、真面目なクロードもまた竜人種という事か、あいつ曰くもらえる物をもらったとの事だ。」


オーナーの指先が、スクリーン上の暗号解読された報告書をタップする。画面が明るく輝き、彼の顔に青い光を映し出した。


「あ~、クロード直掩艦隊指揮官にもそう言う所ありますよね。」


リアム副官は控えめに笑いながら、姿勢を正した。彼の制服のエンブレムが室内の光を受けて微かに光る。


建設艦の護衛艦隊からの暗号化された定期報告には、ササーン神聖帝国の背後宙域に到達したとの報告に加え、バグワームの建造中の宇宙構造物を奪ってやったと、巨大な円柱型の構造物のデータが送られてきた。


画面上では、長さ約3キロメートルにも及ぶ赤みがかった円柱が、青い星雲を背景に回転している。


その表面には無数の半透明な突起物が並び、バグワームの宇宙建造物らしい見た目だったが、半面内部は徹底的に破壊され更地のように何でも建てられそうなスペースが広がっていた。


「丁寧にバグワームのモジュールを破壊しているようですし、問題は無さそうですね。」


リアム副官はデータを分析しながら言った。彼の手元のタブレットには構造物の各セクションが緑色で強調表示され、除染完了、バグワームの反応無しと示されていた。


この円柱を利用する事で計画していた時間とコストの10分の1の時間で宇宙基地を設置出来ると書かれている。


無茶させた分部下に報いてやりたいのでボーナスに期待するともあるあたりちゃっかりしている。


報告の末尾には、クロード指揮官自身が撮影したと思われる自撮り画像が添付されており、背景に巨大な円柱構造物を配した彼の得意げな表情が見て取れた。


「部下思いですね、この改造案も時間と物資に余裕が出来た分居住性を上げているみたいです。」


リアム副官が拡大した設計図面には、当初の軍事基地計画から変更された居住区の拡張案が示されていた。


円柱中央部には巨大な水耕栽培施設と、バグワームの重力発生装置改造、居住区画すべてに重量を備え、集会空間や休憩区域等が追加されている。


「おや?レクリエーション施設にカジノも用意するとあるな……好きにさせるか。」


オーナーは腕を組み、窓の外に広がるバベル要塞の造船ドックを見つめた。


遠くでは新型宇宙船の骨組みが徐々に形になりつつあり、無数の作業ドローンが青い溶接光を放っている。


「任せると返事を送ってくれ、それとお前のつくった余裕は贅沢に使え、ボーナスにも期待しろとな。」


オーナーの声には穏やかな満足感が滲んでいた。


部下の自主性を尊重する、と言うより任せるしか無い彼の経営スタイルが確実に成果を上げ始めていることに、ゲーム時代の苦労を思い出し密かに誇りを感じていた。


「ええ喜ぶでしょう。」


リアムは笑顔で頷き、即座に通信機に向かった。


彼女の指が素早くスクリーンを操作する様子に、長年の実務経験が滲み出ている。


こうして報告を聞く立場になると、誰が何をしたいのか、自分の土俵を探し貪欲に力を振るっているのがよくわかる。


オーナーは思わず自分の前世での記憶を思い出していた。


組織が大きくなるほど、各部署は自らの権限を拡大しようとする。それは時に健全な競争を生み、時に危険な分裂を招く、アレキサンダーや始皇帝、思いつく事例は幾らでもある。


「願わくば、徳川幕府の様に宇宙に平和をもたらしたい物だ。」


安定して来たからこそ、各々が歴史を変えようとしているのが伝わって来る。


ドック内の作業員たちも以前より自信に満ちた足取りで動いているし、軍人たちの敬礼もより誇り高く見える。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ