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「きっと、私が会ったのと同じ魔女だわ」
「リーススもその魔女に?」
「ええ、きっとそうよ。でもそれよりも、あとは愛を集めればコルロルは人間になれるし、レーニスの感情も元通りに戻るのね?」
あたしの肩を掴み、リーススは慎重にたずねた。
「そう言ってたけど」
「それじゃあ簡単じゃない! あとはコルロルに愛情を向けるだけよ!」
あたしは辺りを見回してから聞いた。「誰が?」
「もちろんレーニスよ。私はコルロルを知らないし、他の誰かが怪物を好きになるとは思えない」
「リースス、無理なの。あたしはコルロルに会っても憎いだけだったし、その憎しみすら取られたもの」
彼女は考えるように沈黙した。あたしは頭の中で状況を整理する。
「大丈夫。コルロルが死んでも、感情は戻る。いまさら感情が欲しいとは思わないけど、やつが死ねば勝手に戻ってくるそうよ。きっともうじきよ」
「レーニスに感情が戻るのは嬉しいけど……複雑ね」
「とっても単純よ」
「コルロルの死を喜べないもの。あなたが恋してる相手なんだから」
リーススはあたしが恋をしていると思っているようだけど、あたしには恋愛というものが理解できない。誰かを想い夜も眠れないとか、どきどきと動悸がするとか、目が合っただけで赤面してしまうとか。話を聞く限り、病気の症状に似ている。
「恋ってなに?」
「え」、リーススはあからさまにぎくりとした。「ほら……、あれよ。恋っていうのは、その、どきどきするものよ」
「愛とはどう違うの?」
「そうね。愛と恋っていうのは……」
「リーススは恋したことあるの?」
「……………………もちろん」
「その間は」
「とにかく、説明が難しいわ。ライアンに聞いてみましょう」
ということで、あたしたちはライアンに説明を求めた。彼はおじさんの荷物から取り出したと思われる、あらゆる宝石をじゃらじゃらと全身に身に着け、うっとりしながら話してくれた。
「恋……それは麻薬さ」
あたしとリーススは顔を見合せる。
「麻薬だって」
「麻薬だってね」
「そう、この宝石と同じ。心を惹きつけ惑わせるんだ。店の店主に買い取らせるか、貴族に売りつけるか……俺を悩ます可愛いやつめ」
「これなんの話?」
「ライアンは宝石に恋したってことじゃない?」
「貴様! わたしの財産に触れるな!」、足をじたばたさせて、おじさんは叫ぶ。「それが一体いくらすると……レーニス! リースス! なぜそれを着ている!」
おじさんはあたしたちを見るなり怒鳴りつけた。
「おじさんの荷物にあった服だけど」
「そういえば、なんでおじさんが女物の服なんて持ってるの?」
「その裾についてるのはダイヤだぞ!」
リーススは片足のつま先をぴんと伸ばし、自分の着ている服を後ろまで確認する。
「これ全部ダイヤなの? すごい!」
「へえ。2人とも、よく似合ってるじゃないか」、宝石からやっと目を離し、ライアンは褒めてくれた。「同じ服を着てると、やっぱり双子らしいな」
「今すぐ脱ぐんだ! ダイヤに傷ひとつつけてみろ、許さんからな!」
「おいおい、今すぐ脱げはないだろ。紳士とは程遠い発言だな」
鼻息あらくするおじさんを見つめ、あたしはずっと不思議に思っていたことを尋ねた。
「おじさんは、なぜそこまで金に執着するの? 恋なの?」
怒りが広がっていたおじさんの顔に、じんわり笑みが滲みだす。おじさんは声をだして笑った。
「はっはっはっ」、おじさんの笑い声は鷹揚だ。大きなお腹の底から、声が出てくるみたい。「金は人が生み出した至高の芸術品さ。目も眩むほどのな。なぜ集めずにいられる?」
「子どもにあんたの歪んだ価値観を聞かせるな」、ライアンは後ろからリーススの耳をふさぐ。
「私の考えが歪んでいると感じる貴様の価値観も、偏狭だがな」




