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「どうしたのその服?」、顔を拭きながらたずねる。
「おじさんの荷物にあったの」、とリーススは2つのワンピースを振って見せた。「いつまでも裸じゃ、落ち着かないよね。さすがに下着はなかったんだけど」
あたしたちは木の陰へ移動して着替えた。袖や襟がふりふりした白いブラウスに、黒い裾広がりのワンピース。裾をぐるりと一周し、透明なきらきらした石が、まるで天の川のようにちりばめられている。
「おそろいの服なんて、いつぶりだろうね」
着替えを済ませたリーススは、あたしの襟元に細い黒のリボンを通しながら、嬉しそうに顔を緩めた。こんな状況だけど、リーススは楽しそうだった。
もしかすると彼女は、どんな状況にも楽しみを見出せるつわものなのかもしれない。
「小さい頃は、いつも同じものを着せられてた」
「私たちが選んでたのよ。おそろいが好きだったの。髪形だって、いつも同じにしてもらって」
そのころを懐かしんでいるのか、父さんのことを思い出しているのか、リーススの手が止まる。ややあって、顔を上げた。
「レーニス、コルロルはどうだった?」
「小さい頃見たとおり、凶悪な見た目だった。性格は、想像と違っていたけど。やつの話によると、あたしはコルロルに恋をしてたらしいの」
「恋?」、リーススは驚いて目を丸くする。「あなたが?」
「コルロルがそう言っているだけよ。事実かどうかは」
「やっぱり!」、リーススは感激した様子であたしの手を両手で握った。「そうじゃないかと思ってたのよ! そうでもないと、毎日毎日飽きもせず探しに行けるわけないじゃない!」
「え、そうなの? リーススも、あたしはコルロルに恋してると思うの?」
「感情を失くしてるから微妙なところだけど、10年も探したんだもの。少なくとも執着はしてるわよね」
話を絞めるように、きゅっとリボンを結び、リーススは断言した。あたしはそのことについて考えた。いや、考えようとした。
僕を愛して。
まるで風だ。思考の隙間を見つけては、ふいに滑り込んでくる。あの時のコルロルが、頭から離れない。別のことをしているのに、気が付くと、あの黒い翼の密室に連れ戻される。
「コルロルに言われたの。あたしは怪物の仲間と思われたせいで火あぶりになったから、自分を殺せって。でも最後に、愛してると言ってほしいと。あたしは言えなかった。コルロルは、そのまま倒れてしまった」
コルロルが倒れた衝撃で、足元の薪が揺れたのを覚えている。あの時あたしは、火の熱さをほとんど感じていなかった。
「もう、死んじゃったかしら。ライアンはコルロルが生きてると信じているみたいだけど、おじさんを人質にとったりして、こんな交渉は無意味かもしれない」
リーススはじっとあたしの顔を見つめ、話を聞いていた。
「きっと、死んじゃったよね。銃弾で穴だらけだったし、燃えてたもの」
「レーニス……悲しいの?」
「悲しくない。でも、頭から離れないのよ。別のことを考えようとしても、集中できない。あの時のあの場所に、縛り付けられているみたいなの」
リーススはあたしの頭を撫で、顔に垂れる髪を耳にかけた。慰めるとき、リーススはよくそうする。
「コルロルっていう怪物は、私の想像ともずいぶん違っているみたい。思っていたよりも、ずっと人間らしいのね」
「ええ。あたしよりもよっぽど。実際、コルロルは人間になれるかもしれない」
「人間に?」
あたしはコルロルの首に下がっている、三角水晶について説明した。魔女に三角水晶をもらったこと。人間の感情を集め、コンプリートすれば人間になれること。




