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「あなたは、どう思う? コルロル、死んじゃったと思う? 死んじゃってたら、あたしのせいだよね。あたしのことなんて、放っておけばいいのに。あたしは、死んでも良かったのよ? でも、あたしのためにあいつが死ぬなんて、気分悪いじゃない」
「哀しいの?」、プラスチックの目が、こちらを覗き込む。
「分からない。でも、あたしは死んだ方がいい気がするの」
糸で縫われた口を歪めて、ぬいぐるみは悲しそうな顔をする。「なぜ?」
「罪深いから。リーススを泣かせて、コルロルを犠牲にした。たぶん、ライアンも」
「リースス?」
「双子のお姉ちゃん。あたしとよく似てるんだけど、テディー、知らない?」
「レーニスと似てるの?」、あはは、なぜかテディーは飛び跳ねて笑う。「おもしろいね」
「なんにもおもしろくないよ」、なに? あたしの顔がおもしろいってことなの?
「ね、行こう、レーニス」、テディーは両手であたしの手をはさむ。
「どこへ? どこへ行くの?」
「コルロルや、一緒にいた男の人、それから、お姉ちゃんのところ」
「なんで? どこにいるかも……生きてるかも分からないのに」
「だから探すの。会いたいんだよね? 好きなんだよね?」
体を起こす。コルロルやリーススのことを思うと、あたしはまだ動けるような気がした。
「愛があるなら、ちゃんと伝えないと。想っているだけじゃダメなんだよ」
黒くつやつやの目に、ちっぽけなあたしが映り込む。
「あたしにも、あるの? ……愛が」
「もちろん!」
テディーは両手を広げて笑う。
心の奥底。ずっと閉ざしたきりの錆び付いた扉に隙間が開いて、一筋の光を取り込んだようだった。その隙間から、真新しく鮮烈な風が吹いてくる。
そうだ、あたしは、愛を盗まれていない。きっと、あるんだ、あたしの中にも。楽しいや嬉しいを失ってしまったから、ずっと見つけづらくなっているけど、きっとあるはずよ。
憎しみにばかり呑み込まれて、誰かに愛情を伝えることを忘れてしまっていたんだ。それはきっと、なによりも大事なことなのに。
「テディー、おいで」、手を広げると、ぬいぐるみはあたしの胸に飛び込んでくる。
「やったぁー、ダッコだ、ダッコだ」
「ところでテディー」、あたしはテディーのおでこに唇をつけた。ふさふさとがさがさ、両方を合わせた感触がある。「愛情を伝えるって、こんな感じ?」
「うっふーー! そうそうそんな感じー! 嬉しくなっちゃうよー」
「そっか。マニュアルに書いてあった通りね。親愛のキスはおでこって。前はリーススにもしてたんだけどな。マニュアルの通りにそうしてたんだけど、無駄な気がして、いつの間にかやめちゃってた」
「無駄なはずないよ。嬉しいよ」
「でも知ってる? 恋人や夫婦は、口同士でするらしいの。信じられる? 口は食べ物を食べるところなのよ。それって汚くない?」
「大好きな人を汚く思うの?」
答えられなかった。大好き、っていう感情があれば、汚いなんて感じないものなのか、まだ分からない。
「そういえばあなた、どこから来たの?」、歩き出しながら尋ねる。
「うーんとねえ、あっち!」、丸い手の先は、向こうの崖を指す。「あれ? こっちかな? うふふ、分かんない! おもしろいね。私って、おもしろいでしょ」




