↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「あだしぎり」と出会った日  作者: ふうらいぼう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/3

怒り狂う歩道橋

「あだしぎり」の事情は、彼女の御家の人が迎えに来るまでに何となく聞いた。曰く、「気配や空気の向こう側にある何だか意味が分からない物を綺麗な姿にして帰すお役目」で、ある種の芸能の従兄弟みたいなものらしい。


「霊能力者な何かって事?」と聞くと、それを言ってしまうと違うものに化けてしまうらしい。墓場で落語の時は、おばあさんとあそこにいた「いないはずの皆さん」両方に届くものとして、自分の出来る事として噺家さんの様なスタイルを選んだのだそうで。


「霊能という事で言い切ってしまえば、そこにある空気や気配を型にはめてしまって、表現しきれない物を残してしまうのです」だとか。むしろ実演販売員や営業経験者とかの方が、「あだしぎり」適正はあるのだとか。


ちなみに、この間もずっと英語の教科書を取り出して、泣きそうな顔になっていたので過去完了形の部分を必死に僕が教える羽目になったりもしていた。


結局、あのおばあさんの詳細については「あだしぎり」はプライバシーとして語ってはくれなかったのだが、「おばあさんが聞いて、とても嫌な話があったんです。でももう終わりました」とだけ教えてくれた。後は……大体、墓場であった一件を考えれば察しは付くというもの。


さて、此処で互いの連絡先を交換できたりしたら、ロマンチックそのものなのだが……ぶっちゃけ、僕は初対面で中学あがったばかりのソバカスな感じのお嬢さんに、「連絡先教えて!」と言えるほどの剛の者ではない。


ちょっと不思議な話を体験させてもらったなーで、良い思い出で互いに分かれて終わった。実際終わったのだ。後は深夜座禅はちょいと控えて、マイルドな感じの新稽古でも考えようかなーで楽しく無刀流の日々を過ごそうと思っていた……のだが。


これから一週間後の稽古終わりに、「あだしぎり」とシャレにならない所で再会する羽目になった。ガラの悪い輩が山と出てくる日が暮れてから、物理的に長居しない方が良いヤベェエリアの歩道橋を、彼女がセーラ服姿にて死にそうな顔でジッと眺めていたのである。


ちなみに、僕がそこを通ったのは家まで大周りランニングコースだったからに他ならない。墓地座禅は止めた後、新手の良い稽古は無いかと模索中だったという事もあった。後は少なくとも持論として変にオドオドしたりせず、キビキビしていれば絡まれる余地もないとも思っていたので、そこが良いエリアではないとは知っていたけど個人的には問題は無かったのだ。


ただ、「あだしぎり」に関しては話が別だ。以前の墓地とは話が違うし、表情も墓地の時とは違って非常にドンくさそうだった。ぶっちゃけ、薄い本とは言わないまでもさっさと回収しないと、翌朝の朝刊で寝覚めの悪い記事を読みそうだと思った。


だからこそ、「ちょwwww君、此処危ないエリアと自覚してるか!?何で日暮れ近くで此処にいるのさ!」と説教気味に声をかけた。すると「あだしぎり」は「あ、前の墓地の時はお世話になりました」と丁寧にあいさつなんかもしてくれたのだが……そこで彼女から更なるトンチキな話を聞く事になった。


「……「あだしぎり」はなんせ5000円ですし。体力が物を言うお役目ですので、なり手がとても少ない上に体を壊して止める方も少なくないのです。この地区にも担当の方がおられたのですが……もうご高齢で。それで私がどうにかやれないかと打診されたのですが……場所はあの歩道橋の上なんです。


御存知でしたでしょうか。この歩道橋......登る方も降りるもどうしようにも、大変イライラメラメラしてしまい……元から心が丈夫な方は良いのですが、そうでない方は誰かと会った瞬間、こうパカーンとやってしまう。変な言い方なのですが、喧嘩力の中心地......みたいになってしまっています。


そういう空気が吹きだまってしまって、どうにかしなければいけないのです。今回は噺ではなく……違う方法が適切と見たのですが……下見に来て、ちょっと人手が足りないなーと思っていた矢先、日が暮れました。家には連絡して車も来るのですが、かなり怖くて動けなく……もなっていました。物理的に。そこでお手数をおかけしてしまいますが、明るい場所まで......送って頂けたりはしないでしょうか?」


顔見知りを放置する選択肢は最初から無いし、とりあえず人道的処置という事で、「あだしぎり」を保護しつつ後で内緒で出てきたことを知って、大慌てで迎えに来た御家の方にお渡し出来た後......この歩道橋の儀式を結局僕は手伝う事になるのだが。


ここで僕は初めて、「あだしぎり」の役目で特に怖い瞬間である......遭難者に遭遇する事となる。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。