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イグニスフォックスの群れ


イグニスフォックスの群れが、一斉に三人へ襲いかかった。


正面から二匹。

左右からも一匹ずつ。

さらに後ろでは、別の個体が口元に炎を集めている。



「多いな……」

「まず目の前を見ろ」



ガルムの声に、レイルは正面へ向き直った。


先頭の一匹が飛びかかってくる。

レイルは足元へ風を集め、横へ跳んだ。

すれ違いざまに棒を振る。

だが、イグニスフォックスは身をひねってかわした。

そのまま二匹目が迫る。



「っ!」



レイルは棒を持ち直す。

風を横からぶつけると、走っていた身体が大きく傾いた。

そこへ棒を振り抜く。

鈍い音が響き、イグニスフォックスが地面を転がった。



「よしっ!」



別の方向から炎が飛んでくる。

レイルは地面を蹴り、風で身体を押し出した。

火がすぐ後ろを通り過ぎ、草の上へ落ちる。



「レイル、右です!」



振り向くと、一匹が横から飛びかかってきていた。

レイルが棒を構えるより先に、リシアの棒が伸びる。

飛び込んできた身体を横から押し、軌道を逸らした。

イグニスフォックスがレイルの横を転がっていく。



「助かった!」

「ちゃんと周りも見てください!」



リシアはそのまま次の一匹へ向き直った。

低く走り込んできたイグニスフォックスが、足元へ飛びかかる。


リシアは半歩下がった。

棒を斜めに当てて横へ流し、そのまま先端を返す。

脇腹へ一撃。

イグニスフォックスが悲鳴を上げて離れた。



「すご……」

「余所見するな」

「分かってる!」



ガルムの声と同時に、正面から炎が飛んでくる。

レイルは横へかわした。


その炎の向こうから、一匹が飛び込んでくる。

棒を突き出す。

先端へ風を乗せると、棒が勢いよく伸びた。

胸元を捉える。

イグニスフォックスの身体が後ろへ弾かれた。



「今のいいかも」



レイルはすぐに追いかける。


一撃。

まだ動く。

返して、もう一撃。

それでも立ち上がろうとする。



「しぶといな……!」



三度目を叩き込む。

ようやく動かなくなった。


レイルは棒を見た。



「やっぱり刃が欲しいな」



そう呟いた直後、また火が飛んでくる。


レイルは横へ跳ぶ。

その脇から、もう一匹が走ってきた。

風をぶつける。

身体がよろけたところへ棒を突き込んだ。



「よし!」



棒を引く。

後ろから足音。

レイルは身体を回し、そのまま横薙ぎに振るった。


一撃。

さらに返す。


二撃目。

イグニスフォックスが後ろへ下がる。


レイルは風で踏み込み、三撃目を叩き込んだ。



「……こっちの方がやりやすい」



足を止めず、そのまま次へ向かう。

背後から唸り声がした。


振り向く。


一匹がすぐそこまで迫っている。



「まず――」



ガルムの棒が横から入った。

イグニスフォックスの身体が吹き飛び、木の幹へぶつかる。

そのまま地面へ落ちた。

レイルは目を丸くする。



「……同じ棒だよね?」

「ああ」


「威力違いすぎない?」

「身体が違うからな」



ガルムはそのまま次の一匹へ向かう。

飛んできた火を少し身体をずらしてかわす。


一気に距離を詰め、棒を振り下ろした。

一撃で地面へ沈む。



「やっぱり全然違う……」



レイルが自分の棒を見る。

その時、リシアの声が飛んだ。



「レイル!」



正面に二匹。

一匹が走ってくる。


もう一匹は口元へ火を集めていた。

レイルは火を吐こうとしている方へ風をぶつける。

身体が横へよろけ、口元の炎が消えた。



「今だっ!」



走ってくる一匹を横へかわす。


そのまま風で踏み込み、棒を突き出した。

胸元へ一撃。

すぐに引く。

振り返る。

先ほどかわした一匹が追ってくる。


レイルは自分から距離を詰めた。


横から一撃。

そのまま身体を回す。

反対側からもう一撃。

体勢が崩れたところへ、さらに棒を突き込む。


イグニスフォックスが地面へ転がった。



「よし」



少し離れたところでは、リシアが二匹を相手にしていた。

一匹の攻撃を逸らし、もう一匹が近づけば棒の先で牽制する。

レイルがそちらへ走る。



「リシア!」

「お願いします!」



リシアが一匹の進路を変える。

レイルが風で踏み込んだ。


一撃。


倒れない。


もう一撃。


さらにもう一度。


三度目でイグニスフォックスが地面へ沈む。

残った一匹が距離を取った。


だが、その先にはガルムがいる。



「そっちは駄目だぞ」



棒が一閃する。


最後の一匹が倒れた。

森に静けさが戻る。

レイルは棒を構えたまま、しばらく周囲を見回した。



「……終わった?」

「おそらくな」



ガルムも周囲を確認する。

新しく姿を現す気配はない。


レイルは肩の力を抜き、その場へ座り込んだ。



「疲れた……」



リシアも近くで息を整える。



「一匹の時とは全然違いましたね」

「うん。あっちからもこっちからも来るし、火まで飛んでくるし」



レイルは手にした棒を軽く振った。



「でも、何回も続けて攻撃するのはやりやすかった」

「そうか」



ガルムが倒れたイグニスフォックスを見る。



「ガルムみたいに一発では倒せないけどね」

「当然だ」

「少しくらい否定してよ」



レイルは棒の先を見る。



「やっぱり刃があった方がいいな」

「なぜだ」


「棒だと何回も叩かないと倒れないから。刃ならもっと楽そう」



ガルムが頷く。



「なら、またメモしておけ」

「うん」



レイルは腰の小さなメモ帳へ手を伸ばしかけ、周囲を見た。



「……あとでいいか」



リシアが森の奥へ目を向ける。



「まだ他にもいるんでしょうか?」

「分からん」



ガルムも同じ方向を見る。



「ここにいた分だけとは限らない。一度依頼所へ戻って報告する」

「うん」



ガルムは倒れたイグニスフォックスの一匹を確認すると、その毛皮へ手を触れた。



「こいつらも持って帰るぞ」

「素材になるの?」


「ああ。毛皮や牙は売れる」

「じゃあ、結構いいお金になる?」


「状態次第だな」



レイルは倒れているイグニスフォックスの数を見回した。



「……これ全部?」

「全部だ」

「結構あるね……」



三人で運べるよう、ガルムが手早くまとめていく。

レイルもそれを手伝いながら、最後にもう一度焦げた森を振り返った。



「じゃあ、戻ろうか」

「ああ」


三人はラゼルへ戻るため森の出口へ向かった。



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