↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/27

森の焦げ跡



ラゼルに滞在して数日。


レイルたちは朝に訓練をし、その後は依頼所で仕事を探す生活を続けていた。

荷物の運搬や採取、害獣退治。


大きな事件こそなかったが、レイルにとってはどれも村では経験しなかったことばかりだ。

訓練では槍だけでなく、剣や斧、棒なども少しずつ試している。

風の使い方についても、自分の動きを助けるだけではなく、相手や武器にどう使えるかを考えるようになっていた。



「これは場所が遠いな」

「その分、報酬は高いみたいですね」


「こっちは今日中に終わりそう」

「採取か」



レイルは掲示板に並んだ依頼書を、一枚ずつ見比べていた。

最初の頃よりも、場所や報酬、かかる時間まで考えて選ぶようになっている。



「少しは考えて選ぶようになったな」

「前から考えてたよ」


「そういうことにしておくか」

「絶対信じてないよね」



ガルムは気にする様子もなく掲示板を見る。

その横で、リシアが一枚の依頼書へ目を留めた。



「これはどうですか?」



ルーゼの森近くで採れる薬草の納品依頼だった。

場所もそれほど遠くない。

必要な量も多くはなく、今日中には終わりそうだ。



「これなら良さそうだね」

「ああ。今日はそれにするか」



依頼書を持って受付へ向かう。

いつもの男が内容を確認すると、少しだけ表情を変えた。



「ルーゼの森の近くへ行くんですね」

「ああ」


「最近、あの辺りで小さな焦げ跡が何度か見つかっているんです」

「焦げ跡?」



レイルが首を傾げる。



「火事でもあったの?」

「そこまで大きなものではないんです。焚き火の跡かもしれませんし、今のところ被害も出ていません」



ガルムが少し考える。



「前に酒場で、ルーゼの森の奥から煙が上がっていたという話を聞いたな」

「それと関係あるのかな?」


「まだ分からん」



受付の男もうなずく。



「一応、気をつけてください」

「分かった」



手続きを終え、三人は依頼所を後にした。




◇




ルーゼの森までは、ラゼルから歩いてしばらくかかる。

依頼の薬草が生えているのは森の中ではなく、その手前に広がる草地だった。

三人は依頼書に描かれた薬草の特徴を確認しながら探していく。



「これかな?」



レイルが一本の草を摘む。

リシアが隣から覗き込んだ。



「違いますね」

「え、違うの?」


「葉の形が違います」

「ほとんど同じじゃない?」


「全然違いますよ」



レイルは手に持った草と、依頼書に描かれた薬草を交互に見る。



「……同じに見える」

「ちゃんと見てください」



リシアが苦笑する。

少し離れたところでは、ガルムも草を見ていた。



「ガルム、これは?」

「違う」


「じゃあこれ」

「それも違う」



レイルが別の草を摘む。

ガルムはそれを手に取り、葉を指で軽く擦った。



「ただ、これは煮込みに使うと香りが立つ」

「今は薬草探してるんだけど」


「分かっている」

「持って帰るんでしょ?」


「少しな」



ガルムは当然のようにその草を別の袋へ入れる。

リシアが小さく笑った。



「こういうことは本当に詳しいですよね」



採取を続けているうちに、少しずつ必要な量が集まっていった。

レイルも何度か間違えながら、ようやく薬草の特徴を覚え始めた頃だった。



「……ん?」



レイルが足を止める。


少し先の地面が黒くなっている。

近づいてみると、草が焼け焦げていた。



「これかな。依頼所で言ってたの」



リシアも隣へ来る。



「焚き火の跡でしょうか?」



ガルムがしゃがみ込み、焦げた地面を見る。


範囲はそれほど広くない。

周囲へ燃え広がった様子もなかった。



「どうだろうな」



ガルムが焦げた草を指で触る。



「でも、薪とか炭はないね」

「ああ」



レイルが周囲を見回す。

少し離れた場所にも、小さく黒くなった草があった。



「あっちにもある」

「一か所だけじゃないんですね」



三人で近づいて確認する。


やはり似たような焦げ跡だった。

焚き火にしては小さい。


だからといって、何が原因なのかまでは分からない。



「何だろう」

「今ここで考えても分からんな」


「調べる?」

「まずは依頼を終わらせるぞ」



ガルムが立ち上がる。



「そのあと依頼所で話を聞く。似たようなものが他でも見つかっているなら、何か分かるかもしれん」

「分かった」



レイルは焦げ跡をもう一度見る。


気にはなる。

だが今は、依頼を終わらせるのが先だ。


三人は採取へ戻った。




◇




しばらくして、必要な量の薬草が集まった。


ラゼルへ戻り、依頼所で受付へ袋を渡す。

男が中身を確認していく。



「はい。これだけあれば十分です」

「じゃあ依頼達成?」


「ええ。お疲れ様でした」



報酬を受け取ったあとも、三人はその場を離れなかった。

ガルムが受付の男へ話しかける。



「一つ聞きたい」

「何でしょう?」



ガルムは今日見つけた焦げ跡について説明した。


一か所だけではなかったこと。

焚き火にしては小さく、薪や炭の跡も見当たらなかったこと。


話を聞いていた受付の男が、少し眉を寄せる。



「またですか」

「他にもあるのか?」



男はうなずいた。



「ここ数日で何件か報告があります。場所も少しずつ違います」

「全部ルーゼの森の近く?」


「今のところは、その辺りですね」



レイルが身を乗り出す。



「何かの魔物だったりしないの?」

「可能性はあります。ただ、まだ何とも言えません」


「人や家畜が襲われたって話は?」

「今のところありません」



ガルムは少し考えた。



「一度、もう少し調べた方がいいかもしれんな」

「私もその方がいいと思います」



リシアもうなずく。



「なんか気になるんだよね」

「その感覚は大事だ」



ガルムがレイルを見る。



「何もなければそれでいい。一度調べてみるか」

「うん」



受付の男も少し安心したような顔をする。



「もし何か分かったら、こちらにも教えていただけると助かります」

「ああ」



依頼所を出る。


レイルは歩きながら、ルーゼの森がある方角へ目を向けた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。