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第7話 カメラマン

僕は次の日、目の下にすごいクマができていた。全然眠れなかった。如月さんとのデートのせいで一晩中眠れなくて、まったく寝つけなかった。顔には間抜けな笑みが張り付いたまま、天井を見上げていた。


松田くんが後ろから教室に入ってきて、話しかけようとした。


「佐藤くん!おっす――って、ちょっと待て、その笑み何?!?!?」


僕はハッとした。


「え、えっ?何でもない!!」 「お前、目の下すごいクマできてるぞ!大丈夫か?」 「うん!心配しないで!だ、大丈夫だから!」 「昨日の夜、ゲームでもしてた?」 「それが理由だったらよかったんだけどな……」


ちょうどそのとき、如月さんが教室に入ってきて、前の席へと向かった。早坂さんが話しかけていたけど、彼女は僕に、冷たく、氷のような(というか殺気立った)視線を向けてきた。まるで、僕が何かバカなことを考えていたら食べてしまいそうな目だった。


――それとも……何か別の理由か……


「如月さん?」


クラスメイトの一人が彼女に声をかけた。


「ん?」 「大丈夫?ちょっと眠そうだけど」 「あ!大丈夫。気にしないで」


――眠そう?


僕は目をぱちくりさせた。


それを言ったその子自身も、あまり顔色が良くなかった。


「うわ……佐藤さん、もっとひどい顔してるじゃん……」 「え、そう?」 「目の下、クマすごいよ!一晩中ゲームでもしてたみたいだよ!」


松田くんが口を挟む。


「それ、俺も言った!」


僕は二人を無視して、机に突っ伏していた。中村くんが入ってきて、挨拶すると、あちこちから声が返ってきた。


「おー、これはこれは」


僕は顔を上げた。彼は僕の写真を撮った。「後で送っとくよ」彼は少し笑っていた。


「なあ……俺、眠すぎて何もできる気がしない……」


―昼休み―


昼休みになっても、まだ眠かったけど、さっきよりはましだった。前に先生に当てられて、ハッと目が覚めたことがあった。


またウトウトし始めた。手の上に顔を乗せて、少し休もうとした。でもそれも長くは続かなかった。誰かに髪をくしゃっとされる感触があって、顔を上げたときには、それが何だったのか分からなかった。


でも別に気にしなかった。廊下から僕を呼ぶ声がしたから。


「佐藤蓮くん、いる?」 「うん、ここにいる……」


僕はだるそうに立ち上がって、その相手のところへ向かった。


そこにいたのは[説明を追加]女の子で、僕に向かって、少し緊張した様子で微笑んでいた。


「ついてきてください……」


僕は何も聞かずについていった。眠すぎて、質問する気力もなかったのかもしれない。


誰もいない部屋に通された。机が乱雑に並んでいて、誰かがここを使っていたような形跡があった。壁には切り抜きを貼ったボードがあり、ほとんどの机には紙とパソコンが置かれていて、たぶん原稿の下書きが入っているようだった。


彼女は椅子に座って、僕のほうを向いた。


「柔道部であなたを見ました。はっきり言って、興味深かったです。あなたを調査するのを、私の使命にします!」


「はぁ?!?」


その大胆な発言に、一気に目が覚めた。


「はい!私は鈴木花音、青葉学園新聞のスポーツ担当記者です!」


「ちょ、ちょっと待って!調査って?どういうこと?」


「えっと……あなたがどうしてそんなに運動ができるのか、知りたくて。あちこち調べたんですけど、佐藤蓮っていう名前の選手、どこにも見つからなくて」


――そりゃそうだ!俺の本名は佐藤蓮じゃないんだから!


「だから、この謎の人物が何者なのか、突き止めたくなったんです!」


「聞きたいことがあるなら、俺に直接聞けばいいだけじゃ……あと、如月さんとか玲奈先輩に聞いたほうが早くないですか?」


「いいえ!如月さんは、もう全国優勝で有名だし、お金持ちだし、バレーも上手いし!玲奈先輩だって、この学校の柔道界じゃ大物だし!でも、あなたはどこからともなく現れた人だから!」


「私はこの取材力で、立派な記者になるんです!こんな簡単なことすら、誰にも聞かずに突き止められなかったら、成長できないじゃないですか!」


「鈴木さん、謎解きが好きなら、スポーツ記者って向いてないんじゃ……」


「うっ……ここしか空いてる枠がなかったんです……」


「はぁ……じゃあ、本当は何を目指してたの?」


「政治です!」


僕は一瞬、固まった。


「最近ニュースによく出てる新人がいて……一ノ瀬颯真っていう人なんですけど。すごくかっこよくて、みんなに気に入られてて。でも、絶対何か裏がある気がするんですよね……」


僕は振り向いた。


「頑張ってね」


「え?どこ行くんですか?」


「教室に戻る」


「待って!」


彼女が手を伸ばした。


「ん?」


「もう一つ、あなたを調べたい理由があって……その、試合のとき、結構かっこよかったので……」


「あ!ありがとう!」


彼女は少し頬を赤らめて、目をそらした。


「な、なんでもないです!」


彼女は少し照れているようだった。


「教室、戻ってください!」


僕は少し戸惑いながら、その場をあとにした。


彼女は照れていたけど、それはあまり気にならなかった。ただ、誰かに自分のスキルを褒められたことが嬉しかった。


教室に戻ると、早坂さんが僕の机のところに立っていた。


「他の女子とこそこそしてたわけ?」


「い、いや!全然そんなんじゃない!俺、そういうの興味ないから!」


「ふん」


彼女は去っていった。


如月さんは自分の席に座っていたけど、少し不機嫌そうだった。なぜかは分からなかった。


放課後、柔道部の練習がまた早めに終わったので、バレー部の体育館を見に行けた。正直、ストーカーみたいだなと自分でも思った。バスケ部が第一コートを使っていたから、彼女たちは第二コートにいた。


彼女がチームと合わせて練習しているのを見ていた。チームメイトがトスを上げると、彼女は跳び上がってスパイクを決めた。跳ぶとき、本当に高く跳んでいた。まるで飛んでいるみたいだった。


僕は見とれていた。彼女がレシーブし、トスを上げ、時にはスパイクを決める姿を。


試合に夢中になりすぎて、時間を忘れていた。終わったあと、建物の外に出て帰ろうとしたとき、誰かが僕の名前を呼んだ。


「佐藤くん!」


如月さんが後ろにいた。「い、いつからいたの?」


「さっきから。試合見てたよ。すごかった!あんなに高く跳べるものなんだ?!?めちゃくちゃ上手いね!あのダイブとかもすごかった!」


彼女は僕の興奮ぶりに少し照れていたけど、褒められて嬉しそうでもあった。手をぱたぱたと振って、少し慌てていた。


「ありがとう!来てくれるって知ってたら、もっと頑張ったのに」


「もう十分限界まで頑張ってるように見えたよ、如月さん。それに、前も同じこと言ったよね?」


「え?あ、そういえば言ってたね……」


「また見に来るよ」


「待って!さっき話してた女の子、誰?」


「ん?」


「クラスで君のこと呼んでた子がいたって聞いたけど。誰だったの?」


「学校新聞の記者だよ。ちょっと話したいことがあるって」


「あ、そうなんだ……」


「でも、俺のことかっこいいって言ってくれたんだ!それ、なんか嬉しくて」


「ん?」


彼女は何か衝撃的なことを聞いたような顔をした。笑顔はそのままだったけど、口がぽかんと開いていた。


「褒めてくれて、かっこいいって言われて。たまにはそういうの聞けて嬉しいよね!」


「う、うん……」


彼女は頬を膨らませていた。


「ちなみに、如月さんのことも褒めてたよ」


今度は驚いた表情を見せた。


「あたしのこと?」


「人気者だし、バレーも上手いって言ってた。それと、俺のことも調べたいんだって……」


「あはは……別にそれは――ちょっと待って、何て?」


「うん、俺の過去とか、そういうの知りたいんだって……」


――そんなの絶対避けるに決まってる!


「はぁ、まあいいや。今日、家まで一緒に歩く?」


「うん、いいよ!」


このところ、如月さんと一緒に歩くことが増えていて、話すときの自信もだいぶついてきていた。今もちょっと顔は赤かったけど、前ほど気にならなかった。分かれ道まで一緒に歩いて、それから電車に乗って帰った。


ベッドの上でメッセージが届いた。


如月さん、中村くん、松田くん、早坂さんとのグループチャットが、画面の一番上に表示されていた。


「今週の土曜日、みんなでどこか行かない?」

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