第2話 弟子入り
間が空いてしまいましたが更新はしっかり続けます
夜はすっかり更けていた。
宿の食堂にいた客たちもそれぞれ部屋へ戻り、町は静けさを取り戻し始めている。窓から差し込む月明かりだけが、静まり返った食堂を淡く照らしていた。
ふと、カケルは喉の渇きで目を覚ます。水でも飲もうと部屋を出ると、宿の入口から外へ出ていく人影が目に入る。ゼリスだった。
こんな時間に何をしているのだろう。少し気になったカケルは、その後を追って宿の外へ出る。夜風が心地よく頬を撫でる中、ゼリスは柵にもたれながら静かに夜空を見上げていた。
「眠れないのか?」
「やっぱりバレてたか」
「足音でな」
ゼリスも小さく笑い、二人の間に穏やかな沈黙が流れた。遠くから聞こえる虫の鳴き声だけが、静かな夜に響いていた。やがてカケルが口を開く。
「なぁ、ゼリス」
「ん?」
「なんで人助けなんてしながら旅してるんだ?」
ゼリスは少し考えるように夜空を見上げた。
「そうだなぁ……考えたこともなかったな。強いて言うなら、そこに困っている人がいたからかな」
「困っている人がいたから?」
「うん。理由はそれだけで十分じゃないかな」
そう言ってゼリスはカケルへ視線を向けた。
「カケル」
「なんだ?」
「あの商人を助けに行った時、何か理由があったかい?」
カケルは少し考え込む。巨大な魔物を前に危険なのは分かっていた。それでも、あの時は体が勝手に動いていた。
「目の前で困ってたから……?」
ゼリスは満足そうに頷いた。
「そう。お前の中にもう答えはあったんだよ」
カケルは口を閉じた。しばらく夜風だけが吹き抜ける。やがて、ゆっくりと顔を上げた。
「なぁ、ゼリス」
「ん?」
「俺を弟子にしてくれないか?」
ゼリスは驚くことなく、ただ静かに続きを待っていた。
「今日の魔物……俺じゃ全然勝てなかった」
カケルは拳を握り締める。
「正直、少しくらい強くなった気でいたんだ。でも違った。これから先、あんな奴がまた現れたら俺はミライを守れない。もっと強くなりたい。一緒に旅をさせてくれ。そして俺を鍛えてほしい」
真っ直ぐゼリスを見つめる。夜の静寂の中、ゼリスは少しだけ笑った。
「もちろん」
あまりにもあっさりした返事だった。カケルは目を丸くする。
「え?」
「人助けをしたい奴を断る理由なんてないさ。それに──」
「それに?」
「カケルが強くなって俺の代わりに色々やってくれたら楽になるしな?」
一瞬ぽかんとしたカケルは、次の瞬間吹き出した。
「ははっ、なんだよそれ!」
二人は顔を見合わせて笑った。笑いが収まると、カケルは勢いよく立ち上がる。
「ミライにも話してくる! 絶対行くって言うから!」
そう言い残し、宿へ駆けていった。ゼリスはその背中を見送りながら、小さく微笑む。すると背後の茂みが揺れた。
「盗み聞きは趣味が悪いぞ」
ゼリスが声を掛けると、木の陰からアッシュが姿を現した。
「いやぁ、なんか面白そうだったからさ」
悪びれる様子もなく笑いながら、ゼリスの隣へ並ぶ。
「師匠」
「ん?」
「弟子が俺だけじゃ不服かい?」
ゼリスは少し考えるふりをした。
「こないだドラゴンを見て腰を抜かしてた弟子だけじゃ、少し不安だな」
「あれはドラゴンだろ!? 俺じゃまだ勝てねぇよ!」
アッシュの慌てぶりに、ゼリスは声を上げて笑った。
「はっはっは! まあ冗談だ。半分くらいな」
「半分ってなんだよ!」
アッシュは呆れたようにため息をついたが、結局ゼリスにつられて笑った。ひとしきり笑い合ったあと、不意にその表情を少しだけ引き締める。
「でもよ、なんであいつらなんだ?」
ゼリスは満天の星が広がる夜空を見上げる。
「勘かな」
「勘?」
「うん。俺はあいつらなら強くなれる気がする」
「へー、そうですかい」
アッシュは呆れたように両手を軽く広げ、そのまま宿へ向かって歩き出した。
「じゃあ腰を抜かしてた役立たずは先に寝ますよ」
「そこまでは言ってないだろ」
ゼリスは小さく笑いながらその背中を見送った。アッシュは振り返ることなく、ひらひらと片手を振る。その姿を見送りながら、ゼリスは小さく呟いた。
「……明日から賑やかになるな」
その表情はどこか嬉しそうだった。
最近社畜度の上昇により人間らしい生活が出来る日が少なくなっており更新遅れてしまいました
今後も社畜しながら頑張って更新していきますので是非読んでいただければと思います
ここからはなるべくペース上げます




