#8
リュアはベッドで眠っていた。あれからヒカリノの家へ行き、そこにマリーヌも合流していた。散らかった部屋であり、明らかに不衛生な中、ヒカリノはカップラーメンを作っていた。そんな夕方だった。マリーヌは訊く
「ミューフ、リュアは上層部相手にどれだけ通用していた?」
ミューフは顔から察せられる程に意気消沈としていた
「相手が速すぎて、私もリュアちゃんも対応すらできませんでした」
「そうか……」
ヒカリノは全員の前にカップラーメンを置き、三分と設定されたタイマーも置かれた。そして、リュアの分も湯を入れてあった
「跡形もないと、サカツキでも復元が難しい。生きてるだけ運が良かったと思え」
ヒカリノはリュアの頬を突く
「起きろ、夕方だぞ?」
リュアはゆっくりと目を覚ます。大きい欠伸をし、目を擦った
ヒカリノ?てか、私何してたんだっけ……何か大事なことを──そう、戦ってた
「どうなったんだ?あれから」
そんな話を聴きながら、カップラーメンを食べ終えた。それからリューフの本部へ着いたのは夜、その日はヒカリノも一緒に泊まる事となった。ヒカリノが入浴をしてる最中、ミューフはリュアに話す
「災難でしたが、良い話題もありますよ」
「良い話題?」
「とても優秀なパティシエが雇えまして、リュアちゃんの考えたメニューをプロの方にレシピ化して頂きました」
「お、ほんとか!ついにケーキ屋か!」
「まだ利益の目処が見えませんので、店舗数は一つから様子見しつつ……で考えています。お店となる建物は既に買い取れたので、後はリュアちゃんがケーキの味や見た目にオーケーを出したら、農家さんや牧場主さんと契約をして、営業スタートです!」
リュアは嬉しそうにしていた。そんなリュアを見ながら、ミューフは微笑んでいた。そんな中、ヒカリノが湯から上がる
「ここ美味しい牛乳置いてるな!」
「はい!ちなみに、ヒカリノさんの飲んでいる牛乳が、今回契約を試みているホワイト牧場さんの物です!」
ヒカリノは思い出したよう言う
「ホワイト牧場……確か、アラタナヒが昔に買い取ろうとして失敗した所だな。どれだけの多額を出そうと、牧場主は断ったらしい」
「はい、その通りです!どこの勢力にも独占契約されておらず、それでいて質が高いので、契約をするのならベストだと考えました!」
「ミューフは賢いな」
「と言うことで、リュアちゃんの明日のスケジュールは……ケーキ屋に行き、全てのケーキを味見してください。その後は、リューフに入りたいという方たちの面接です!」
「面接……するのか?私が」
翌日になる。二人はケーキ屋にいた
「ねえミューフ?この人だれ?」
目の前には、背丈の二メートル程ある、黒人で強面の男が立っていた。エプロンを着けており、リュアは薄々察していた
「パティシエ長のヒラダキさんです!」
「ヨロシクネ」
片言だった
「なんか、ほら、イメージさ、優しそうなお兄さんお姉さんが作ってるみたいな、ケーキ屋ってさ……なんで筋肉マッチョの強面なんだ?ケーキ屋って店員の雰囲気大事だぞ?」
「可愛らしい女子のふわふわなケーキ屋はシロノウの十八番なので、話題性を考えてヒラダキさんに任せました!」
「ケーキヅクリ トクイダヨ」
思ってたケーキ屋さんと違いすぎる……
リュアが机に座ると、次から次へとケーキが出されていく。既に作ってあったようで、全てしっかりと冷えていた
「すごいな!見た目は私のイメージ通りだ!分かる、これはとろける……」
「高級ケーキ屋さんとして運営して行きます。リューフに入る金額ですが、月に六百万売れる想定で、そこから色々引きましたら、入る金額は五十万円前後の予定になります」
リュアはケーキを食べながら言葉を返す
「多いけど、なんか一兆のせいで霞むな……」
「一店舗でこれだけ入るのに加え、知名度の向上も狙えるので、成功の鍵になるのは間違いないです!」
成功か……私はグラサンを潰す
「ゲームの方も完成しまして、近いうちに試遊しに行きましょう。現在使った額は、約百億円になります。何億かは寄付に使いました」
「寄付!?そういうのって何億とかの規模でやるやつじゃないよな?それに、そんな無駄遣いして大丈夫なのか?」
「無駄遣いではありませんよ。国民の方からの印象も変わりますし、話題作りにもなります。寄付された側も、そして私たちにもメリットがあります!」
「へえ……なるほどな」
リュアはケーキを食べ続けた。少し休憩も挟みつつ、面接の時間になる。その部屋にはリュア一人だけで座らされていた
暖房効いてる……面接は寒いと集中できないから、ありがたいな
ノックが鳴る
「入れ」
ミューフと共に入室したのは、三名の男と二名の女だった。リュアが選んだ中からミューフが最終チェックをするという名の下、その面接は行われる
面接……何を話すべきか……
「なら、まずは座ってくれ」
五人は椅子に掛けた
ここはベタなやつを
「左から自己紹介をしてくれ」
首辺りまで伸びる黒髪を寝かせた、顔立ちの良い男だった。目は鋭く、座り方は足を組み格好をつけていた。服はタキシードであり、場違いを感じさせるような
「俺はライズだ。中学不登校で、卒業後アラタナヒに加入。二年で抜け、今ここなう」
アラタナヒに入ってたってことは優秀なのか?にしても、ふざけてるな
「次は儂かのう?」
かなり腰の曲がった、蹴れば折れそうな老人だった。髪はなく、白く長い髭を生やした男。しかしスーツは着ており、足元には杖が置いてあった
もう不採用にしたいんだが
「儂の生まれはここから南西、今で言うシロノウの街。田舎の貧しい家でのう、兄弟は七人おった。婆さん……いや、妻とは幼馴染だったんじゃ。小学生の頃、儂らは河原で遊んだりしてのう、」
これいつ終わるんだろう……
「もういいから、名前と重要な経歴だけ!」
「失敬。儂はトナルト。二十歳でフェリンへ加入し、そこから四天王に上がる。二十年四天王に居座った後、ずっと婆さんの介護をしておった。婆さんもまだピチピチの頃でのう、思い返すだけでも懐かしいわい」
四天王ってなんだ?
「それで、リューフに入るとして、介護は大丈夫なのか?」
儚い表情をしていた
「もうする必要はないんじゃ」
「そうか。それじゃ、三人目」
……リュアちゃんらしいですけど
三人目の女は、サングラスに帽子、黒マスクと怪しさしかない女だった。少しキツそうなスーツを着ており、後ろ髪を黒色のリボンで結んでいた
「私はミャリーリィニャ。大卒新卒。長所なし、短所なし。終わり」
これはこれでどうなんだ?というか、全員個性的すぎるな……いや、そうなるようミューフが仕組んだのか?
「なら次は、四人目だ」
尖った金髪のチャラそうな男だった。一応スーツは着ているが、座る態度はスーツに合った物では無かった
「俺はレイキース。経歴に語れるものはねえ。ちなみに、隣の女……左隣の方な、ミャリーリィニャとは古いダチだったりするぜ」
「そうか、二人揃ってな……」
どこか遊び感覚だな
最後の女は立ち上がった。長く黒色の髪をした女であり、髪は酷くボサボサで手入れがされていなかった。不気味に笑っており、その目はリュアをじっと見ていた。口は少し裂けており、身体中に切傷の跡があった
なんか怖いな……圧もある
「プレアンヌです……その、ミューフさんの大ファンでして、リューフに入りたいなと思いました……ほんとに、ほんとに応援してます」
まさかの私ですか?!
「経歴は、フェリンで雇われていました。ですが、ミューフさんを見た瞬間、こんなことしている場合じゃないとフェリンを抜け、ここの近くに引っ越しました!」
「そうか、確かにミューフは可愛いよな」
リュアちゃん!照れちゃいますよ!
リュアは履歴書を見ながら考える
偉そうなライズ、折れそうなトナルト、怪しいリィニャと、それの友人のレイキース、最後に色々変人そうなプレアンヌ……どうやったらこの面子になるんだ?
次もベタで行くか
「なら次は、志望動機を聞かせてくれ」
ライズは答える
「俺は楽に大勢力の幹部になりたいんだ。そこで、大勢力に入ってくる可能性の高いリューフに入り、幹部になる。リューフの成長に関しては賭けだが、合理的とも言えるだろ?」
なんかこいつ嫌だ!
「次」
「儂の力ももう六大勢力だと通用しないからのう……それに、これからの波に乗ってみたいんじゃ」
これからの波……リューフはそれだけ期待されてるのか……そうか
「次」
「優しそうだったから」
そう答えるミャリーリィニャに続けて、レイキースも答える
「俺はストーカーだ。ミャリーリィニャに着いてきたストーカー……許可は貰ってるけどな」
理由が浅い……
「最後は私ですね。私は先程話した通り、ミューフさんと一緒に居たいからです!その、ミューフさんとお風呂に入れたり……」
こいつ不採用ですね
「よし、なら採用者を発表する」
私が最も欲しいのは、トナルトさんなんですけれどね
「けど、ミューフの審査も通らないとダメだからな?それじゃ、まずライズからだ。アラタナヒ入ってたしギリ採用な」
「まじ?通るのか……」
「次は爺さん、不採用。理由は倒れられたら困るから」
リュアちゃん!?
「次はリィニャとレイキース。採用。プレアンヌも採用。ミューフ、交代だ」
「はい!」
リュアの隣にミューフは座る
プレアンヌさんは落としたいですね……
「第二面接は私が担当致します。私個人としてはトナルト樣も非常に魅力的な逸材に感じましたが、リューフのトップに当たりますリュアの判断ですので、トナルト様には退場を願います」
なんか口調がいつもと違いすぎる!
「そうか……また何かあったら宜しくの」
そう言いトナルトは部屋を出ていく
「まず、皆樣には部屋を移動して頂きます」




