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#6

翌日、リュアはマリーヌの車に乗せられ、そこへ向かった。グラサンの街、それも向かっているのは端のほうだった


「グラサンは嫌いなんだが!」


「そうなのかい?それは申し訳ない」


グラサン街から外れた小さな小屋だった


「え……グラサンじゃない?」


「グラサンだよ。ここにリュアと似た女性が住んでいる。だから、何かヒントを得られると思ったんだ」


「グラサンなのに能力耐性がない?相当強い能力でも持ってるのか?」


車から降りる。マリーヌがノックすると、まるで待っていたかのよう、すぐ扉が開いた。そこには目の鋭い美しい女が立っていた。背が物凄く高く、その長い黒髪をポニーテールにした女だ。グラサンでありながら、服装は白シャツに短パンと、何か違和感を覚える物だった


「綺麗だ……」


リュアは呟く。女はリュアの頭に手を置いた


「可愛いな!私の妹になるか?」


「ちょ!馬鹿にしてるだろ!」


「怒るな怒るな、折角の可愛い顔が……いや、これはこれで悪くない。台無しとは言えないな」


そう楽しそうに話している女の目に、マリーヌが入る。リュアが懸念していたことは、グラサン街にアラタナヒ制服で入っているマリーヌの存在だった


「すまない、ヒカリノさん。もし時間があれば、能力耐性について少し訊きたい」


「能力耐性か……なんでも聞いてくれって言いたいが、少し用があってな──そうだ!その車で送ってくれ!車の中で教えよう」


三人で向かっていた。リュアの隣にヒカリノが座り、既に用件は話していた


「そうか……私は使えないし、使おうと思ったこともないが、そういうことは私よりサカツキのが詳しいからな……」


「げ、サカツキ」


「嫌いか、嫌いか!だよな、私も嫌いだ」


なんで嬉しそうなんだ?


「一つ言えることは、無理とは言い切れないって事だ。明後日までにサカツキに訊いておく」


話一瞬で終わった……


「あ、ありがとうございます……」


「敬語なんて使うな。未来のトップなんだろ?エングランから聞いてるぞ」


「エングランから……」


エングラン……そう言うって事は、私に期待してるのか?何を企んでるか知らないが、エングランは私が潰す!


その後、グラサン街を抜け、都市を走る。人も多く、道も混んでおり、時刻は昼に差し掛かる


「そうだ、一緒に昼食はどうだ?サカガミに食堂があってな!」


「それは最高の提案だ。リュアが頷くのなら、食べていこう」


「行くぞ。ライバルとなる組織に潜入できる、この上ないチャンスと見た」


「なら行こうか」


到着する。三階建で横に長く、まるで学校のようだった。駐車場や闘技場も広く備わっており、モニターには若い人間が何人か映っていた。サカガミのメンバーだろうか


「思ったんだけど、マリーヌはその格好で入って大丈夫なのか?一応グラサン系列なんだろ?」


「別にグラサンとアラタナヒは不仲でないし、そもそもそんな血の気ある連中は、ピースやフェリンくらいだよ」


「そんなもんなのか?」


入り口には一人、モニターに映っていた女と同じ顔の女がいた。地に流れる程長い白髪に、不気味な顔のない狐の面を被った女。白い着物を着ており、白い傘と白色和風女だった


「ヒカリノ樣、お待ちしておりました」


「連れいるけど大丈夫か?」


「はい、問題ありません」


高く可愛らしい声の女だった


「こいつはニュルって言ってな、可愛いやつだ。仲良くしてやってくれよ」


「ヒカリノ樣、もう私も幹部なんですから、対等に扱って頂きたいです。それも人前で」


「それより唐揚げあるか?ここの唐揚げ、私はグラサンのより好きだ」


「もう!ヒカリノ樣!」


私と同い年くらいで幹部?なるほど……こいつだけには絶対に負けない


「俺も唐揚げにするとしよう」


三人は唐揚げを食べていた


「これ美味しいな!」


「だろ?ふわふわの衣とふわふわの中身で、まるでスイーツのよう食べれるんだ」


スイーツは言い過ぎだと思うけれど……


「けど、確かに本物だね」


食後に休憩を取った。それから、闘技場へと案内される。広く、下が砂の王道な闘技場だった


「今日私が来た理由は、ニュルがもっと強くなりたいらしいからな。見てやる」


「いいのか?私に能力とか見せちゃっても?」


「問題ありません。大体、どの組織の幹部も能力は明かされていますし、私も例外ではありません」


「そうなのか……」


ニュルの周囲に、雪が浮き出す


「ヒカリノ樣、行きますよ!」


ヒカリノは片手に木刀を持っていた。リュアは真剣にそれを見ようとしていた。その様子を横目に、マリーヌも観戦席へと座っている。人もおらず、もちろん最前列だった。雪が隙間なく浮遊している最中、雪の波が幾つもヒカリノを襲う


「こんな遅い攻撃に敵は当たってくれない」


ヒカリノは軽々と跳び、それを避ける


「雪を浮遊し盾にしているのか……確かに近づいてきた敵の勢いを少しは抑えられるかもしれないが、私に通用すると思うか?」


するわけない……ヒカリノ樣にこんな物が


リュアは訊く


「あの浮いてる雪、物凄く固められてるよな?瞬間移動なんかで衝突したら大怪我じゃないか?」


「その通りだよ。だから、普通は能力や剣を駆使して壊しながら進む。普通はね」


「普通?」


ヒカリノは足に力すら入れていなかった。ただ立っているだけ。なのに、既に雪は破壊されており、その首に木刀が突きつけられた


「は!?何が起きた?」


リュアは震えが止まらなかった


「ヒカリノは無能力者だ」


「え?」


「しかし、その筋力は桁が違う。全ての敵を力と速度だけで破壊する。勿論、能力耐性もヒカリノの前では意味を成さない」


無能力者……だけど最強?


「殆どの能力者が関わりたくないと思ってるよ、彼女とはね……」


「マリーヌは勝てるのか?」


俺がヒカリノに……考えたことはあるが


「全ての要素が上手く噛み合えば、いい戦いにはなる……と思う。同じ幹部でも、組織によって強さの基準は異なるんだ。グラサンは質が高すぎる」


でもヒカリノはグラサン……何れ戦う敵の技を、一度経験してみたい……


「も、もう一度お願いします……」


ヒカリノ樣には追いつけない……一年前から、全く近づいた気がしない。遠すぎる


ヒカリノは木刀を下げる


「次は頑張って避けろよ?私みたいな敵がいたら即死だぞ?」


「そんな敵いないですよ!」


ヒカリノは再び木刀を構える。ニュルは更に広範囲に雪の盾を張る。それは闘技場全体に及んだ


「これなら、どこからどう向かってきても対応できます!それに、雪にぶつかればダメージも蓄積されます!」


「成長してるな。なら、行くぞ?」


「はい……」


ニュルは研ぎ澄ましていた


ヒカリノ樣が瞬間移動したと同時に、別の場所に瞬間移動をする。そうすれば、少なくとも避けることはできる。それ以外は何も考えるな!


そうニュルが気づくと、既にそこにいた。瞬間移動でなく、まるで空間移動のような速度で。しかし雪は壊れており、ヒカリノの木刀は再びニュルの首元に向けられた


「そんな……」


ヒカリノは木刀を下げる


「なら、瞬間移動で私を追ってみろ。背を追うだけだ。そもそも目を慣らす必要があるな……この最高速度に」


「はい!」


その瞬間、リュアが闘技場へ足を着ける


「私も混ぜてくれ。追うどころか、タッチして捕まえてやる。いいだろ?」


「好きに参加してくれ」


二人は準備を整える。リュアは竜化し、ニュルも足にエネルギーを集めた。それと同時に、マリーヌはふと思い出したよう声を大に言う


「リュア!瞬間移動は、空中を蹴ることでもできるんだ!」


「分かったー!」


そう大声で返す


「なら、行くぞ」


ヒカリノが消える。リュアもニュルも目に追えず、ただその場に立っていることしかできない。まるでヒカリノがその場から消え、強風だけが吹いているようだった


「負けてられるか!」


リュアは闇雲に瞬間移動を使い、空を駆け回る。リュアは何か頭に違和感を覚えながらも、ひたすら飛び続ける。ニュルは必死にヒカリノの姿を探しており、その場から足が動かない


これが最高速度……私だって!


ヒカリノ樣には追いつけない……やっぱり私なんかに、サカガミの幹部でいる資格なんてない……


ヒカリノはリュアの真後ろに止まる


「ここまでだ」


二人は地に降りる


「ちょ、リュアさん、その頭……」


リュアの頭には猫耳が付いていた


「おいこら!!私に何してくれてるんだ!」


「なんか動きが可愛かったから……」


「殴るぞ!」


ヒカリノは表情を変えた


「けど、挑む心は大切だ。その点、ニュルはもう少し行動した方がいいな。止まってたら、それこそ格好の的だ」


「は、はい」


「それじゃ、少しペース落として続き行くぞ!」

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