【00.06:30】
本日二話投稿(このお話は一話目)です。
治癒の魔術を施し、二人の顔色に赤みが戻る。規則正しい呼吸音に、女三人は安堵する。
凜と有理はとにかく休ませることにし、自力で起きるまではそっとしておこうとなった。
そうなれば二人が起きるまでの間は待機ということになり、本来の目的である『深淵の犬を処理する』ことについて話し合う。
「――あんた等、馬鹿すぎない?」
話し合いの内容を聞いた少女の感想は、呆れたため息とともに吐き出されたこの一言であった。
「ば、馬鹿って……いや、まあ、確かにあたしは馬鹿だけど――赤点取るし」
「そっちの意味での馬鹿じゃないんだけど……でも、正真正銘の馬鹿もいるんだね」
反応したのは、凜が安定した呼吸をし始めたことにより明るい雰囲気を取り戻しつつある零香だった。
ただしその発言の内容は聞いて褒められるものではない。
ますます呆れた少女は、軽く首を横に振る。
そして、先程より大きなため息を吐いて、少女は黙る。
呆れすぎて言葉をかける気すら奪ったようである。
そんな少女に不満気な表情で零香は言葉を重ねる。
「むむむ……じゃあさじゃあさ! 何かいい考えがあるの? えーっと……名前、何?」
「――……ホント、気が抜ける程の馬鹿だよね……」
再び、大きなため息を吐く少女。
零香は「むむむ」と唸るだけである。
「え、えっと……私は八田 紅葉って名前で、大学生なの。あなたは?」
「……はぁ。あー、もう……。ぼくは、金指 冥」
「アタシは百本 零香! ねえねえ、冥ちゃんっていくつなの?」
「……十三」
「十三! 中一か中二だよね? どこ中?」
――うわ、この人面倒くさい。うざい。
そんな表情を隠そうとしなかった冥は、これ以上関わり合うのは嫌だと言わんばかりにフードを目元まで下げる。
それでもなお冥へと質問するのを止めずにぐいぐいと零香は言い募る。
紅葉はオロオロしながらもやんわりと二人の間に入っているが、零香に押されていく。
助けてほしいな、と紅葉は優へと視線を送った。
さらにこの人どうにかしてよという冥の無言の圧力を受けて、肩をひょいと竦めた優はクツクツと笑った。
「モモモト。ソイツ――カナサシは帰国子女で大学卒業してんぞ」
「――――ッ!!!」
「帰国子女で大学卒業してるぅ!!? あ、いや、その前に――なんでアンタが知ってんのよ!!! ストーカーはキモイ!!!!」
「なんでオレがストーカーにならなきゃいけねェんだよ……ニュースになってたろ? “十二で大学を卒業した天才少女”って」
「あ~~っ、アレかっ!!!」
一月ほど前――六月のニュースで報道された“十二歳でアメリカの某大学を卒業した日本の天才少女”。
日本に帰国した天才少女一家が報道され、一流企業に勤める父親がインタビューを受け答えしていた。
話題の天才少女本人の取材は色よい返事がもらえず、それ以降のニュースは皆無だが――父親の苗字は、確かに『金指』だった。
「って、冥ちゃんすごすぎない!? って、え、マジ、すごくない?」
「お、落ち着こう? 落ち着こうね、零香ちゃん」
テンションが異様に高い零香をやんわり諫める紅葉だが、効果はない。
ぐいぐい来る零香に冥は拒絶するようにフードを深く被り、ただ俯くだけである。
「――天才とか、騒がれる身の気も知らないで……」
ぼそり、と呟いた言葉は零香の捲し立てる言葉と諫める紅葉の声でかき消される。
唯一届いたとするならば、この騒ぎの元凶になった発言をした優のみだ。
相変わらず優はクツクツと笑いながら静観している。
その様子を盗み見た冥は一人、深く深くため息を吐き出した。
――早くこの二人、起きないかなぁ。
そんな現実逃避をしながら、ああでも起きたら起きたで零香は煩いんだろうなぁ、と一人憂鬱な気持ちになるのであった。
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