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いらっしゃい、非日常  作者: キリアイス
17/22

【00.05:30】

本日二話更新。このお話は一話目です。

 零香と紅葉が壁をすり抜けると、そこは書斎となっていた。

 ドアがあったと思われる場所や窓がある壁以外は全て本棚が設置してある。

 光源は天井から下がるアンティーク調のペンダントライトと、中庭の様子が見えるらしい窓くらいなものだ。

 窓の前は唯一本棚がないが、代わりにアンティーク調の机とイスがあり、その両隣の本棚のみが筆記用具やお茶のセットなど、本以外のものが置かれている。

 その他の本棚には、ぎっしりと本が詰められている。


 壁にひしめく本棚は天井に届く程の高さがあり、足元はA4判やB4判といった大きいサイズの本が並び、天井へ近くなる程その本のサイズは小さくなっていく。

 本の厚さは極端に薄いものもあれば、辞書のように分厚いものもある。


 お陰で六畳間ほどのこの部屋は、優たちが入ったことによりかなり圧迫感がある。

 元々部屋の中にいた少女はいきなり狭くなった室内を不快な様子で見た後、大きなため息を吐いた。


「――で? あんた等は、何?」

「廊下をうろつく犬から逃げてきた、善良な市民だぜ」

「そういうのはいいから。普通の人(・・・・)がこの部屋に気付くことはないはずなんだけど……現に、その――えぇっと、血まみれで倒れてる二人は、気付いてなかったし」


 止血はされていても、流れた血が無くなるわけではない。

 衣服を塗らす赤を見て、少女は顔を青くしながらもその正体を口にする。

 きょろきょろと視線をせわしなく動かし、最終的には床を見て呟いた言葉に、優はへぇ、と感心した声を出す。


「ってことは、二人が調査した時にはオマエはここにいて、認識がズレるようになってたのか?」

「――……ホント、あんた、なんなの? コレ、本物の魔術……でしょ?」

「うん? ちゃんと効果のある魔術だけど――アレ、知らなかった?」

「いや、うん……薄々、気付いちゃいたけど――知ったのは、ついさっきだし……」


 少女の消え入りそうな言葉を聞き、優はますます感心する。

 あまり人へ興味を示さない優だったが、目の前の少女には興味を引かれた。

 優は目を細めて不躾に少女を観察する。


 目の前の少女は夏だというのに長袖長ズボンで、季節を丸っと無視している。

 パーカーについているフードを深くかぶり、床へ視線を落としているから顔は隠れている。

 だが、この部屋を見つけた際、顔を合わせている。

 驚いた表情と人を見て硬直した体、恐怖で揺れた鳶色の瞳は人と接するのが苦手なのだろう、とすぐに思った。

 大慌てでフードを深くかぶったのも、人と接するのが苦手だからなのだろうと思っている。

 そんな慌ただしい態度も印象的だったが、一番印象的だったのはその少女の髪色だ。

 赤褐色の髪に赤みの強い明るい茶色――いや、金のゼブラブロンドだった。

 ただ、その髪はざっくばらんに切られ、長さはかなりバラバラだったのも覚えている。

 顔がフードに隠れているとはいえ、不規則な長さの髪の一部がはらりと時折見える。

 見える部分は赤みを帯びた金の髪ばかりだ。

 顔の作りは日本人らしい顔立ちだったから、染めているのだろうと優は思った。


 不躾に観察されて、少女は居心地悪そうに身じろぎをする。

 優の後ろで零香と紅葉が小さく抗議の声を出しているが、さくっと無視を決め込んでいる。

 とうとう少女は優の視線に耐え切れなくなり、少し後退しながらも視線を上げて胡乱気に優を見る。


「なに……さっきから、じろじろと……」

「んー、魔術を知らない人間が魔術を使いこなすとか、面白いなァ、と」

「それ、は……ほら、そこの……。本棚にたくさん、載ってるし……」


 少女はそろりと白く細い腕を上げ、部屋を圧迫するほどの存在感を示す本棚を指さした。

 壁一面の棚に入った本すべてが魔術に関する本であると聞き、零香と紅葉はもちろんのこと、優ですら驚いた。

 そんな三人が本棚へと興味関心を移したわけだが、少女は「ああ、違う違う」と焦ったような声を吐き出した。


「そういうのは、後で。ねえ、そろそろ、その血まみれの人たち、どうにかしないと……」

「あー、それもそーだな。治癒の魔術が載ってるのはどれかな?」

「……そっちの棚。腐食を治すのも、載ってた」

「へー? もしかして、この屋敷に出てくる化け物共の図鑑とかもあった?」

「……うん。でも、それはあとで。そっちの女の人、死んじゃうよ?」


 その少女の言葉を聞いて、大慌てで零香は本棚から治癒の魔術が載っている本を探し始め、その姿を見て紅葉も弾かれたように本棚へと向かった。

 やれやれ、と優は大袈裟に動作をした後、最初から見つけていた治癒の魔術が載っている魔術書をひょいと取り出し、二人の負った傷に対して適切な治癒をするのだった。

閲覧ありがとうございます。

右側が『30~59』の数字は待機組と称してましたが『安全地帯(部屋の中)にいる人たち』というのが正しいかな……?

『00~29』の数字は『安全地帯(部屋の中)から出てる人たち』となりますね。

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