第56話 あるもので終わらせない
物流側からの連絡は業務の窓口を通って来た。
俺個人への連絡ではなく、今回の受入れを待つ担当者へのものだった。
受入れ判断に必要な確認が続いている。
使える数は引渡しの記録ができたものだけとする。
末尾にマコの名前があった。
いつもの短い呼びかけは付いていない。
美緒は地上の開発担当と施設側へ同じ確認を戻した。
試験に使ってよい在庫は三種類が四食ずつ。
合計十二食だった。
食堂の日常分や非常用の分を借りて埋める案にはしない。
「六人なら、二回分を渡せる」
俺が言うと美緒が頷いた。
「数ではそうです。でも六種類から選ぶ予定だった人には、違う試験になります」
三種類の名前を並べた。
同じ魚の別の味付けが残っている。
種類が半分になっても、まったく同じものだけになったわけではなかった。
「品目は減る。でも二回分を選んで、持って行って、別々に食べるところは見られるよな」
「はい。変わった条件で参加してもらえるか、もう一度聞けるなら」
美緒は同意してすぐ作業へ戻らなかった。
俺の下書きへ指を伸ばす。
「六種類の写真は外しましょう。小さく注意書きを足すだけじゃなくて」
俺は下の方に書きかけた説明を消した。
最初に見える写真を三つへ変える。
予定の品目と同じように見せる手間を掛けていた。
笹倉さんと地上の担当から、変更した範囲での実施条件が返ってきた。
元の参加予定は十二人だった。
今回は六人までとし、希望と勤務の都合を聞き直す。
参加しなくても困ることがないよう通常の食事は別に確保してある。
俺は一人ずつ案内を送った。
待っていた料理が今回はないから見送るという返事も来た。
残念だったが、説明を読んで断れる案内になったことには安心した。
◇
物流側との短い確認にはマコも来た。
俺たちは引渡しに必要な品目と数だけを話した。
船で受けた相談やリセさんの資料は出さない。
マコは受け取ってよい十二食を記録上で示した。
「これを出したら、次の分はまだない。受け入れ待ちの分を足す約束はできない」
「分かった」
「予定の荷物が来た後でやり直す分も、別に相談して」
俺は頷いた。
今日の十二食を使いながら、次の分まで残るような顔で説明してはいけなかった。
用件が終わるとマコが俺の顔を見た。
「窓で見てたんだろ」
「うん。近づいてたから、もう届くと思った」
「見えても、まだこっちの荷物じゃないんだよ」
机に出ている数をもう一度見た。
今度はどの箱のことか分かった。
「忙しいところ悪かったな」
俺が言うとマコは片方の眉を上げた。
「仕事で聞くな、とは言ってない」
美緒が隣で頷いた。
「高瀬さん、引渡しをお願いする内容はこちらで揃えます」
「お願いします」
二人が仕事の声で話している。
いつもの飯の席には持ってこない顔が二つあった。
俺は自分の端末へ連絡先と担当の欄を作った。
親友に頼めば通る話にはしない。
確認を終え、マコは次の仕事へ戻っていった。
美緒は残った一覧を見て息を吐く。
「揃えてからやりたかったです」
「うん。俺も」
「でも、三つでも選べますね」
俺は写真の魚を指した。
「俺なら二つともこれにする。数の減り方、偏るぞ」
「まず参加者の方に選んでもらいます!」
美緒が笑った。
俺も手を引っ込めた。
選んでいい物が机に残っている。
そこから始められる仕事は、まだあった。




