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40歳、宇宙出張。 ~食品会社の普通のサラリーマンですが、会社命令で宇宙に行くことになりました~  作者: 綺羅星の猫


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第55話 来ない箱

自分の会社の荷物が来ると思うと、窓の外が気になった。


確認用の品目を載せた便が受入れに進むという案内が来ていた。

仕事の準備はそこまで終わっている。

美緒と二人、笹倉さんに確かめてもらった時間に物流側の見学窓へ来た。


「見えますか?」


美緒に聞かれ、俺は窓枠の右を示した。


「あの辺。前はそこから見えた」


「今のも?」


「……まだ分からない」


一度見ただけで案内する側へ回ろうとしていた。

担当の人が表示の見方を教えてくれた。

俺たちはそれぞれ身体を留めて待った。


マコにも来ることは伝えてあった。

今日は勤務中なので一緒には見られないという返事だった。

端末をしまい、窓へ向き直る。


地球の青い縁の手前に灯りがあった。

前より見つけるのが早かった。

美緒も頷いている。


あれの中に魚や肉の袋がある。

地上では箱に詰めるところを何度も見た。

最後に蓋をしてから、あんなところを通る仕事まで付いていた。


灯りはゆっくり近づいているように見えた。

目で追っているうちに息を止めていた。


見学用の表示が変わった。


『受入れ見送り』。


それだけでは何が起きたか分からなかった。

窓の外へ顔を寄せようとして、留め具が身体を止めた。


「止まったんですか?」


俺が聞くと担当の人が首を振った。


「接近を続けないという案内です。ここから動きを判断しないでください」


灯りはまだ見えている。

ぶつかった音も警報もなかった。

俺の方がその静けさについていけなかった。


担当の人は連絡を確かめた。

次の受入れの時刻はまだ出ていない。

見学の終了が案内され、俺たちは順に固定を外した。


窓を離れるまで俺は灯りを見ていた。

見ていればこっちへ来る、というものではなかった。


    ◇


仕事の机へ戻ると納入の欄が保留になっていた。


美緒は届く予定だった品目を開いた。

六種類のうち、今回の便を待っている三種類が灰色になっている。

俺は参加案内の下書きを見た。

受付を始める前でよかった。

でも準備の説明を聞いてくれた人たちはいる。


笹倉さんから、荷物はまだ施設側へ引き渡されていないと連絡が来た。

どこかの保管棚へ行けば出してもらえるわけではない。


マコへ送る言葉を作りかけた。

何があった、と打ってから止める。

今は向こうの仕事中だった。


美緒は試験の予定を消さず、実施できない条件を書き始めた。

俺は参加者向けの連絡を開いた。

まだ延期とも中止とも決まっていない。

分かっているのは、予定していた品目が揃わないことだった。


「相沢さん、先に受入れ待ちだけ伝えてもらえますか」


「うん。次の時刻は書かない」


俺は作った連絡を読み返した。

楽しみにしていた人の顔を思い浮かべると、何か大丈夫そうな一言を足したくなる。

その一言の根拠はどこにもなかった。


送信した後で手帳を開いた。

見学窓で荷物が近づくところを描こうとしていたページがある。

線は途中までしか引いていない。


窓の向こうにいたのは、自分の夕飯ではなかった。

待ってくれた人へ渡すはずの箱だった。


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