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40歳、宇宙出張。 ~食品会社の普通のサラリーマンですが、会社命令で宇宙に行くことになりました~  作者: 綺羅星の猫


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第54話 先に空けておく場所

おや・・・?

空の容器を二つ並べただけで、机が狭くなった。


美緒が借りた確認用の台へ器を留めている。

船から持ってきたものではない。

施設の専用器を使い、教わった使い方に近づけて試す準備だった。


俺は身体を留めて隣に収まった。

手帳を開く前に飲み物を置こうとして、行き先をなくす。


「やっぱり足りないな」


「食べる分と、まだ食べない分を一緒に置くとそうなります」


美緒が二つ目の容器を台から外した。

蓋の閉じたままの容器を側面の指定位置へ留める。

それだけで俺の肘が動かせるようになった。


「置ける場所を増やすより、今使わないものを別にする?」


「それが使いやすいかも含めて聞きたいです。取り出すのが大変なら別の案が要りますし」


俺は一つ目の蓋を開け、食べる時と同じように手を動かした。

次に側面の器を台へ戻そうとして、手が止まった。

一つ目を片づけないと、置く場所がない。

美緒は口を出さずに待っている。


「片づけるのが先かぁ」


「今、何を探しました?」


「手をもう一本ほど・・・」


美緒が吹き出した。


笑った後で、空いた器の一時置き場を確かめる。

食べる物がなくても忙しい机だった。


    ◇


説明室の端末に図を出し、リセさんに見てもらった。

笹倉さんもいる。

船側へ出せる記録に絞ってから画面を向けた。


「こちらの試験では、二回分を先に選んでもらう予定です」


美緒が説明するとリセさんは画面に描かれた二つの容器を交互に見た。


「同じものを二つ選んでもいいんですか?」


「使える数があれば。別のものを選んでも、同じものでも」


「それ、少し困りますね」


俺は顔を上げた。


「嫌な方の困る・・・ですか?」


「いいえ。明日は別のものにしようと思っても、今日の分がおいしかったら変えたくなりそうで」


俺も昨日の魚を思い出した。

食べる前に決めた明日の予定は、食べ終わった俺には他人の決定だった。


「その時に替えられるかどうかも、決めないといけませんね」


「先に替えられると言わないでくださいね?」


美緒に言われ、俺は口を閉じた。

まだ希望を聞くところだった。


リセさんは笑い、側面へ留める図を指した。


「ここの向きはこちらでも確かめたいです。席を離れる時に、通る人の邪魔にならないか」


俺は器しか見ていなかった。

図の横へ人が通る場所を足す。

手帳の端まで線が来て、紙を一枚めくることになった。


「相沢さんの腕の写真、分かりやすかったです」


「腕だけなら喜んで使ってください」


「腕だけ、ですか?」


リセさんに聞き返されて顔を上げた。

美緒が隣で手帳を押さえている。


「いや、記録に必要なところなら」


「では、迷った時のお話もお願いします。あの図だけだと全部上手にできそうに見えたので」


俺は空の容器で手が足りなくなった話をした。

リセさんは小さく声を上げて笑った。

これまでは笑ったのかどうか迷うこともあった。

今日は考えなくても分かった。


面談の終わりに笹倉さんと納入予定を確かめた。

確認用に送る品目は便の受入れ待ちになっている。

まだ参加者へ選ぶ画面は開けない。


俺は帰りに自分の夕飯の予約を見た。

こちらには受け取れる数が出ていた。

今まで一番先に見ていた料理の写真より、今日はその下の小さな表示が気になった。

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