第52話 明日の分も選ぶ
地上へ送った見学の記録に、俺の腕が大きく写っていた。
美緒が器の位置を撮った写真だ。
顔は写っていない。
俺の仕事は肘から先だけで説明できていた。
「これ、使っていいって言ったよね」
「はい。確認しましたよ」
「こんなに役に立つ腕だとは思わなかった」
美緒は画像を閉じずに笑った。
地上の包装担当から届いた線を写真に重ねると、蓋が隣の席へ張り出すところがよく分かる。
図だけを見ていた時には気づかなかった。
会社からの返事には二つの仕事があった。
リンカの小袋をまとめる試作を続けること。
もう一つは既存の商品を使い、二食分をまとめて受け取ってもらう小規模な確認だった。
船で使う製品を決める試験ではない。
まず施設側で参加条件を確かめた人に使ってもらい、受け取りから食事までの手間を調べる。
船側の条件に合うかは別に確かめる。
俺は同じ説明を二度読んだ。
「二食まとめて、か」
「一度に食べる意味ではないですよ?」
「そこは分かる!」
美緒が笑いながら一覧を開いた。
候補には魚も肉もある。
同じ魚でも味噌煮と生姜の味付けが別に並んでいた。
今夜なら肉にする。
明日の分も聞かれた途端に指が止まった。
「明日の俺が魚を食いたいか、今の俺に聞くんだな」
「その時に迷うところも見たいんです」
「買い置きの時は普通にやってたのに」
地上の冷蔵庫を思い出した。
買った日に食べなかったものを翌日に見て、これがあるから帰ろうと思うことがあった。
反対に食べる気が変わって別のものを買った日もある。
美緒は選ぶ画面だけでなく、受け取った後の置き場所を図へ足した。
食べ終えた容器と、次に食べる袋を同じところへ留めるわけにはいかない。
「全部いい匂いだったら、二つ目も開ける人が出るぞ」
「相沢さんですか?」
「俺を基準にするなよ」
「今、ご自分で言いましたよね?」
俺は今日の予約を開きかけて閉じた。
まだ仕事の話だった。
笹倉さんが受入れ側の条件を持ってきた。
使えるのは指定された確認用の区画だ。
参加する人の作業予定に合わせ、二回目までの扱いも記録する。
食堂の日常の提供を止めて場所を借りる話ではなかった。
美緒は開発担当へ確認する欄を増やした。
俺は参加の案内に、希望した品目が受け取れない時の説明を入れた。
六種類の名前を並べれば、誰でも好きなものを選べるように見える。
でも一つだけ先になくなれば、後から来た人の一覧は違ってくる。
「数まで見せる?」
俺が聞くと美緒は頷いた。
「受け取る時に初めて言われるよりも選ぶ前に知りたいです」
笹倉さんは一覧の横へ納入予定を出した。
今回のために地上から送るものと、施設にすでにあるものが分かれている。
予定の品目は受け入れが終わるまで使える数に入れない。
俺は六つの名前を見直した。
まだここにない夕飯も混ざっていた。
「受け入れが済んだら予約を受け付ける。それまでは確約しない・・・ですね!」
「はい。参加の方への案内も、その順でお願いします」
俺は下書きの受付画面を閉じた。
代わりに受け取り待ちの欄を作る。
食べる時よりずいぶん前から、夕飯の仕事は始まっていた。




