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40歳、宇宙出張。 ~食品会社の普通のサラリーマンですが、会社命令で宇宙に行くことになりました~  作者: 綺羅星の猫


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第47話 冷めたって、夕飯だ

臨時の受取口では、温かい品目を出す順がいつもと違っていた。


換気設備の異常で閉じた区画は、まだ使えない。

移動できるところへ戻っても、全部が元へ戻ったわけではなかった。


俺と美緒は案内された列へ身体を留めた。

係の人が番号を読み、二人分の袋を出す。

温めて出す予定だった主菜は準備に時間が掛かるという。


俺は自分の勤務表を見た。

次の連絡までに食べてしまいたい。

袋には温めずに食べられる表示も付いていた。


「このまま受け取っていいですか」


係の人へ聞くと、対象の品目を見て頷いた。


「こちらでしたら、そのままで。温めを希望される場合はお待ちいただきます」


俺は冷たいまま受け取った。

美緒も自分の予定を見て同じ方を選んだ。


係の人が受領の欄へその扱いを入れる。

俺たちは袋を携行帯へ戻し、空いている席へ向かった。


身体を留めてから美緒が聞いた。


「さっきは我慢しました?」


「温かい方がよかったよ。でも待つとあとが忙しくなるから」


美緒は頷いた。

俺の選択を記録へ使っていいか先に聞く。

俺はいいと答えた。


袋を開けると匂いがいつもより遠かった。

同じ表示の同じ料理なのに、口へ運ぶ前の期待が違う。


一口食べた。

味はちゃんとあった。

温かい時には急いで飲み込んでいたところを、今日は少し長く噛む。


「どうですか?」


美緒が聞いた。


「食える、よりは上だな」


「その上は・・・何段くらいあるんですか?」


「まだ何段あるかは分からない!」


彼女が笑った。

俺ももう一口取った。


隣の席には遅れて夕飯を受け取った人が来た。

俺たちとは別の品目だった。

最初に予約番号を見てから蓋を開けている。


食事が届いたことを確かめている顔だった。

さっきまでの俺と同じだった。


端末にマコの連絡が出た。


『そっち、戻れたか』


俺は席へ着いたことと夕飯を受け取ったことを返した。

少しして向こうからも食べたという返事が来る。


画面を閉じた時、美緒がこちらを見ていた。


「高瀬さんですか?」


「うん。向こうも食べたって」


「よかったです」


美緒は自分の袋へ戻った。

俺も続きを食べた。

誰かが無事に夕飯を受け取っただけで、残りの一口まで違ってくる。


    ◇


食べ終えて連絡の机へ戻ると、設備の続報が来ていた。

当面の経路は今の案内を使う。

点検と再開の判断は設備担当が続けるという。


美緒は今日の試作とは別に、夕飯の記録を開いた。

温かくない食事の味だけを書くのかと思ったら、最初の行は受取の時刻だった。


「味以外も?」


「待つ時間が減れば、その分ゆっくり食べられる人もいますから」


俺はさっきの自分の選択を見た。

待つ時間を減らすつもりで選んだ。

その分、食べる方は急がずに済んでいた。

そういうものらしい。


「待てる日は、温かい方にすると思う」


「はい。それも残します」


今日は冷たい方を選んだだけだ。

温かい夕飯が要らなくなったわけではない。

地上の商品一覧には、温めるものとそのまま食べるものが両方ある。

俺は今まで売るための分類としてしか見ていなかった。


美緒が記録を閉じる前に、俺はもう一つ頼んだ。


「冷たい時に開けた袋も、写真を残せる?」


「何に使いますか?」


「温かい方の写真だけで、どっちでも同じですって言いたくないんだ」


彼女は試作の資料ではなく食堂側への依頼を開いた。

撮影できる範囲と、使っていい記録を聞くところから始める。


俺は連絡の最後へ今日の感想を入れた。


腹が減っている時に、ちゃんと選べた。


もっと上手い書き方もありそうだった。

でも、待たずに受け取れる方があって助かったのは本当だ。


美緒が送る前の画面を見た。


「相沢さん、そのままでいいと思いますよ」


俺は変えずに送った。

初めて食べた料理でなくても、食べた後に増える話はあった。


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