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40歳、宇宙出張。 ~食品会社の普通のサラリーマンですが、会社命令で宇宙に行くことになりました~  作者: 綺羅星の猫


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第33話 親友の勤務先

翌日の午前、マコから来た仕事の連絡には集合場所が付いていた。


『搬入側の確認通路。笹倉さんから案内が出る』


俺ひとりを呼んだものではない。

新しい提供用の器が次の便に入るため、美緒と俺も受領前の打ち合わせへ出ることになっていた。


器を注文したのは地上の担当だ。

こちらでは評価に使う数と場所を確認する。

俺は二人分の入室案内を開いた。


それまで知っていた受取口よりずっと手前で、別の通路へ曲がる。

手すりの番号を確かめ、指定されたハッチの前で身体を止めた。


マコが内側から迎えた。


「社員証、見せて」


「顔じゃ駄目?」


「今日は駄目」


美緒が先に提示した。

俺も胸の前の社員証を出す。


マコは二人分を端末で照合してから通路を空けた。

黒い上着の袖は手首で留めてある。

ゆとりのある服の腹のあたりに、仕事用の携行具が付いていた。


同じ服を着た親友なのに、俺を待っている場所が違った。


通路の窓の外には接続設備が並んでいた。

食堂の窓で見た光より輪郭が近い。

細い構造物の端に誘導の灯りがあり、その向こうは何もない。


「ここへ船が来るのか」


「接続の操作を見る場所じゃない。ここから先は現場の担当だけ」


マコは窓の先と、俺たちが入ってよい打ち合わせ区画を順に示した。


壁に留めた表示には次の貨物の項目が出ていた。

食品袋と部品と生活用品が別々の行にある。

俺たちの器はそのうちの一行だった。


地上では箱を受け取ると箱の大きさを先に見る。

ここでは、運んで来るものの大きさの方が目に入った。


「相沢さん、こっちです」


美緒に呼ばれてようやく窓を離れた。


    ◇


打ち合わせの机へ身体を固定すると、マコが荷姿の画像を出した。


器は一つずつ使うのに、運ばれてくる時は重ねて固定されている。

俺はどこで箱を開けるか聞いた。


「受入れの確認が終わってから、指定の作業区画で。ここでは開けない」


「器でも?」


「器だから、受入れ確認のあとに洗浄して、使う人へ渡すまでの手順がある」


美緒が洗浄と保管の欄を確認した。

運ぶ人が食べる前の準備まで全部やるわけではなかった。


打ち合わせの途中で、物流側の人がマコへ別の記録を持ってきた。


「高瀬さん、こちらの受入れ確認もお願いします」


「この打ち合わせの後で見ます。先に運航側の確定分だけ残してください」


マコは今の画面を閉じなかった。

相手も俺たちの机へ資料を重ねず、別の固定板へ留めて戻る。


「忙しいところ、悪いな」


俺が言うとマコは首を横に振った。


「これも予定に入ってる。お前が押しかけたんじゃない」


美緒が器の取り出し方を質問した。

マコはその欄へ戻り、図を大きくした。


俺の親友だから説明してくれているのではない。

この場所では俺たちの荷物を渡す担当だった。


名刺をもらった夜に知った仕事が、机の向こうで動いていた。


打ち合わせが終わると俺は手帳を閉じた。

美緒は洗浄を担当する側へ追加の確認を出す。

マコはさっき別の固定板へ留めた記録を取った。


「次は、外を見て帰っていい?」


俺が窓を指すとマコが笑った。


「指定の通路なら。設備には触るなよ」


「触れない距離だろ」


「地上でも、触るなって言われる前に寄るだろ」


美緒が俺を見た。


「そうなんですか」


「高校の頃の話」


マコが答えた。


今の俺まで管理するな、と言いかけてやめた。

今日は初めて来た場所だった。


窓の向こうを見ていると、マコが脇を通った。

俺の手帳の留め具を指して、そこ緩い、とだけ言う。


自分で留め直した。

マコは確認してから別の机へ行った。


俺と飯を食っている時には知らなかった顔で、誰かの話を聞き始める。


美緒は窓の外へ目をやった。


「高瀬さん、あんなふうに働いてたんですね」


「俺も、今日初めて見た」


俺はマコの方をもう一度見た。


知っている時間が長いことと、知っていることが多いことは、同じではなかった。


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