宣戦布告(一般人視点)
俺は上山真輝。浜松駅前のオフィスに勤める、ごく普通のサラリーマンだ。
今日もいつも通り、平和な一日が終わるはずだった。
……あいつが現れるまでは。
「やあやあ、浜松の者たちよ。私はワット共和国が王、ワルト様に仕える幹部の一人、マイ。
――ただいまをもって、我らが浜松を占領する!」
一瞬、街中の誰もが「何を言っているんだ?」と呆気に取られた。だが、次の瞬間、その甘い声は冷酷な宣告へと変わった。
「ほう、誰も真に受けていないようね。……なら、見せてあげよう。私の『本気』というものを」
マイが手にしていた扇を、駅前にそびえ立つ高層ビルへと無造作に振り抜いた。
ゴォォォォォォォォ――ン!!!!!
鼓膜を震わせる轟音と共に、浜松の象徴とも言えるビルが、まるで砂細工のように無様に崩れ去っていく。逃げ惑う人々の叫び声。
誰もが直感した。こいつはヤバい、殺される、と。その絶望を切り裂くように、一人の男がコートを翻して現れた。
「随分と暴れてくれるじゃねーか、ワット! お前の相手は俺、宮野蓮だ。――俺を楽しませろ!」
漆黒の美しい剣を構えたその男の姿を見て、無謀だと思う者は一人もいなかった。この人なら、もしかしたら……。そんな微かな希望が、人々の胸に宿る。
「ふふ、いいでしょう。……カミサ、あとの指揮は任せるわよ。しっかりやりなさい」
「はっ、マイ様。お任せください」
「では、始めようか」
男が低く告げた直後、二人の姿は掻き消えた。肉眼では追えない次元の戦いへと突入したのだ。
一体何が起こっているんだ? 呆然と立ち尽くす俺たちの前に、残されたカミサが冷ややかに告げる。
「では、マイ様から仰せつかった仕事、さっさと終わらせましょう。――出てこい、『ロボット兵』」
地面から真っ黒く太い柱が突き出し、そこから無数の不気味な機械兵が溢れ出した。その柱は、遠く離れた場所にも二本見える。計三本の柱が、浜松を包囲するようにそびえ立っていた。
思考が追いつかない俺の目の前に、一台のワットが迫る。
無機質な金属の刃が、すでに俺の喉元へ振り下ろされようとしていた。
(まずい……! 死ぬ……!)
死を覚悟し、目を閉じたその時。
ガキィィィンッ!
鋭い金属音が響き、一人の少女がその刃を真っ向から受け止めていた。彼女は目にも止まらぬ速さで立ち回り、機械兵の核を正確に貫いて倒していく。
「大丈夫ですか!?」
我に返った時、少女は俺の目を見てそう言った。
「ここは危険です! 避難所があちこちに設置されています。早く逃げて!」
少女はそれだけ言い残すと、すぐさま次の敵へと駆け出していく。周囲を見れば、彼女と同じ制服を纏った少年少女たちが、命懸けで街を守っていた。
(俺がここにいても足手まといだ。家に帰りたいが……今は避難所に行くしかない!)
俺を救ってくれた少女の背中を、祈るような気持ちで見つめた後、俺は必死に避難所へ向かって走り出した。
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