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ストロント・ギア ―適性Sの戦痕―  作者: コロッケパン
第四章 浜松合宿編
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透斗・麻奈 vs 大地・美南

 浜松支部最上階のコートは、もはや一つの小宇宙と化していた。


「大地、重力の檻を! 逃がさないよ!」


「了解! 『グラビティ・プリズン』、最大展開!」


 山手大地が両手を広げ、掌を地面に叩きつけた瞬間、コートの全域にドス黒い重力波が駆け巡った。観客席の渚さえも椅子に押し付けられるほどの重圧。 


 その中心にいる透斗と麻奈の足元は、金属の床が飴細工のように歪み、沈み込んでいる。


「……っ! 流石にくるね、これ!」


 麻奈が歯を食いしばり、『剛鉄』を地面に突き立てて体を支える。


 しかし、大地は間髪入れずに追撃を放つ。重力によって引き寄せられたコートの破片を、巨大な質量弾へと変えて二人へ放った。


「そこだ、美南!」


「任せて! 『断空・千刃せんじん』!」


 大地の放った質量弾に合わせ、村山美南がギアを高速回転させる。


 放たれた真空の刃が、質量弾に「指向性」を与え、弾丸をさらに加速させた。


 重力と真空。二つの力が重なり、逃げ場のない死の嵐となって横浜ペアに襲いかかる。


「麻奈、三時の方向!」


「わかってる! ……ブースター、リミット突破!」


 透斗の叫びに応え、麻奈が『剛鉄』の背面に隠された全噴射口を開放した。凄まじい熱風と爆音。


 重力に逆らうのではなく、重力を「利用」してその場を回転。巨大な鉄塊を独楽こまのように回し、飛来する質量弾と真空刃をすべて強引に弾き飛ばした。


「……あんな無茶苦茶な防ぎ方があるの!?」


 美南が驚愕する隙に、青白い影が爆炎の中から飛び出した。


「『蒼月』――加速!」


 透斗だ。彼は麻奈の大剣が生み出した遠心力を、そのまま自身の推進力に変換。大地の重力場を切り裂くように、一筋の青い稲妻となって美南の懐へ。


「美南、後ろだ!」


 大地が咄嗟に美南の足元の重力を軽くし、彼女を後方へ吹き飛ばして回避させる。美南も空中で身を翻し、即座にカウンターの斬撃を放つ。


「させないって言ってるでしょ!」


「いや、こっちが本命だ!」


 透斗は空中で自身の体をひねり、斬撃を紙一重で回避。そのまま、大剣を振りかぶり突進してくる麻奈の手を掴んだ。


 二人の幼馴染が手を取り合い、高速回転しながら空中で激突のエネルギーを溜めていく。


「いけぇぇッ! 『双翼・破城槌ブレイク・ハンマー』!」


 透斗の神速と、麻奈の怪力。二人の全出力が一つに溶け合い、大地の重力ドームを内側から粉砕せんとする。


 大地と美南も覚悟を決めた。大地は全身の重力を一点に、美南はすべての風を刃へと集約する。


「大地、合わせるよ!」


「ああ、浜松の力を見せてやる!」


 四人が互いの最大火力を携え、コートの中央で交錯する。 誰もが勝利の行方に固唾を呑み、叫びを上げようとしたその瞬間――。 


――キィィィィィィィィィィィンッ! 世界から音が消えた。 激突するはずだった四人の武器が、まるで時間が凍りついたかのように、ある一点で静止している。


「……暑苦しいわね。青春ドラマは他所でやってくれない?」


 漆黒の衣を翻し、扇を優雅に広げた女、マイ。 


 マイは冷ややかに微笑むと、扇をパチンと閉じた。


「おやすみなさい、有象無象共」


 その呟きと共に、マイの姿が消えた。


 次の瞬間、四人の首筋に鋭い痛みが走る。マイが移動した残像すら見えないほどの超速で、四人の急所に一撃が叩き込まれたのだ。


 ピッ――ピッ――ピッ――ピッ。


 機械的な電子音が静寂の中に響き渡る。


 致死ダメージを検知した四人の「リターン・ギア」が、緊急強制転送を開始する音だった。


「透斗ッ! 麻奈ッ!」

「大地くん! 美南さん!」


 渚や浜松の隊員たちの悲鳴が響く中、眩い閃光が走り、四人の姿は一瞬にして掻き消えた。


 残されたのは、ひび割れたコートと、退屈そうに髪を弄るマイ一人。


 ハイパー隊員四人がかりでも、触れることすら叶わなかった。


 五百人のスーパー隊員たちが、震える膝を押さえ、絶望に飲み込まれていく。


「さて。これであの『うなぎ』をゆっくり堪能できるかしら。……あ、でもその前に、邪魔なゴミをもう少し片付けなきゃいけないのよね」


 マイの視線が、観客席にいる渚たちに向けられた。


 もはや戦える者はいない。最強の楯も、神速の矛も、すべて奪い去られたのだから。

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今日は午後8時50分くらいにもう1回投稿する予定です。

ぜひ読んでください!

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