透斗・麻奈 vs 大地・美南
浜松支部最上階のコートは、もはや一つの小宇宙と化していた。
「大地、重力の檻を! 逃がさないよ!」
「了解! 『グラビティ・プリズン』、最大展開!」
山手大地が両手を広げ、掌を地面に叩きつけた瞬間、コートの全域にドス黒い重力波が駆け巡った。観客席の渚さえも椅子に押し付けられるほどの重圧。
その中心にいる透斗と麻奈の足元は、金属の床が飴細工のように歪み、沈み込んでいる。
「……っ! 流石にくるね、これ!」
麻奈が歯を食いしばり、『剛鉄』を地面に突き立てて体を支える。
しかし、大地は間髪入れずに追撃を放つ。重力によって引き寄せられたコートの破片を、巨大な質量弾へと変えて二人へ放った。
「そこだ、美南!」
「任せて! 『断空・千刃』!」
大地の放った質量弾に合わせ、村山美南がギアを高速回転させる。
放たれた真空の刃が、質量弾に「指向性」を与え、弾丸をさらに加速させた。
重力と真空。二つの力が重なり、逃げ場のない死の嵐となって横浜ペアに襲いかかる。
「麻奈、三時の方向!」
「わかってる! ……ブースター、リミット突破!」
透斗の叫びに応え、麻奈が『剛鉄』の背面に隠された全噴射口を開放した。凄まじい熱風と爆音。
重力に逆らうのではなく、重力を「利用」してその場を回転。巨大な鉄塊を独楽のように回し、飛来する質量弾と真空刃をすべて強引に弾き飛ばした。
「……あんな無茶苦茶な防ぎ方があるの!?」
美南が驚愕する隙に、青白い影が爆炎の中から飛び出した。
「『蒼月』――加速!」
透斗だ。彼は麻奈の大剣が生み出した遠心力を、そのまま自身の推進力に変換。大地の重力場を切り裂くように、一筋の青い稲妻となって美南の懐へ。
「美南、後ろだ!」
大地が咄嗟に美南の足元の重力を軽くし、彼女を後方へ吹き飛ばして回避させる。美南も空中で身を翻し、即座にカウンターの斬撃を放つ。
「させないって言ってるでしょ!」
「いや、こっちが本命だ!」
透斗は空中で自身の体をひねり、斬撃を紙一重で回避。そのまま、大剣を振りかぶり突進してくる麻奈の手を掴んだ。
二人の幼馴染が手を取り合い、高速回転しながら空中で激突のエネルギーを溜めていく。
「いけぇぇッ! 『双翼・破城槌』!」
透斗の神速と、麻奈の怪力。二人の全出力が一つに溶け合い、大地の重力ドームを内側から粉砕せんとする。
大地と美南も覚悟を決めた。大地は全身の重力を一点に、美南はすべての風を刃へと集約する。
「大地、合わせるよ!」
「ああ、浜松の力を見せてやる!」
四人が互いの最大火力を携え、コートの中央で交錯する。 誰もが勝利の行方に固唾を呑み、叫びを上げようとしたその瞬間――。
――キィィィィィィィィィィィンッ! 世界から音が消えた。 激突するはずだった四人の武器が、まるで時間が凍りついたかのように、ある一点で静止している。
「……暑苦しいわね。青春ドラマは他所でやってくれない?」
漆黒の衣を翻し、扇を優雅に広げた女、マイ。
マイは冷ややかに微笑むと、扇をパチンと閉じた。
「おやすみなさい、有象無象共」
その呟きと共に、マイの姿が消えた。
次の瞬間、四人の首筋に鋭い痛みが走る。マイが移動した残像すら見えないほどの超速で、四人の急所に一撃が叩き込まれたのだ。
ピッ――ピッ――ピッ――ピッ。
機械的な電子音が静寂の中に響き渡る。
致死ダメージを検知した四人の「リターン・ギア」が、緊急強制転送を開始する音だった。
「透斗ッ! 麻奈ッ!」
「大地くん! 美南さん!」
渚や浜松の隊員たちの悲鳴が響く中、眩い閃光が走り、四人の姿は一瞬にして掻き消えた。
残されたのは、ひび割れたコートと、退屈そうに髪を弄るマイ一人。
ハイパー隊員四人がかりでも、触れることすら叶わなかった。
五百人のスーパー隊員たちが、震える膝を押さえ、絶望に飲み込まれていく。
「さて。これであの『うなぎ』をゆっくり堪能できるかしら。……あ、でもその前に、邪魔なゴミをもう少し片付けなきゃいけないのよね」
マイの視線が、観客席にいる渚たちに向けられた。
もはや戦える者はいない。最強の楯も、神速の矛も、すべて奪い去られたのだから。
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今日は午後8時50分くらいにもう1回投稿する予定です。
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