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ストロント・ギア ―適性Sの戦痕―  作者: コロッケパン
第四章 浜松合宿編
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合宿のはじまり

 時間は非情なほどに早く過ぎる。


 合宿のお知らせが届いたのは六月のことだったが、カレンダーはいつの間にか八月。とうとう浜松合宿の日がやって来た。


 現在、私たちは新幹線の車内で浜松へと向かっている。


 後ろの席では、透斗とうと麻奈まなが仲良く無線イヤホンを片方ずつ分け合い、タブレットで映画に没頭している。


そして隣では、実羽(みわさんが最近ハマっているらしいスマホゲームに熱中していた。


(……修学旅行かな、これ?)


 内心でツッコミを入れていると、不意に一人の男性が通路に立ち、全員の前で口を開いた。


「ハイパー隊員四名、およびスーパー隊員八十一名の諸君。私は横浜支部の支部長を務めている長田おさだだ。まずは今回の浜松合宿に全員が参加してくれたことを嬉しく思う」


 その落ち着いた声に、車内の空気がわずかに引き締まる。


「合宿は三泊四日。初日は観光に充てるが、二日目以降は浜松支部との合同演習だ。浜松には、横浜とはまた違った特性を持つ隊員が揃っている。彼らから多くのことを学び取ってほしい。……まもなく浜松に着く。忘れ物のないようにな」


 短くも重みのある演説が終わると、タイミングを合わせたかのように浜松駅への到着を告げるアナウンスが流れた。


(浜松支部の強い人たち……一体どんな訓練が待ってるんだろう)


 私は期待と緊張を胸に、新幹線を降りる準備を始めた。



 ◇ 



 結果から言えば、浜松観光は最高に楽しかった。 


 浜松城の石垣に圧倒され、浜名湖の遊覧船で風に吹かれ、そして、夜ご飯にはあの「うなぎ」を堪能した。


 私の地元・綱島では見られない壮麗なお城、海のように広い湖、そして絶品のうなぎ!


 何もかもが新鮮だった。


「はぁー……疲れた。でも、本当に楽しかった!」 


宿泊先の宿で息をつくと、麻奈が笑いかけてくる。


 「良かったね、渚。でも、浮かれてられるのも今日までだよ。明日からは地獄の合同演習なんだから」


「分かってるって……。あ、そういえば、さっきの支部長さん。私、初めて見たかも」


 新幹線での演説を思い出し、何気なく二人に聞いてみた。すると、実和さんが教えてくれた。


「長田支部長はね、あの『オサダマーケット』の社長なのよ。超多忙な人だから、普段はあまり『ストロント』に顔を出さないの」


(……え、嘘でしょ!?)


 オサダマーケットといえば、全国にチェーン展開する超大型スーパーだ。映画好きなら誰もが知る『オサダシネマズ』さえも傘下に収める、巨大グループのトップ。


 そんな人が、私たちの支部長だなんて。


「疑う気持ちもわかるよ。私も最初は耳を疑ったもん」


 麻奈が肩をすくめる。実和さんはスマホを操作しながら付け加えた。


「公式ウェブサイトを見れば、確かに社長の名前は支部長と同じよ。まあ、そんなこと覚えなくても死ぬことはないから、安心しなさい」


 実羽さんの言葉に苦笑いしながらも、私の思考は別のところへ飛んでいた。


(あの長田支部長は、十条議員のことも知ってるのかな……?)


 虎徹先輩が暴走したあの事件以来、十条議員は表立った動きを見せていない。けれど、あの男がこのまま引き下がるとは思えなかった。


(もしかして、この合宿中に何か……。……いや、考えすぎか)


 窓の外、夜の浜松の街並みを眺めながら、私は密かに膨らむ不安を打ち消すように首を振った。

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