作戦始動(バルト視点)
「よく集まったな、諸君。堅苦しいのはなしだ、いつも通り楽にしてくれ。早速本題に入るが……君たちのうちの誰かに、折り入って頼みがある」
玉座に深く腰掛けた我らが王・ワルト様が、重々しく口を開く。
(はぁ、やっぱりこれだ。今度はどこをぶち壊してくりゃいいんだ? まさか新しい土地でも見つけたとか言わねーだろうな。もしそうなら、見つけた奴を恨んでやる……)
俺が内心で毒づいていると、ワルト様はどこか遠い目をして続けた。
「実はな……我の愛娘が少し前まで日本に潜入しておったのだが、帰国するなりこう言ってきたのだ。『お父様、浜松のうなぎがとっても美味しかったわ。だから浜松をお父様のものにして、私に一生うなぎを食べさせてちょうだい』とな……」
(あの小娘、王に何を吹き込んでやがる! 奪いに行く実務を誰がやると思ってんだ! 浜松だあ? また日本かよ。あんなクソ遠いところ、しばらくは御免被りたいね!)
内心の荒ぶりを必死に抑え込んでいると、王の視線が鋭くなった。
「というわけでだ。誰か浜松へ行って、そこを占領してきてほしいのだが……」
「恐れながら、ワルト王。我らが行くより、王自ら向かわれた方が確実なのでは? その、圧倒的な力をお持ちなのですから」
俺がやんわり、というより全力で拒否権を発動させようとすると、ワルト様はむっとした顔で言い返した。
「我だって行きたいのは山々だ! だが、王が国を離れてみろ。皆が心配するであろう? 少なくとも、我自身が心配なのだ!」
(……自分で自分のことが心配なだけじゃねーか。この王、相変わらずだな)
その時、背後から凛とした声が響いた。
「では、私がお引き受けいたしましょう」
振り返ると、そこには幹部の一人・マイと、その副官であるカミサが立っていた。
「あれ、マイ。お前来てたのか?」
「よっ、バルト。……ワルト様、遅参いたしましたこと、深くお詫び申し上げます」
「構わん。マイ、主が行ってくれるというのか?」
ワルト様が期待を込めて身を乗り出す。だが、マイは不敵に微笑んで首を縦に振った。
「はい、この度の件は私にお任せ下さい。絶対に浜松をワルト様のものにしてみせます。その『うなぎ』とやらを王家の食卓へ献上してみせます! 」
「おお、やってくれるかマイよ! では、この件は全て貴様に任せる。よろしく頼むぞ!」
「はっ。我が王の御心のままに」
こうして、ワット共和国による「浜松占領作戦」――そのあまりに身勝手で恐ろしい侵攻が、唐突に幕を開けた。
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