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ストロント・ギア ―適性Sの戦痕―  作者: コロッケパン
第三章 スーパー隊員編
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透斗vs暴走した虎徹

「やあ、虎徹。お前がまさか暴走、……いや、操られているのか? 流石にそれは予想外だったぞ。まあいい、どうせ今は言葉も通じないんだろうしな」


 透斗の言葉に、虎徹先輩は微動だにしない。


 ただ、獣のような荒い吐息と、全身から溢れ出す禍々しいプレッシャーだけが辺りに立ち込めていた。


 「本当に残念だよ。――だが、ここからは手加減なしだ!」 


 言い放つと同時に、透斗の姿が掻き消えた。 


 次の瞬間、虎徹先輩の構える大盾に、私の全力をも遥かに凌駕する一撃が叩き込まれる。 


――ガギィィィンッ! 


 鼓膜を突き刺すような鋭い金属音が炸裂し、火花が夜の闇を白く染める。


 間髪入れず、二撃、三撃。


 ――ガキィィッ! ギギィッ!


 重戦車同士が正面衝突したかのような、腹の底に響く鈍い衝撃波。 


 通常の試合なら割れんばかりの歓声が上がるはずの光景だ。けれど、今は誰も声を上げられない。高次元すぎる剣戟と、場を支配する圧倒的な緊迫感に、誰もが息を呑み、ただ凝視することしかできなかった。


「ほう。暴走して出力が上がってるな。こりゃあ、少しは腕が鳴るぜ」 


 透斗の口角が上がる。 彼が振るう刃は、さらに加速していく。


 空気を切り裂く音が、もはや悲鳴のような高音へと変わった。


 ――ヒュッッ……! 


 風が鳴いた、と思った次の瞬間だった。 


 透斗のギア『蒼月』のうちの一つの刃が、あの堅牢を誇った虎徹先輩の盾を、まるで濡れた紙でも引き裂くかのように一刀両断にしていた。


(あんなこと……私がどれだけ必死に挑んでも届かなかった領域に、あんなに簡単に。やっぱり透斗は、次元が違う……!) 


 盾を失った虎徹先輩は、迷うことなく自身の刀を抜き放ち、透斗へと切っ先を向けた。


 ……透斗と真っ向から剣で渡り合おうというのか。


「いいぜ、望むところだ!」 


――ガギィンッ! ガガギィンッ! カカッ! 


 幾重にも重なる衝突音。音が耳に届いた時には、もうそこに二人の姿はない。


 火花だけを残し、一瞬で別の地点へと移動しては、また凄まじい硬質音が響き渡る。


 (虎徹先輩が、あの透斗のスピードに喰らいついている……。理性を失う代わりに、これほどの身体能力を引き出しているというの?)


 誰もが、この神域の戦いはまだ長く続くものだと確信していた。 


――だが、決着はあまりに唐突に訪れる。


――バゴォォォォォォォーーンッ!!


 大気を震わせ、地面を揺らす、それまでとは比較にならない轟音。 


 土煙が舞うその中心で、先ほどまで恐るべき速度で暴れ回っていた虎徹先輩が、地面に深く沈み込むように横たわっていた。


 「虎徹、久々にやり合ったが強くなったな。……だが、まだ俺の方が上だった。ただそれだけだ」


 透斗が冷徹に宣告する。 


 容赦のない最後の一撃が振り下ろされ、虎徹先輩の体はリターン・ギアの淡い光の粒子となって、その場から消滅した。


 私は、肩で息をする透斗のもとへ駆け寄る。

 

 「……すごいよ。やっぱり、私じゃまだ足元にも及ばないね」 


 すると、透斗はいつもの不敵な笑みを浮かべてこちらを振り返った。


 「フッ、まあな。でも渚も今の調子で頑張れば、今の俺くらいにはすぐなれるさ。安心しろよ」


(そうなれれば、いいんだけどな……) 


 心の中で苦笑いしたことは、誰にも内緒だ。


 いつか、私はあの暴走した虎徹先輩よりも強くなってやる。そして必ず、透斗と麻奈、あの二人の隣に胸を張って立てるくらいに。


 舞い散る光の残滓の中で、私は静かに、けれど強く拳を握りしめた。


 こうして、スーパー隊員大会は終わりを迎えた。

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