決戦 渚vs虎徹
――そして二日後。
運命の、決勝の日が訪れた。
私は今、虎徹先輩との試合開始を直前に控え、蓮さんと最終調整を行っている。
「山上。お前が虎徹に勝てるかどうかのポイントは、ただ一つ。……奴の『盾』を断ち切れるかどうかだ。それができなきゃ、前の試合と同じく無様に負ける。……わかるな?」
蓮さんの言葉が、重く胸に突き刺さる。
そう、前回の敗因は明白だった。私は、あの盾を突破できなかった。
だけど、地獄の特訓を乗り越えた今の私は――違う!
「今日の試合でこそ、私は虎徹先輩の盾を……絶対に切ってみせます!」
「おう。……おっと、もう三十分前か。そろそろ行くぞ」
「はい!」
◇
ついに、決勝の舞台。
入場した瞬間、客席から麻奈や如月先輩たちが大きく手を振っているのが見えた。
……みんながいる。それが、私に折れない勇気をくれる。
対峙する虎徹先輩は、いつも通りの不敵な笑みを浮かべていた。
「虎徹先輩。ずっとこの時を待っていました。今日こそあなたに勝ってみせます。もう、負けません!」
「いい気合だ。だが悪いな、こっちも譲るつもりはねえよ。またお前を完封して、二度と立ち上がれなくしてやる」
――試合開始の合図が、轟いた。
ガチンッ、ガチンッ、ガギィィィィィンッ!
激しくぶつかり合う金属音。
やはり虎徹先輩の盾は硬い。並の攻撃では傷一つ付かない。
死角に回り込み、背後から切りつけても、瞬時に剣で対応される。
(……やっぱり、正面から突破するしかない!)
私は深く腰を落とし、ギアに魔力を凝縮させた。
『おっと、山上選手――溜めに入ったぁ! 必殺技で我妻選手の盾を強行突破するつもりか!?』
実況が叫び、会場の熱気が一気に跳ね上がる。
だが。
蓮さんは言っていた。
『虎徹の盾は、お前の出力を待っている』と。
それなら――逆を行く!
「ほう。山上、お前の技がどれだけ通用するか――受けて立ってやるよ!」
虎徹先輩が防御を固める。
その瞬間、私は溜めた力を「技」ではなく「加速」へと全転換した。
『……っ!? 山上選手、技を打たない!?』
「なに……っ!?」
虎徹先輩の顔が驚愕に染まる。
大技を耐えるために固めた防御体制――それは今、最大の隙。
「これで、終わりです……虎徹先輩!」
ドシュッ! と鋭い音を立てて、私の刃が虎徹先輩の胴を捉えた。
手応えはあった。戦闘は、終わった……。
……はずだった。
おかしい。
いつまで経っても、『リターン・ギア』の転送光が溢れ出ない。
「どういうこと……!?」
顔を上げた私は、息を呑んだ。
虎徹先輩の目の色が変わっている。
獣のような、どす黒い光を宿した目で、私に歯を剥き出しにしていた。
『……我妻選手!? 一体どうしたんだ、追撃に来ない!』
実況の声も届かないのか。
虎徹先輩は微動だにせず、ただ異様な殺気を放ち続けている。
「渚! 逃げて!!」
客席から、麻奈の悲鳴のような叫びが響いた。
「虎徹先輩は自分の意志で動いてない! もう、意識を失ってるわ!」
その言葉に、会場が凍りついた。
「……おい、虎徹の意識がないって……どういうことだ?」
「操られてる……? あいつを操れる奴なんて、この場にいるのかよ!?」
観客の動揺が波のように広がる。
目の前の虎徹先輩には、隙が全くない。……いえ、それどころか、先ほどまでとは別人のような「禍々しい威圧感」に支配されている。
その時。
スピーカーから、緊急のアナウンスが流れた。
『――支部長からの緊急連絡です! 我妻選手は何者かに操作されている可能性があります! これよりハイパー隊員が介入します。山上選手は、速やかに避難を――』
警告が響く中、コートに一人の人影が降り立った。
私の親友であり、この異常事態に真っ先に駆けつけてくれた少年。
「渚。あとは、俺に任せな」
透斗の背中が、いつになく大きく見えた。
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