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ストロント・ギア ―適性Sの戦痕―  作者: コロッケパン
第三章 スーパー隊員編
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決勝トーナメント

 サバイバルを生き残った精鋭十六名による、決勝トーナメント。


 頂点に誰が立つのかを決める、本当の戦いが幕を開けた。


 もし私が勝ち進んだとして――虎徹先輩と当たるのは、決勝。


 私は拳を握りしめ、改めて隣に立つ蓮さんに意気込んだ。


「虎徹先輩に勝って、私はこの大会で優勝してみせます、蓮さん!」


 私の宣言を聞いた蓮さんは、ふっと口角を上げると、低く、力強い声で返してくれた。


「わかった。だが、油断するなよ。サバイバルを生き残ってきた連中だ。少なくとも、弱いやつは一人もいない」


「はい!」


 ――そこからの進撃は、自分でも驚くほどだった。


 一回戦、二回戦。


 私はそれぞれ、周囲が息を呑むほどの『圧勝』で勝ち抜いた。


 そして迎えた今日。


 準決勝。

 対戦相手は、横浜支部のスーパー隊員。


 あの虎徹先輩の次に強いと言われている実力者――真田莉桜さなだりお先輩だ。


『準決勝、第一試合! 選手入場です。右からは――山上渚!』


 会場に響き渡るアナウンス。


 その瞬間、蓮さんが私の背中を軽く叩いた。


「かましてこい。しっかり見といてやるよ」


 ……不器用な、でも一番力になる応援。

 私は「はい!」と短く返事をして、眩いライトが照らすコートへと踏み出した。


     ◇


 目の前に立つ真田先輩は、凛とした空気を纏う、とても綺麗な女性だった。


 だが、その手にあるギアを見れば、彼女の凄絶さが伝わってくる。


 ギア『一槍いちやり』。

 その名の通り、一切の無駄を削ぎ落とした、美しくも巨大な槍。


「あなたが適性Sで有名な子ね。でも、ごめんなさい。私は虎徹君に一矢報いたい……。ここで負けるわけにはいかないの」


「……私も同じです。こんなところで止まるわけにはいかないんです!」


 宣言と同時に、試合開始の合図が響いた。


 ――ッ!


 真田先輩の槍は、まるで生き物のようにしなった。

 動きは軽やかで、軌道はどこまでも鋭い。


 私が繰り出す攻撃は、すべて完璧なまでの最小限の動きで受け流されていく。


 以前の私なら、この絶対的な実力差に焦りを感じていただろう。


 でも、今は違う。


(……槍は長い。間合いは広い。だけどその分、手元への力は伝わりづらい。なら!)


 私はあえて、大きく後ろへ跳んだ。


『おっと、渚選手――ここで莉桜選手から大きく距離を取った! 槍の間合いから逃れ、体勢を立て直すつもりか!?』


 実況の声が会場に響く。

 ――残念。その予想はハズレだ。


 私は、地獄の特訓を通して知っている。

 莉桜先輩は、相手が遠ざかった瞬間に自ら踏み込み、超高速の必殺技を叩き込む癖があることを。


 来る。


「どうやら、ここまでのようね。適性Sさん」


 莉桜先輩が低く構える。

 槍の穂先に、膨大なエネルギーが凝縮されていく。


「これで終わりよ――『ハイパーランス』!」


 ――ドォォォォォォォンッ!


 空気が爆ぜるような轟音と共に、彼女の姿が消えた。


 超高速の突進。

 常人であれば、何が起きたか分からぬまま『リターン・ギア』を強制発動させられ、敗北していただろう。


 だが、私の目は――蓮さんとの特訓で磨き上げたこの目は、その軌道をハッキリと捉えていた。


「『重心崩し』……ッ!」


 バキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンッ!!!


 鼓膜を突き刺すような、金属が粉砕される破壊音が会場中に木霊した。

 

 蓮さんや麻奈がやってみせた、あの技術。


 槍に込められた全エネルギーを、そのまま一点へ叩き伏せて跳ね返す。


 莉桜先輩の絶対の信頼を寄せていた槍が、私の目の前で、無惨に砕け散った。


「ッ……な、に……」


 莉桜先輩が驚愕に目を見開く。

 静まり返る会場。

 誰もが、横浜支部二位の武器が『折られた』という事実を飲み込めずにいた。


「ありがとうございました、莉桜先輩。……とても、楽しかったです」


 無防備になったその腹部へ、私は一気に踏み込む。

 手にしたギアが、白銀の光を纏った。

「『ホワイト・アクト』!」


 ――キィィィィィィィィィィン!!


 鋭い電子音が響き、莉桜先輩の体が光に包まれる。

 消えていく間際。


 彼女が、満足そうに少しだけ笑った気がした。

 彼女の体は光の粒子となり、専用室へと強制帰還させられた。


『……っ、しょ、勝者――山上渚ぁぁぁぁ!!』


 ワンテンポ遅れて、地鳴りのような歓声と拍手が降り注いだ。


 観客席では、麻奈と透斗が自分のことのようにガッツポーズをして喜んでいる。


 そして――蓮さんを見た。


 蓮さんは、私に向けてスッと親指を立てていた。

 声は聞こえないけれど、確かに「よくやった」と言われた気がした。


 (……あの地獄の特訓は、無駄じゃなかった!)


 熱い感情が胸を突き上げる。

 次こそは、あの背中に。


「待っててください、虎徹先輩!」


 モニター越しにこちらを見ていた虎徹先輩が、挑戦を歓迎するようにニカッと笑った。


 その後に行われた準決勝第二試合。


 虎徹先輩は、まるで嵐のような圧倒的な力で、瞬く間に決勝進出を決めた。

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