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ストロント・ギア ―適性Sの戦痕―  作者: コロッケパン
第三章 スーパー隊員編
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不器用

 図書室から医務室へ続く長い廊下。避難を促す赤い回転灯が、私たちの影を静かに引き伸ばしていた。隣を歩く麻奈の横顔は、怪物のような強さを見せた後とは思えないほど、穏やかで、どこか悲しげだった。


(そうだ、十条議員が裏切ってるかもしれないんだった……)


 如月先輩から託された、重すぎる真実。もしこのことを話せば、麻奈たちは再び組織という名の地獄に引きずり込まれてしまう。


 あんなに過酷な特訓を耐え抜き、今もボロボロになって戦っている三人を、これ以上苦しめたくない。


 医務室の前には、任務から戻ったばかりの透斗と実羽がいた。二人の汚れきった防護服と疲弊した顔を見て、私の決意は固まった。


「渚! 無事だったか!? 図書室で襲撃があったって聞いて……」


 心配して駆け寄ろうとする透斗に、私は努めて明るい、いつもの笑顔を見せた。


「うん、大丈夫。私はみんなを守ってみせるよ」


 その言葉は、嘘じゃない。でも、そのために今は、この秘密を私一人で背負わなきゃいけない。三人がいつまでも「ストロントの英雄」でいられるように、泥をかぶるのは私だけでいい。


「……渚? 何か、隠してない?」


 鋭い実羽が私の瞳を覗き込む。私は胸の鼓動を悟られないよう、優しく笑って首を振った。


「ううん、何でもないよ。……ちょっと、蓮さんのところへ行ってくるね。昨日の特訓の続き、まだ終わってないから」


 私は三人に背を向け、ゆっくりと歩き出した。


 後ろから聞こえる「無理すんなよ」という透斗の温かい声を、私は心の中で大切に抱きしめる。


(私はお前を止めてみせる、十条……! みんなが笑っていられる未来を、私が絶対に守り抜くから)


 廊下の角を曲がった瞬間、私の表情から笑顔が消えた。


 白銀のギア『ホワイト・アウト』を強く握りしめる。


 親友たちを傷つけないために、一人で巨悪の懐へ飛び込む。


 それは、山上渚が選んだ、一番不器用で、一番優しい戦い方の始まりだった。

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