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ストロント・ギア ―適性Sの戦痕―  作者: コロッケパン
第三章 スーパー隊員編
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裏切り

 れんさんとの地獄のような剣術特訓を終えた私は、ボロボロの体を引きずりながら、図書室の最奥へと向かっていた。


 如月先輩から「どうしても今すぐ伝えたいことがある」というメッセージを受け取っていたからだ。


「……渚。よく聞いて」


 図書室の明かりは落とされ、端末の青白い光が如月先輩の険しい表情を照らしていた。


「私が新宿のボスロボットと、虎徹こてつのギアのログを解析して辿り着いた答え。それは、私たちの組織……ストロントそのもののいびつさよ。……これを見て。上層部の一部に、ワットの技術をそのまま横流ししている形跡があるわ。……それだけじゃない。この命令系統のトップにいる男――十条じゅうじょう議員。彼こそが、この戦争を裏で操っている『擬態したワット』である可能性が極めて高いの」


 心臓が早鐘を打つ。私たちが命を懸けて守ってきた組織。その頂点にいるのが、倒すべき敵だった?


「……全部、あいつが仕組んだ遊戯ゲームだって言うんですか……?」


「おそらくね。……渚、今すぐここを逃げなさい。あなたが『適性S』に目覚めたのは、彼にとって――」


 その時だった。図書室の自動ドアが、静かに閉ざされた。入り口に立っていたのは十条ではなかった。十条が放ったと思われる、全身を漆黒のギアで包んだ顔の見えない刺客。


「渚、逃げて……! その男、規格外イレギュラーよ!」


 如月先輩の叫びと同時に、私はギア『ホワイト・アウト』を起動させた。


「ギア、セット。――起動! 」


 白銀の閃光が図書室を包む。だが、刺客はその光をものともせず、一撃、また一撃と、私の装甲を鋭く削り取っていく。特訓で培った技術でさえ、この男には通用しない。


 まるで私の動きを最初から予見されているかのように、すべての先を越されていく。


 ドンッ! と重い一撃が腹部を捉え、私は本棚へと叩きつけられた。追い打ちをかけようとする刺客。その時、私の前に如月先輩が飛び出した。


「渚、伏せて――!!」


 先輩が放ったエネルギー波が刺客を止めたが、その代償はあまりに大きかった。漆黒の刃が、無慈悲に如月先輩の肩口を切り裂いたのだ。


「――ぁ……」


 崩れ落ちる如月先輩。同時に、警報音が鳴り響く。


『……判定、深刻な損傷! 如月凛、リターン・ギア、強制発動!』


「やめてよ!!」


 私の叫びも虚しく、如月先輩の体は白銀の粒子に包まれ、消えていく瞬間に私へ託すような微笑みを残した。


「……あ、ああああああああ!!」


 覚醒。適性Sの出力が、これまでのリミッターをすべて焼き切り、私は地を蹴った。ただ純粋な殺意を乗せた、超光速の一撃。


 激突する白と黒。だが、それでも――この男は倒しきれない。致命傷を避けるどころか、私の覚醒した出力にさえ順応アジャストし始めていた。


「……っ、はぁ、はぁ……」


 力が底を突きかけ、膝が震える。死を覚悟した、その時だった。


「――渚! どこにいるの!?」


 図書室の入り口に、一人の少女が現れた。

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