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ストロント・ギア ―適性Sの戦痕―  作者: コロッケパン
第三章 スーパー隊員編
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敗北

 リターン・ギア発動によるギアの五時間の強制凍結。


 カプセルが開き、帰還室の冷たい空気が肌を撫でた時、私を待っていたのは賞賛でも慰めでもなかった。


「……目が覚めたか。無様な負け方だったな」


 扉に寄りかかって立っていたのは、れんさんだった。その隣には、いつになく真剣な表情の実羽みわさんの姿もある。


 負けた。適性Sという看板を背負いながら、私は虎徹こてつ先輩の盾一枚を崩せず、死の淵まで追い詰められた。光の粒子となって逃げ出すしかなかった自分の不甲斐なさが、胸を締め付ける。


「蓮さん……私……」


「言い訳は聞かねえ。山上、お前をそこまで叩きのめしたのは虎徹の盾じゃねえ。お前自身の『慢心まんしん』だ」


 蓮さんが、一冊の古い手帳を私に投げつけた。それは、電子化された今の時代には珍しい、手書きの修練記録だった。


「お前は新宿での勝利や佐伯への圧勝で、無意識に自分の『出力』を信じすぎていた。だが虎徹は違う。あいつは才能のなさを自覚し、自分の肉体と技術だけで、お前のそのデタラメな力を封殺したんだ。ミットで勢いを殺し、剣で芯を捉える。あいつにとってランク戦は、お前というバッターを打ち取るための『配球』に過ぎなかったのさ」


 実羽さんが、手元の端末に映し出された先ほどの試合のログを私に見せる。


「見てなさい。あんたの剣筋、後半は全部同じリズムよ。出力さえあれば勝てるなんて、プロの世界じゃ通用しないのよ」


 私は、自分の戦いがあまりに幼く、単調だったことを突きつけられ、顔が熱くなるのを感じた。適性Sという数字に甘えていたのは、私だったんだ。


「明日から、特訓の内容を変える。いいか、山上。次にお前が『ホワイト・アウト』を抜く時は、あいつの盾を砕く時じゃない。あいつの盾を『ないもの』として扱う時だ」


「……お願いします、蓮さん。私に、本当の戦い方を教えてください」


 翌朝。


 私はギアがまだ使えない体を引きずって、図書室の如月きさらぎ先輩の元へと向かった。


 けれど、如月先輩の口から出たのは、予想だにしない言葉だった。


「……渚。虎徹の盾を気にする前に、これを見て。鶴見川であなたが戦ったあのボスロボット、あれの残骸から、ストロントの機密コードが見つかったわ」


 如月先輩が差し出した画面には、信じられない文字列が並んでいた。


 敵であるはずのロボット兵の、心臓部にあたるプログラム。そこに刻まれていたのは、横浜支部の、いや、ストロント本部の開発ナンバーだった。


「……これ、どういうことですか? 私たちが戦っている敵は……まさか、ストロントが作ったものだって言うんですか?」


「わからない。でも、誰かがこの戦争を『利用』している可能性があるわ。……渚、気を付けて。あなたが手にする力は、いつか組織そのものに牙を向くことになるかもしれない」


「……正直、怖いです。組織のことも、自分の持っている力の正体も。……でも、だからこそ私は止まれない。何も知らないまま守られるだけの女の子は、昨日の敗北で終わりにしました。真実を暴くためにも、私はこの力を『自分の意志』で使いこなせるようになりたいんです」


 敗北の悔しさと、組織への拭えない疑念。


 朝日が昇る中、私は重い足取りで、蓮さんの待つ第14訓練場へと向かった。


 そこには、昨日の「盾」を攻略するための、新たな、そして地獄のような特訓が待ち受けていた。


「見ててください、虎徹先輩。次は盾の重さも、組織の闇も、全部まとめて私の剣で切り裂いてみせますから!」

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