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ストロント・ギア ―適性Sの戦痕―  作者: コロッケパン
第三章 スーパー隊員編
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ランク戦 渚vs虎徹

 横浜支部地下、第14訓練場。


 佐伯さえきくんとの死闘、そして昨日の大規模任務での獅子奮迅の活躍。それらの噂は一晩で支部全体に広まり、会場を埋め尽くす隊員たちの視線には、かつてのような冷ややかな嘲笑は消えていた。


 そこにあるのは、純粋な期待と、少しの恐怖。


「……おい、今日も適性Sが無双するのか?」


「相手は我妻あがつま虎徹こてつだぞ。あの『横浜の鉄壁』を、新人がどう崩すか見ものだな」


 観覧席の最前列には、麻奈まな透斗とうともいた。昨日の任務でボロボロのはずなのに、親友の晴れ舞台を見届けようと、食い入るようにステージを見つめている。


『……第二試合、開始!』


 審判の合図と共に、私は弾かれたように地を蹴った。


 迷いはない。昨日の巨大ロボット兵を沈めた、力を一点に凝縮する感覚。私は最短距離で虎徹先輩のふところへと潜り込み、白銀のギア『ホワイト・アウト』を真っ向から叩きつけた。


 ドォォォォォォォォン!!


 凄まじい衝撃音が響き、虎徹先輩の巨躯きょくが後方へ数メートルも滑る。


 会場が、地鳴りのような歓声に包まれた。


「――っ、重い……! でも、動かせる!」


 私は確信した。今の私の出力なら、あの巨大なたてごと、虎徹先輩を押し切れる。


 私は休む間もなく連撃を叩き込んだ。右、左、上段。型なんて知らない。


 ただ、れんさんとの修行で培った「止まらない連動」だけを意識して、白銀の閃光を浴びせ続ける。


 ガギィィィィン! ガガギィィィン!!


 虎徹先輩は、その巨盾を必死に動かして防いでいるように見えた。完全に防戦一方。反撃の隙すら与えない。私の剣が盾を叩くたび、火花が散り、虎徹先輩の姿勢が確実に崩れていく。


(行ける。昨日のボスロボットより、先輩の動きは読みやすい。このまま押し切れば……私の勝ちだ!)


 勝利への確信と共に、さらなる出力を引き出そうと右腕に力を込めた。会場の誰もが、渚の圧倒的な攻勢に「決着は近い」と確信した、その時。


 巨大な盾の陰から、虎徹先輩の声が低く響いた。


「……ハッ。いい『球』を投げるじゃねえか、山上やまがみ。……だが、そろそろ目が慣れてきたぜ。お前の『フォーム』は、もう丸見えだ」


 一瞬、空気が凍りついた。


 私の次の突き。必勝を信じて放ったその一撃に対し、虎徹先輩は盾を引くどころか、あえて一歩「踏み込んで」きた。


「え、私は虎徹先輩を押せてるはずなのに、なぜ……?」


 自分の全力が通用していると信じていた私の心に、冷たい戦慄が走る。


 私の剣筋が、吸い込まれるように虎徹先輩の「」に引きずり込まれる。


 ――ガチリ。


 盾の角度が変わる。私が全力で叩きつけたはずの力が、まるで魔法のように外側へ逃がされていく。前のめりになる私の姿勢。


「……あ……っ」


 視界が揺れる。


 盾の影から、抜き放たれた虎徹先輩の剣が、私の喉元をかすめるように突き出された。


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