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ストロント・ギア ―適性Sの戦痕―  作者: コロッケパン
第三章 スーパー隊員編
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鶴見川下流域・大規模防衛任務

 鶴見川つるみがわ沿いの工業地帯は、いまや重油と焦熱の煙に包まれていた。


 対岸を埋め尽くすのは、無機質な駆動音を鳴らす『ロボットワット・オートマトン』の波。それらは一切の叫び声を上げず、ただ機械的な精密さで、防衛線を押し潰そうとしていた。


「……気持ち悪い。新宿のワットより、ずっと冷たい感じがする」


 私は『ホワイト・アウト』を抜き、低く構えた。

 遠くでは、麻奈まなの黄金の一撃と透斗とうとの雷光が、鉄の群れを弾き飛ばしているのが見える。けれど、倒しても倒しても、後続の機体が瓦礫を乗り越えて押し寄せてくる。


「――無駄口はそこまでよ。来るわ」


 実羽みわが巨大な狙撃銃『はやぶさ』の引き金を引く。


 青白い閃光が空気を切り裂き、数百メートル先の指揮官機と思われる大型個体の『核』を正確に撃ち抜いた。直後、周囲のロボット兵たちが一瞬だけ動きを止める。


山上やまがみ。今日の課題を忘れるな。『爆弾』じゃなく『牙』になれと言ったはずだ。力を垂れ流すな、一点に絞れ」


 れんが影のように地を滑り、最前線の群れの中へ飛び込んだ。


 彼は一切の無駄な光を放たず、漆黒の刃でロボット兵の関節と核だけを、最小限の動きで断ち切っていく。


(……すごい。蓮さんの動きには、一ミリの無駄もない。あんなに囲まれているのに、まるで水の中を泳いでいるみたい。私も、あの中へ行かなければ……!)


 私は地を蹴った。正面から迫る三体のロボット兵。


 いつもなら力を込めて薙ぎ払うところを、私はグッと堪えた。蓮さんとの修行、あの生卵の感触。力を「爆発」させるのではなく、刀身の先、数ミリだけに「集中」させる。


「ハッ!!」


 白銀の閃光が、細い糸のように空を走った。

 手応えはない。けれど、目の前の三体は、核を綺麗に二つに割られ、音もなく沈黙した。


「……手応えがない。でも、確かに斬れてる。力を爆発させるんじゃなくて、伝えたい場所にだけ伝える……。蓮さんの言ってたこと、少しだけ分かった気がする……!」


 だが、安堵した瞬間、地面が大きく揺れた。


 工場の巨大なタンクをなぎ倒し、現れたのは全身を厚い重装甲で覆った、高さ五メートルを超える『重装甲型オートマトン』。その手には、まるで城壁のような巨大な盾が握られていた。


「……あんなの、どうやって抜けば……」


 ガギィィィィン!!


 私の放った渾身の横薙ぎが、巨大な盾に火花を散らして弾かれる。


 あまりの衝撃に腕が痺れるが、相手は機械。痛みを恐れず、そのまま盾を押し込んで私を押し潰そうとしてくる。


「……山上、よく見とけ。あれが次の相手、虎徹こてつの『盾』を破るヒントだ」


 蓮の声が響く。私は、迫り来る鉄の壁を見据え、ホワイト・アウトを握り直した。


 力任せじゃダメだ。どこかに、この巨体を維持するための「歪み」があるはず。

 

 私はあえて盾の正面から動かず、目を凝らした。

 重い盾と、それを支える太い腕。その接続部にある、歯車が噛み合う瞬間に生じるわずかな隙間。


(あそこだ……!)


 私は盾の重圧を逆に利用し、表面を滑るように懐へ潜り込んだ。


 ホワイト・アウトを突き出す。狙うのは「面」ではなく「点」。


「貫け……っ!!」


 純白の針が、盾の継ぎ目を貫通し、内部のエネルギー回路を直撃した。


 内側から爆ぜる青い火花。あれほど堅牢だった盾が、たった一撃で、音を立てて砕け散る。


「……どんなに厚い盾でも、エネルギーでできている以上、どこかに『継ぎ目』があるはず。あいつを倒せれば、私はきっと虎徹先輩の盾だって……。見ててよ、バルド。私はもう、爆弾なんかじゃない!」


 崩れ落ちる鉄の巨像を背に、私は顔を上げた。

 実羽が指差した先、鶴見川の下流では麻奈と透斗が、さらに激しい爆炎の中にいた。

 

「……待ってて、二人とも。今、助けに行くから!」


 私は白銀の閃光を纏い、本当の戦場へと駆け出した。

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