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ストロント・ギア ―適性Sの戦痕―  作者: コロッケパン
第二章 新宿侵攻編
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逆襲

 新宿の夜が、断末魔のような悲鳴を上げていた。


 カマカミが放つ赤黒い雷は、もはや天災そのものだった。都庁前の広場は、一振りごとにクレーターが刻まれ、私たちの退路は瓦礫の山に閉ざされている。


 私の『ホワイト・アウト』の限界時間は、ついに残り三秒を切り、警告音が鼓膜を狂わせるように鳴り響いていた。


「ハハッ……死ね、羽虫ども! 貴様らの希望ごと、この街を更地にしてくれる!」


 カマカミが狂気と共に巨大な大鎌を振り上げた、その絶望の瞬間。


 上空から、空間そのものを切り裂くような鋭い光条が降り注いだ。


「――地上は賑やかね。私も混ぜなさいよ」


 ビルの屋上に立つ、巨大な狙撃用ギアを構えた実羽。彼女の放った一撃が、カマカミの大鎌を正確に弾き飛ばした。


 それを合図にするかのように、瓦礫の山が内側から爆ぜ、五つの影が地獄の底から這い上がってきた。


「……待たせたな、渚。……おい石丸、仕上げだぞ」


「ハッ、当たり前だ透斗! ……東京の盾も、まだ砕けちゃいねえんだろ、皇!」


 蓮、透斗、麻奈、実羽、迅、石丸、麗、皇。


 横浜、大宮、八王子、千葉、東京――五支部が誇る、「八人のハイパー隊員」。


 満身創痍。防護服はボロボロで、流れる血が地面を赤く染めている。それでも、八人の瞳に宿る意志は、カマカミの重力波さえも焼き切るほどに鋭かった。


「総員……リミッター、完全解除アンロック!!」


 皇凱の咆哮が、新宿の空気を震わせる。


 その瞬間、八人の全身から、新宿の夜を真昼に変えるほどの奔流のようなエネルギーが噴き出した。


(全員の殺気、パワー、そして周りにかかる圧力……。すべてが上がっていくのが、見ているだけでわかった。全員、今までは力を抑えていたんだっていうのが、痛いほど伝わってくる……!)


 キィィィィィィィン!!


 八人の背後に浮かび上がる、それぞれの支部の巨大な紋章。それは郷土の誇りであり、人類がワットに抗うための唯一の牙。


 石丸のハンマーは黄金の巨岩へと膨れ上がり、皇の盾は都庁をも覆わんとする巨大な障壁へと変貌する。透斗の雷が、麗の氷が、迅の嵐が、麻奈の光が、そして蓮の闇が。


 バラバラだった八つの個性が、いま、渚という『適性S』の太陽を中心に、一つの星座へと結ばれていく。


 それは、もはや「戦い」なんて呼べるものではなかった。


 実羽が放つ弾丸が空間を固定し、カマカミの動きを強制的に停止させる。


 そこへ、石丸の大槌が重力波ごと敵の装甲を粉砕し、透斗と麻奈が阿吽の呼吸で死角を抉る。迅の円盤が退路を断ち、麗の吹雪が再生を阻害し、皇の盾がカマカミの反撃をすべて無効化する。

 

 圧倒的。無慈悲なまでの「人類の逆襲」。

 

 カマカミが初めて、その真紅の瞳に驚愕と恐怖の色を浮かべた。


「な、なんだこの光は……! 壊れかけの羽虫どもが、どうしてこれほどの出力を……! ギアの限界値を、精神力だけで超えているというのか!?」


「渚、あんたが最後に撃ち抜きなさい。……『溶け込む』のよ、この力すべてに!」


 実羽の鋭い声。

 八人のエネルギーが、中心にいる私へと集束していく。


 憧れの先輩たち、そして何よりも大切な仲間たち。

 私が横浜支部で出会った、最高にかっこいい人たちの熱が、私の『ホワイト・アウト』を純白の極光へと変えていく。


(さっきの必殺技が通らなくても、みんなが私を必要としてくれている。私を必要としてくれる限り、私はもっともっと強くなれる気がする!)


 残り一秒。

 私は、八人が繋いでくれた一瞬の「道」を、光の速さで駆け抜けた。

 

「今度こそ、倒してみせるよ!!」


 私の叫びと共に、『ホワイト・アウト』が臨界点を超えた。


 放たれたのは、ただのエネルギーではない。八人の想い、八人の命、そのすべてを乗せた、一撃必殺の光。


「――ホワイト・アクト、グランドバースト!!」


 ドォォォォォォォォォォォォォォォォン!!


 純白の閃光が新宿全体を真昼のように照らし出し、死神カマカミの影を完全に飲み込んだ。


 リターン・ギアを自ら壊した彼に、逃げ場はない。

 白銀の光が彼の核を貫き、内側からその存在を、因果ごと霧散させていく。


 やがて訪れた、圧倒的な静寂。

 光が収まった都庁前広場に立っていたのは、ボロボロになりながらも、肩を寄せ合う私たちだけだった。

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