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ストロント・ギア ―適性Sの戦痕―  作者: コロッケパン
第二章 新宿侵攻編
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混沌

 新宿駅東口から一歩足を踏み出すと、そこは文字通りの戦場だった。


 かつての賑わいは完全に消え失せ、あちこちのビルから黒煙が立ち上っている。耳を塞ぎたくなるような爆発音が、高層ビル群に反響して絶え間なく街を震わせていた。


「――散るわよ! 自分の身は自分で守りなさい!」


 実羽が鋭い指示と共にビル壁を蹴って屋上へ駆け上がり、透斗と麻奈もそれぞれの獲物を手に、ワットの群れへと突っ込んでいった。私は、複雑に入り組んだ新宿の路地裏で、三体の「意思を持つワット」に囲まれていた。


「やばい、どうしよう、どこから倒しに行けば......」


 四方八方から上がる悲鳴。どこを見ても敵と爆発。優先順位すらつけられない混沌の中で、私の心拍数が跳ね上がる。


 三体の敵は、私の焦りを嘲笑うかのように、静かに黒い刃を構えて距離を詰めてきた。背後から迫る一撃。死角を突かれた、と思ったその時だった。


 ドォォォォォォォォン!!


 頭上の雑居ビルの窓ガラスを粉砕して、銀色の閃光が降り注いだ。


「へっ、モタモタしてんじゃねえよ。横浜の適性S(笑)さんよ!」


 着地と同時に爆風を巻き起こしたのは、大宮支部のじんだった。


 彼が担いでいた巨大な手裏剣型ギア――『サークル・デス』が、恐ろしい速度で回転しながら、私を囲んでいたワットたちを一瞬で切り裂いていく。


(すごい、この人は、マジでやばい。この縦横無尽に動き続ける戦い方は自分でやろうとするとほんとに難しそう……!)


 迅の動きには一瞬の停滞もない。手裏剣を投じ、その回転を利用して自身も空を舞い、跳ね返ったギアを空中でキャッチして次の標的へ叩きつける。


 重力を無視したかのようなその軌道は、まさに戦場を蹂躙する荒嵐だ。

 

 迅のギアが磁石に引き寄せられるように彼の手元へ戻る。彼は血の気の多い笑みを浮かべ、さらに奥の、敵が密集する歌舞伎町方面へと地を蹴った。


「これくらいの数でビビってんじゃねえ。……新宿の空を見てみろよ。本当の絶望はこれからだぜ」


 彼が指さした先――都庁のさらに上空。

 そこには、これまで見てきたどの亀裂よりも巨大な、空を真っ二つに割るほどの「門」が開きかけていた。そこから漏れ出す圧迫感は、先ほどの特級さえも雑魚に思えるほど、絶望的な密度を持っていた。


「……あんなの、どうやって倒せばいいの? でも、ここで私が止まったら、新宿が、世界が終わっちゃう!」


 私は震える手で『ホワイト・アウト』を強く握り直した。迅に背中を向け、私は目の前の新たな群れに向かって、一歩を踏み出す。


「……負けない。私は絶対に、あそこまで辿り着いてみせる!」

 私は白銀の閃光を纏い、地獄と化した新宿の奥底へと走り出した。


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