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ストロント・ギア ―適性Sの戦痕―  作者: コロッケパン
第二章 新宿侵攻編
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地獄の摩天楼

 横浜・綱島から新宿へ向かう高速道路。窓の外を流れる都心の景色は、近づくほどに凄惨さを増していた。かつての賑わいは消え、立ち並ぶビルは黒い霧に侵食され、空を埋め尽くす「亀裂」が街に不気味な影を落としている。


 新宿駅東口に設置された「連合軍前線基地」。車を降りた瞬間、私はその光景に言葉を失った。


(すごい……これが各支部のエリートたちが放つ殺気なんだ。横浜とは比べ物にならないくらい、空気がヒリヒリしてる……)


 そこには、関東近郊の全7都県の支部から集められた、数百人もの隊員たちがひしめき合っていた。

 

 重厚な装甲を纏ったスーパー隊員、そして独特の威圧感を放つハイパー隊員たち。まるでこれから一国を滅ぼしに行く軍隊のような、あまりに物々しい熱気が私の肌を焼く。


「――おい、横浜のノロマども。ようやく着いたか」


 不意に、上から見下ろすような声がした。振り返ると、そこには大宮支部のエンブレムが刻まれたジャケットを肩にかけ、巨大な手裏剣型のギアを担いだ少年が立っていた。


 大宮支部のハイパー隊員、じん。彼は私の腰にある『ホワイト・アウト』を一瞥すると、鼻で笑った。


「そのガキが、例の『適性S』か。さっき横浜で敵に『リターン・ギア』を使わせ損ねたって? 情けねえなあ。俺たち大宮支部なら、逃がさず完封してたぜ」


 迅の言葉に、胸の奥が熱くなった。横浜で逃げた五体の特級。あの『リターン・ギア』の輝き――私たちと同じシステムを使う敵。その不気味な違和感が、彼のような傲慢な態度で上書きされるのが許せなかった。


「おままごとじゃない! 私は横浜を守るために、蓮さんとの地獄みたいな特訓を耐えてきたんだ。……あんたに私の何がわかるのよ!」


 私の反論を、迅は嘲笑うように受け流した。

(この人……強い。蓮さんと比べたら多分蓮さんの方が強いけど、麻奈と比べたらこの人の方が強い……!)


 

 本能が警鐘を鳴らす。迅の放つオーラは、実羽のように研ぎ澄まされた冷たい殺意に満ちていた。


「ハッ。口だけは一人前か。新宿の中心部は、俺たち大宮支部が片付ける。死にたくなきゃ、そこで指くわえて見てな。……行くぞ、野郎ども!」


 迅が地を蹴り、その背中の巨大な手裏剣が重低音を響かせて回転を始める。彼は一瞬でビル風の中に消え、大宮の隊員たちがそれに続いた。


 私は、自分自身の震える拳を見つめた。


 敵も人間で、ギアを使っている。もしそうなら、私たちは一体何と戦っているのか。


 空を見上げると、巨大な亀裂の奥に、規則正しく並んだ「街」のような影が見えた気がした。あそこに、私たちと同じ「誰か」がいる。


「……ううん、今は考えちゃダメ。私は、新宿を、みんなを守らなきゃ」

 私は『ホワイト・アウト』を強く握り直した。

 敵が何者だろうと、この戦火の先にしか答えはない。


「勝って、私はもっともっと強くなりたい。」


 私は白銀の閃光を纏い、新宿の摩天楼へと駆け出した。


 『新宿侵攻編』。その本当の地獄が、今幕を開ける。


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