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 白銀のギア『ホワイト・アウト』が、私の体温と同期するように脈打っている。これまでのノーマル・ギアとは違う。まるで私の意志が、そのまま切っ先まで伸びているような感覚だった。


「……行くぞ、山上。瞬きする暇もねえぞ!」


 蓮が地を蹴った。漆黒の衝撃が、一瞬で私の懐に潜り込む。かつての私なら、反応することすらできずにリターン・ギアを打たされていただろう。


 けれど、実羽のアドバイスで「自分のエネルギーに溶け込んだ」今の私の目には、彼の動きが鮮やかな「線」となって見えていた。


 キィィィィィィィン!!


 鋭い金属音が訓練場に響く。私は、ホワイト・アウトの刀身で、蓮の超高速の一撃を正面から完璧に受け止めていた。


「よし、私は確実に強くなれてる。これなら、行ける!」


 自分の成長を肌で感じた瞬間、視界がさらにクリアになった。

 だが、蓮の瞳に宿る色が、一段と深い黒に変わる。


「……ほう、受けたか。だが、一発受けたくらいでいい気になるなよ!」


 蓮の連撃が始まる。黒い残像が私を包み込み、四方八方から火花が散る。私はホワイト・アウトの出力を極限まで一点に絞り込み、30秒という限界時間の中で、すべての想いを乗せたカウンターを狙う。


(いまから『ホワイト・アウト』が描く線に力を凝結させて……放つ!)


 心の中に描いたのは、迷いのない一筋の白銀。黄金の歯車が叫ぶように回転し、凝縮されたエネルギーがホワイト・アウトの刀身を眩しく焼き上げる。


「ハァァァァァッ!!」


 純白の閃光が訓練場を白一色に染め上げた。蓮の防御をすり抜け、彼の漆黒のスーツの一部を鮮やかに焼き切るほどの一撃。


「……っ!?」


 蓮が初めて、驚愕に目を見開いた。

 だが、そこまでだった。


 私の限界時間がゼロになる瞬間、蓮の全身から、これまでとは桁違いの「黒い圧力」が噴き出した。


「……いい一撃だ。だが、甘い」


 彼がほんの少しだけ「本気」を出した瞬間、世界が反転した。

 速すぎる。反応する間もなく、私の視界から蓮の姿が消え、次の瞬間には背後から衝撃が突き抜けていた。


 ドォォォォン!!


 凄まじい衝撃と共に私は床に叩きつけられ、ホワイト・アウトの輝きが消える。完敗。圧倒的な、壁のような実力差だった。


 荒い息を吐きながら床に伏せる私の前に、蓮が歩み寄ってくる。彼は自分のギアを収めると、ぶっきらぼうに手を差し伸べてきた。


「……立てよ。いつまで寝てんだ」


 その言葉には、もう私を「自爆ボタン」と蔑むような響きはなかった。私はその手を借りて、ふらつく足で立ち上がった。


「ありがとうございました。あなたのおかげで私は強くなれた気がします。私はいつかあなたを超えてみせます」


 私の真っ直ぐな宣言に、蓮は一瞬呆れたように鼻を鳴らしたが、すぐに不敵な笑みを浮かべた。


「……ハッ。お前に抜かれるほど、俺は甘くねえぞ、適性S」


 蓮は私の頭を無造作に乱暴に撫でると、そのまま訓練場を後にした。


 私の腕はまだ痺れていて、心臓はバクバクと鳴り止まない。けれど、私の前には確かな「道」が見えていた。


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