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火花散る病室

こちらのミスで本来の14話を飛ばしてしまいました。

本当にごめんなさい。

未読の方はぜひ読んでいただけると嬉しいです。

この度は本当に申し訳ございません。

「――そこまでにしろよ、蓮」


 病室の重苦しい空気を切り裂くように、低い声が響く。


 振り返ると、ドアの枠に手をかけ、肩で激しく息を切らしている透斗とうとが立っていた。制服は乱れ、額には汗が滲んでいる。緊急警報の直後だというのに、彼は真っ先に私の元へ駆けつけてきてくれたのだ。


 けれど、今の彼の瞳には、親友としての優しさではなく、見たこともないような鋭い怒りの炎が宿っていた。


「なんだ、透斗か。相変わらずお人好しだな、お前も」


 れんは挑発するように肩をすくめ、透斗の方へゆっくりと向き直った。ハイパー隊員同士の視線が空中でぶつかり、それだけで病室の窓ガラスが微かに震えるような錯覚を覚える。すごい迫力だった。


「渚は昨日、自分の限界を超えて戦ったんだ。……何もしていないお前に『みっともない』なんて言われる筋合いはない!」


「限界? 笑わせるな。こいつがやったのはただの自爆だ。あんな無計画なパワーの垂れ流しを戦いなんて呼んでるから、いつまで経っても三流のままなんだよ」


 蓮の冷淡な言葉に、透斗は一歩、強く床を踏み込む。


「……言い過ぎだ。渚は、俺たちを守るために――」


「守るために死なれたんじゃ、こっちは寝覚めが悪いんだよ。いいか透斗、俺たちのギアは『守るための盾』じゃねえ。敵を完膚なきまでに叩き潰すための『牙』だ。……情けに流されてる間に、隣のガキが死ぬぜ?」


 蓮の言葉は、冷酷なまでに合理的だった。ストロントの頂点に立つハイパー隊員として、数多の地獄を潜り抜けてきた者だけが持つ、歪な説得力。


「俺たちは道具じゃない! 仲間を傷つけてまで手に入れる強さに何の意味があるんだ!」


 透斗の叫びが、狭い病室に木霊する。仲間を思う彼の信念が、蓮の冷徹な正論を真っ向から否定した。しかし、蓮はそれを鼻で笑い、さらに追い打ちをかけるような冷たい言葉を投げ捨てる。


「仲間、ね。その甘ったれた考えが、いつか取り返しのつかない犠牲を生むんだよ。お前のその『優しさ』が、この適性Sを殺すことになるって、まだ分かんねえのか?」


 二人の間に流れる緊張感は、いつ火花を散らしてもおかしくないほどにどんどん高まっていく。麻奈まなが慌てて二人の間に割って入り、止めようとしたその時。


「……もう、やめて」


 私は、震える声でそう絞り出した。


 二人が私のために争うのは、嬉しいなんて思えなくて、ただ、自分の不甲斐なさが、大好きな親友と、この強い先輩との間に不和を生んでいることが、何よりもほんとうに苦しかった。


「蓮さん……。私が、未熟なのは本当です。でも……」


 私は包帯で巻かれた右手を、ぎゅっと握りしめた。熱に焼かれた皮膚が引き連れて痛む。けれど、その痛みさえ、今は自分の心を奮い立たせるための熱源に変えていた。


「今はまだ自爆ボタンかもしれません。でも、次は絶対に、あなたにそんなこと言わせません!」


 蓮を真っ直ぐに見据えて放った、剥き出しの決意。

 蓮は一瞬だけ驚いたように目を見開いたが、すぐにまた不敵な笑みを浮かべていた。


「……ハッ。口だけは一人前か。……いいぜ。そこまで言うなら、お前が本当にストロントの『牙』になれるかどうか、俺が直接確かめてやる」


 蓮はそう言い残すと、翻って病室を出ていった。


 残された私たちは、ただ沈黙の中に立ち尽くしていた。けれど、私の胸の奥にある黄金の歯車は、先ほどまでとは違う、確かな志を刻んで回り始めていた。


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