射的
麻奈と雛が帰ってきたのは、廊下の方に出ていった30分後くらいだった。そんなに話すことある?と思ってしまう。
麻奈は自分のお話を理解してもらえて嬉しいのか、とても機嫌が良さそうだ。なんで怒っててお話したらご機嫌になるのか、私にはよく分からない。対して雛は真っ青で元気がなさそうだ。
(あとでケアしてあげないと......)
ついつい、そう思ってしまった。
でも、麻奈は気づいていないのか、お構いなしに話をすすめ始める。
「もう、ほんと名案が全然出ない......。実羽、なんか良い案ない? 」
「そうねー、ギアの銃を使った射的はどう? 射的用の威力が低い銃に、凛あたりに調整してもらえば良いし、銃は2丁くらいで全然足りるから良いんじゃない? 」
次の瞬間、みんなは歓喜に包まれた。多分、雛が言ったとんでもない案の後というのの効果もあるだろう。
「良い、良いよ! そういうのを求めてたんだよ! 」
麻奈はやっと良い案が出て興奮しているのか、いつもと少し言葉が違う。でも気にしないことにした。
「みんな、この案で良いかな? 」
「「「「もちろん! 」」」」
こうして、やっと『関東ストロント祭』での出し物が決まったのだ。
(いやー、長かった。でも、私の案の中から採用して欲しかったなー。20個くらい出したのに......)
もしかして贔屓?と考えると私はブンブンと頭を振った。
◇
「じゃあ射的に決定したけど、何から始める? 」
確かに、何をすれば良いんだ?
「まず机と椅子が必要だろ、あとは調整されたギアの銃、景品、あとは装飾ぐらいかな? 1グループ何円支給されるんだっけ? 」
「3万円だよ。だからまあ、装飾とかを先に買って余ったお金で景品を買えるだけ買えばいいんじゃない? 」
ふむ、3万円か......。
「ねえねえ麻奈、3万円以上かけるのは無理なの?」
「それはね、できるけど、最大でプラス2万円。
実質かけられる金は5万円だよ」
5万円! 結構かけられるじゃん! よし! 絶対投票で1位とってやるぞー!
「そうだ、渚! 明日にでも凛さんにさ、ギアの調整頼んできてよ」
(クソー、麻奈め、こういう面倒なのことをすぐに他人に任せるのは初めて会った時から変わってない!
そこ、お願いだから直してー! )
気がつくと透斗と実羽さんから同情の目を向けられていた。私には味方がいると実感して、作業を再開した。いつか、麻奈に抗えるようになってみせる!
◇
翌日、私は学校の図書室にいた如月先輩のもとに向かった。
如月先輩は図書室で、何をしているのかよく分からないが、パソコンで作業していた。
「こんにちは、如月先輩。この銃の威力を射的で物に当てても壊れないくらい下げることってできない? 」
「できるとは思う。でも一応ギアの弾を通さないプラスチックの袋にした方が良いと思うわ。私が注文しておく? 」
少し冷たいがなんだかんだ如月先輩は優しい。
それにしても、そんなプラスチックがあるなんてしらなかった。ほんと、今の時代はなんでもあって便利なんだなあ。
「じゃあ頑張って威力調整しておくわ。それはそうと渚」
如月先輩に呼ばれ立ち止まる。
「大事な話があるの」
今回も平和に終わることはできないかもしれない、と思った。




