番外編その4:筆頭騎士と防衛チーフの午前三時
ギルバートとタクトの深夜のお仕事です。
三章読了後に読むと面白いです。
BLじゃないです!!(重要)
生徒会室の業務を終え、アイラが「ふぁ〜あ、今日もお疲れ様!」と無邪気に帰宅して熟睡している深夜。
「約束通りの時間ですね」
「ああ、そちらもな」
学園の時計塔の屋上に、黒のマントを羽織ったギルバートと、制服の上着を脱いだ軽装のタクトが合流する。
今回はノアから暗号通信で回ってきた極秘データに関する任務で、特別に2人で協力して挑むこととなった。
極秘データの内容はこうだ。
「拘束された元当主の息がかかった過激派の私兵集団が、アイラの暗殺および学園襲撃を計画。今夜、帝都郊外の廃教会アジトに集結中」
「愚父の残りカスどもが、アイラの眠りを妨げようとするなど……万死に値する」
ギルバートときたら普段の冷徹さはどこへやら、抜刀しかけて殺意全開だ。
タクトは慌ててギルバートの抜刀を止める。
「ギルバート殿、殺気漏れすぎです。会長が起きちゃうんで抑えてください。……日の出までに、痕跡ごと片付けますよ」
目的は一つ。「アイラが起きる前に、ネズミを一匹残らず殲滅すること」
郊外の深い霧に包まれた廃教会。
重武装した残党兵たちが、魔導兵器を囲んで不穏な企みを話している。
タクトは指を鳴らし、教会の警報結界を無音で無力化する。
敵の見張りには「誰も通っていない」幻覚を見せる。
「今です、ギルバート殿、行ってください。」
と堂々と正面からギルバートを中央広間へ送り届ける。
敵のリーダーが「何者だ!?」と叫ぶ間もなく、ギルバートの白銀魔導剣が一閃。
教会の祭壇ごと敵の大型魔導兵器を両断する。
「出てこい、ネズミ共。一匹残らず排除してやる」
逆上した残党たちが四方から一斉に魔法弾や銃撃を浴びせる。
しかしギルバートは一切避けない。
ギルバートの背後にタクトが滑り込み、鉄壁の障壁打撃で全弾を弾き返し、衝撃波で敵の前衛を吹き飛ばす。
「……良き盾だ」
「そっちこそ、派手に暴れすぎないでくださいよ!」
ギルバートは白銀魔導剣を構え、敵の懐へと一直線に突っ込んで行き、広範囲に白銀の斬撃波を浴びせる。
タクトはカウンターを的確に受け流し、ギルバートに指一本触れさせない位置取りをする。
かつて殺し合いをしたからこそ、互いの間合いを完璧に把握している異次元のチームワーク。
残党兵たちを倒し切ったかと思うと、残党のリーダーが禁忌の狂化薬を飲み、巨大な異形と化す。
「クックック……アイラを殺して旧当主様を復権させるのだ!」
と、叫ぶ異形の化け物。
「……気でも狂ったか」
「ぶっちゃけるとこの展開、俺慣れてるんで」
「……貴殿らのここまでの歩みを俺は侮っていたようだな」
と、2人は余裕の会話を交わしている。
ギルバートは異形の化け物に向き合い、氷点下の冷徹な声で告げる。
「我が妹は、貴様らのような亡霊が口にしていい名ではない」
化け物は逆上して巨大な腕を振り上げ2人に襲い掛かろうとする。
しかしタクトが幻覚で敵の視界を狂わせる。
完全にターゲットを見失った異形の化け物。
さらにタクトは障壁を作り、逃げ場を完全にロックした。
「――穿て、白銀」
ギルバートの最大出力の魔導剣が教会の天井を突き破るほどの光の柱となり、怪異化したリーダーを一刀両断・消滅させる。
戦闘終了。タクトは残党の身柄を魔法省の拘束部隊へ引き渡す手配を済ませ、ギルバートは剣を鞘に納める。
「ギルバート殿、こちらの手配は完了です」
「ああ、いい動きだった」
「へへ、ありがとうございます」
午前五時半。空が白み始めた帝都の路地裏。
激戦の埃を払った二人が、早朝から開いている屋台の前に並んでいる。
「……なんだこれは。生地が薄く、異常に甘いな」
「生徒会御用達の店のクレープです。会長がよく『疲れた時は糖分!』って買い食いしてるやつですよ」
「……悪くない。アイラが好きそうな味だ」
「……ふふっ」
クレープを食べていたタクトが、不意に笑う。
「なんだ、何かおかしなことでもあったか」
「いや、ギルバート殿は最初こそ怖い人だと思ってましたけど、案外妹想いのいい人なんだなって」
それを聞いたギルバートは一瞬目を見開くが、すぐにいつもの冷静な眼差しに戻る。
「……兄が妹を思うなど、ごく一般的なことであろう」
「ええ、そうですね。帝国筆頭公爵家のご兄妹も、ごく普通のご兄妹なんですね」
扉が開き、アイラが元気に飛び込んでくる。
「みんなおはよー! 今日も一日頑張るぞー!」
生徒会室のソファには、優雅にお茶を飲むギルバートと、平然と書類整理をしているタクト。
「あれ? 兄様、朝から来てるの? タクトも早起きだね!」
平然と返すギルバート。
「ああ。新当主の顔を見にな。……昨夜はよく眠れたか、アイラ」
タクトも何事もなかったかのように挨拶する。
「おはようございます、会長。今日も平和ですよ」
アイラは何も知らず「うん! ぐっすり寝た!」と満面の笑顔。
ギルバートとタクトが一瞬だけ視線を交わし、誰にも見えない位置で小さく拳を合わせた。
ギルバートにメロついてないで真面目なスピンオフを書けとケツを叩いた結果こうなりました。
いやギルバートってメロくない?(まだ言う?)
でもタクトと組ませるの面白くないか……?と思い今回のシナリオに至りました。
アイラが背中を預ける相手だもん、お兄ちゃんも預けたっていいじゃん。
タクトは末っ子ですが大変たくましくシナリオ内で育っております。




