第十二話 悪役令嬢、決勝に立つ
『悪役令嬢の私が聖女に好かれてどうする!?』
第十二話 悪役令嬢、決勝に立つ
「決勝戦、ヴァルフェルト・ルミナスペア、対戦相手はクロンヴェルト公国代表、イザベラ・クロンヴェルト、及びその相棒、ヴィクター・ハーゲン組!」
実況の声に、闘技場全体が沸き立った。
登場したイザベラは、優雅に一礼した後、扇を広げて微笑んだ。
「あら、無事に決勝まで勝ち上がっていらっしゃるのね。素晴らしいわ」
「あなたも、随分な実力者みたいね」
「ふふ、留学生を舐めてもらっては困るわ」
隣に立つ相棒のヴィクターは、寡黙な様子で軽く一礼するのみだった。
「イザベラ様、油断は禁物ですよ」
「わかっているわ、ヴィクター」
二人は、隙のない構えを取った。
* * *
「では、開始!」
合図と同時に、両陣営の魔力が同時に膨れ上がった。
「行くわよ、セレスティア!」
「はい!」
二人の連携魔法が、鋭く放たれる。しかしイザベラとヴィクターは、それを見事な連携で受け流した。
「なかなかやるじゃない」
「そちらこそ」
試合は、互角の攻防を続けた。イザベラの魔法は華麗でありながら、随所に緻密な計算が見え隠れしていた。
「イザベラ様、彼女たちの連携、思っていた以上ですね」
「ええ。想像以上に、息が合っている」
イザベラは、扇の陰で目を細めた。
(本当に、面白い二人ね)
* * *
中盤、リリアーナが放った一撃を、イザベラが正面から受け止めた。
「くっ……!」
「まだまだ、これくらいで終わらせないわよ」
イザベラの反撃が、リリアーナに迫る。
「リリアーナ様!」
セレスティアが割って入り、防御魔法を展開した。しかし威力が予想以上で、二人は同時に体勢を崩した。
「――っ!」
このままでは、隙を突かれる。
(まずいわ……このままだと)
その瞬間、リリアーナは咄嗟に前へ出て、セレスティアを庇うように立ちはだかった。
「リリアーナ様!?」
「大丈夫、これくらい――」
防御魔法を張り、次のヴィクターの追撃を真正面から受け止める。
「なっ、この威力を、正面から……!」
ヴィクターが、初めて驚愕の表情を見せた。
「言ったでしょう。私の魔力操作は、この学年で並ぶ者はいないって」
リリアーナは、不敵に笑った。
(セレスティアを傷つけさせるわけには、いかないもの)
* * *
「セレスティア、今よ!」
「はい!」
リリアーナが防御を張っている隙に、セレスティアが最大出力の連携魔法を構築する。
「――『共鳴』!」
二人の魔力が完全に同調し、光の奔流が闘技場を包んだ。
「これは……!」
イザベラとヴィクターは、その威力を防ぎきれず、揃って地面に膝をついた。
「そこまで! 勝者、ヴァルフェルト・ルミナスペア!」
実況の声とともに、闘技場が割れんばかりの歓声に包まれた。
* * *
試合後、控室の外でイザベラが待っていた。
「見事だったわ」
「あなたたちも、強かったわ」
「褒め言葉として受け取っておくわ」
イザベラは、扇を閉じながら、興味深そうに二人を見つめた。
「一つ、聞いてもいいかしら。あなたたち二人、本当に――」
「な、なによ」
「いいえ、なんでもないわ」
イザベラは、くすりと笑った。
「今はまだ、聞かないでおいてあげる。答えを聞くのは、もう少し、あなた自身がはっきり分かってからのほうが、面白そうだから」
「な、なんの話よ」
「さあ、なんでしょうね」
イザベラは、優雅に背を向けて去っていった。
「不思議な人ですね」
「まったくよ」
リリアーナは首を傾げながら、隣に立つセレスティアを見た。
「でも、勝てて良かったわ」
「はい。リリアーナ様が守ってくださったおかげです」
「な、別に、あなたのためだけじゃないわ。ただ、負けるのが嫌いなだけよ」
「はい、そういうことにしておきます」
* * *
表彰式、優勝トロフィーを掲げる二人の姿に、観客席は大きな歓声で応えた。
「殿下、感無量でいらっしゃいますか」
「レオン……言葉が、見つからない」
アルベルトは、涙ぐみながらトロフィーを掲げる二人を見つめていた。
「今日という日を、生涯忘れないだろう」
「殿下、来週も同じことを仰る予感がします」
「その通りかもしれない」
闘技場に響く歓声の中、リリアーナとセレスティアは、並んでトロフィーを掲げていた。
その笑顔は、誰の目にも、とても自然なものに見えた。
<続きます>
次回予告:大会の熱気も冷めやらぬ中、学園には冬の訪れとともに、クリスマスならぬ「聖夜祭」の準備が始まる。二人の距離は、さらに縮まっていく――?




