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滅びた未来で、TSメカ少女は戦場に咲く  作者: 矢代大介


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第35話 C型ファイント討伐作戦-1



 乗り込んだ輸送機が、窓の向こうに廃墟の群れを映し出す。


 体をよじり、外の景色をもう少し遠くまで見ようとした俺の視界に、遠くでうごめく大きな影が映りこんだ。


「……やっぱり、来てるんだな」


 C型ファイント。苦い敗北を俺に刻み付け、あまつさえスイに深手を負わせた因縁の相手が、今度は俺たちの住むコロニーを見据え、まっすぐに歩みを進め続けている。その進行ルートは、マザーたちがあらかじめ計算した経路と寸分たがわない。


 このまま奴に侵攻を許せば、その先にあるのはコロニーだ。

 コロニーそのものにもある程度の自営能力はあるそうだが、戦力比重としてはやはり鎧装機兵の方が絶対的に重い。それはすなわち、ここで俺たちが奴の討伐に失敗すれば、コロニーが――そこに住む人々が存亡の危機にさらされるということだ。


「――やってやる。絶対に」


 巨影を揺らすC型ファイントを睨みながら、自分を奮い立たせるように、そう呟く。


 それからほどなくして、輸送機がそのハッチを解放。指定された作戦ポイントへ、俺を投下した。



 *



《ゼムリアより、展開中の全鎧装機兵へ。今回の作戦における総指揮は、私が直接行います。これは、現有戦力の全力投入と、万一の事態に備えた特例措置となります。ご理解ください》


 指定のポイント――ひときわ幅が広く、まっすぐに続く幹線道路の跡地付近で待機していた俺の耳に、マザーの声が響く。


《――では、念のため再度、作戦概要を説明いたします。今回行うのは、大きくふたつに分けた部隊による、同時攻撃作戦です。C型ファイントが持つバリアの展開方向を砲撃班の火線へ集中させ、その隙に白兵班が懐へと強襲。一撃離脱を繰り返すことでダメージを累積させ、討伐まで持ち込むのが大まかな流れです》


 説明に耳を傾けていた最中、微かに伝わってきていた地響きが、ほんの少し強くなるのを感じとる。

 廃屋の陰から顔を覗かせてみれば、彼方まで続く幹線道路の向こうで、巨大な影が迫ってきているのが見えた。


《この作戦の成否は、強襲班と砲撃班、双方の働きにかかっています。砲撃による対象の意識誘導と、それによって生じた隙を確実に突く強襲。どちらかが疎かになれば、作戦は失敗しかねないということを、努々(ゆめゆめ)忘れないでください》


 そんな通達を傍らに聞きながら、俺は静かに戦闘準備を整える。

 拡張背嚢(バックモジュール)に懸架していたバスターソードの切っ先を抜き放ち、機動推進器(ブーストモジュール)を始動。音階を上げていくエンジン音が、俺の心へ闘志をみなぎらせていく。


 いつでも飛び出せるように支度を整え、待つことしばらく。


《目標の到達を確認、これより作戦を開始します! ――砲撃部隊第1から第5班、撃ち方始め!!》


 力強いマザーの号令と同時に、廃都市のあちらこちらから射撃音が鳴り響き始めた。


 数拍を置いて、彼方の影を吹き飛ばさんとする勢いで、無数の爆炎が花開く。

 

 不意打ち気味に放たれたおかげか、初弾の一撃はC型ファイントに有効打を与えたらしい。

 だが、バリアの指向が定まったのか、続く砲撃には動じるそぶりを見せなくなる。さらに、あの時俺を苦しめた火球が放たれ、砲撃部隊の布陣した場所を襲っている光景が、遠目から確認できた。


《バリアの発動と誘引を確認! 損害を受けた第3班以外の砲撃部隊は投射を継続、強襲班1から5番隊は随時行動を開始してください!》


 マザーの報告を聞く限り、あの反撃による損害は出ているようだが、作戦に支障はないらしい。

 

 そして同時に、俺たち強襲部隊へと号令がかかる。

 4番輸送機で投下された俺は、たった一機だが4番隊という扱いだ。いよいよ出番らしい。


「4番隊よりマザーへ、交戦に移ります!」

《個別回線より、了解しました。――チヒロ、あなたの働きに期待しています!》

「はい!」


 無線越しに届く、 マザーの激励を受け取りながら、機動推進器を点火。

 身を潜めていた廃屋を飛び出した俺は、路面すれすれを這うような格好で、一直線にC型ファイントめがけて突っ込んでいった。


 正面に捉えた巨大な影が迫る最中、周囲で炸裂する砲火を切り裂くように、無数の弾幕が無指向的に放たれ始める。


《強襲班各機へ、敵の機銃掃射が始まりました! 接近の際は警戒してください!》


 そんなマザーからの通信を聞き終えるよりも早く、流れ弾と思しき弾幕のうちの一発が、すぐ傍を掠めていった。


《ひぇぇ〜!?》

《ちょ、無理無理無理!》

《くっ……弾幕が厚くて近づけませんわ!》


 同時に、距離が近づいたことで回線が繋がったのか、無線の向こうからは他の強襲部隊の声も聞こえてくる。

 一発あたりの火力は火球攻撃と比べるまでもないが、数が数な上、当たればダメージとなることは変わらない。

 損傷で離脱する機体こそ出ていないものの、みな一様に攻めあぐねているようだった。


「だったら――!」


 決意と共に、俺はさらに増速。回避機動をあえて取らず、まっすぐにC型ファイントめがけて突き進む。

 当然、待っているのは降り注ぐ弾雨。故に俺は、手にした大剣(バスターソード)の腹を眼前に掲げ、即席の盾とすることで、弾幕を凌ぐ作戦に出た。


「ぐっ……!」


 柄越しに伝わる弾丸の衝撃で、思わず顔を顰める。

 だが、飛来する弾幕で俺自身が傷つくことはなかった。掲げた大剣はその設計通り、盾としての役割を充分に果たしたのだ。


 衝撃が止んだところで大剣を下ろせば、そこには視界いっぱいに広がるC型ファイントの巨躯。

 向こうも懐へ入り込まれたのを察知したのか、砲撃をバリアで受け止めながらもこちらへ向き直ろうとしていたが――


「――まずは、一撃ッ!!」


 雄叫びを上げ、機動推進器を全開で吹かす。

 同時に、掲げた大剣の切っ先を、C型ファイントの巨体の一点――体表から突き出し、弾丸をばら撒いている機銃めがけて叩き込んだ。


 金属のひしゃげる甲高い音と、電装系が破断するスパーク音が鳴り響くと共に、C型ファイントの姿が猛スピードで視界の端へ消えていく。


 与えた損害の程度を間近で確認したかったが、背後から迫る機銃の弾幕はそれを許してくれないらしい。

 手はず通り、廃屋の隙間を縫うように飛行しながらその場を離脱。身の安全を優先し、安全圏までの一時後退を選択した。


《C型ファイント本体へのダメージを確認しました! 各機、敵の機銃掃射は鎧装機兵用の防御兵装で対処可能です。防御可能な兵装を持つ機体を戦闘に肉薄しつつ、機銃の排除を優先してください!》


 俺の一撃が契機となったのか、攻めあぐねていた機兵たちが陣形を整え直し、C型ファイントへの攻勢に移っていく。


 一呼吸を置いてから、こちらも負けじと再突撃。

 なおも止まない弾雨を大剣の腹でいなしながら、C型ファイントの懐めがけて肉薄。すれ違いざまに大剣を振るい、有機部品と共に機銃を抉り割いて、その勢いのまま安全圏まで全速で離脱する。


 そんなやりとりを繰り返していれば、流石のC型ファイントも痺れを切らしたらしい。


 何度目かの強襲をかけようとしたその時――不意にほど近くで、重い爆発音が響く。


「っ、なんだ?!」


 廃屋の影へ切り返し、周囲の様子を注視してみれば、少し離れた場所で、黒煙を伴う巨大な火柱がごうごうと燃え盛っているのが見えた。


「あれは――ブレスがこっちに向いたのか」


 どうやらC型ファイントは、降り注ぐ砲火の原因を排除するよりも、俺たち強襲班の迎撃を優先し、火球攻撃の照準をこちらへ向け始めたらしい。

 このまま俺たちの攻勢を許せば脅威になるということを、奴も理解しているのだろう。流石の知能だが、喰らう側としては褒めたくもない行動の変化だった。


《強襲班2番隊はただちに後退! 6番、7番隊も攻撃を許可します! 9番隊は2番隊の撤退を支援してください!》


 無線越しに伝わる損害状況と戦局を頭に入れながら、俺は再びC型ファイントめがけて突撃する。

 

 火球攻撃は確かに脅威だが、機銃ほど連射が効くわけでもない上、発射口は頭部の一箇所だけだ。

 加えて言えば、集中攻撃されていた前回とは違い、今回は複数機による波状攻撃の真っ最中。攻撃の余波と機銃には十分注意しなければならないが、それでも狙いは分散する。

 被害こそ出ているが、攻撃の特性を知っている身からすれば、その危険度は前回と比較にならないほど低いと言えた。


「あの時のお返しだ――たっぷり食らえ!!」


 吐き捨てると共に、振るった切っ先がまた一つ、C型ファイントの体表から機銃をえぐり取った。


 

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