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権限転生  作者: 純銀
セレンテルー王国
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昼食休憩と「第1の願い」と私

道中で新たに加わったメンバー、聖女ベアトリーチェは私にも優しく微笑みかける。私だって笑顔でお返しする。

決して悪い人ではないし、このパーティーに治癒真法(まほう)使いがいるとはこの上なく頼もしい。そして何と言っても聖女さまは素敵だ。

だけど問題なのは、その聖女さまという部分。

こういう異世界では、勇者様(魔王を斃して世界を救う)と聖女様(世界を癒して浄化する)って、めちゃくちゃお似合いなのよ。しかも人間同士の男女。

これがまあルネアンだったら「猫みたいで可愛い」ので、イケメンがそういう趣味だとしたら諦めが付く。

だけど世界を救う同士、人間同士であんな風に出逢われたら、出来上がっちゃわないほうが不思議なくらいじゃない?


「ここは近くに澄んだ小川があるにゃ。」

「お昼ご飯なら少しあります。ここで休憩しましょう。」

「ああ。」

「そうしましょうか。私はちょっと用事が……すぐ戻ります!」


少し歩いた先の岩陰で私は「スマホ」を発動する。ステータス・マネージャ・ホログラムの略だ。

私は女神様との責任配分9対1の調停協議の結果、この異世界で「困った事があれば9件、願いを叶えてもらえる」という約束を勝ち取っている。ではその叶える願いが決まった時に女神様にどうやって伝えればいいか。そのためのホットラインがこのスマホというわけ。

「はい、もしもし。ああ……今日は討伐初日だったね。もう退治した?」

「依頼の消化はまだこれからです。」

「それじゃどうしたの? 細かい倒し方とかは現地で情報収集してよね。」

「ひどいじゃないですか~聖女様は何も悪くないですよ、仲良くしたいです。でも私のイケメンって、勇者なんです。勇者、そして聖女。勇者が聖女と出逢ったんですけど。私なんてただの同期召喚冒険者になっちゃうじゃないですか~。」

「そこは冒険者たちが生きる世界だからな。いろいろと出逢ったり分かれたりなのは仕方あるまい。大丈夫じゃないかな。」

「じゃないかな、なんて言わないでください。」

「分かった。出雲の神様な、あいつに確認しておくから。」

「その方がご担当者様でしたよね。でもこんなじゃいつも不安になっちゃいます。」

「聖女さま《ヒーラー》には居て欲しいです。でも傷口は治してもらえても心が傷が広がっちゃうんじゃ嫌です。」

「どうすればいいのだ……。」

「あのですね、それでこのお電話をしたんです。9つの願いのうちの1つ目ですよ。この異世界の管理者権限を私に下さい。」

「管理者権げ……何を言っている? そこは人間の人生の場、つまりあなたは1ユーザー側だろう。」

「悪い事はしませんよ。」

このスマホにはいつも「管理者モード」ボタンがあるのに、そのボタンが無効なの。

「女性と男性の仲の良さが、友情なのか恋心なのか。そこだけこっそり確認したいんですよね。」

「だめだ。前代未聞だし、1ユーザーに管理者権限なんかを許可したらセキュリティ管理力が問われる。」

「あ~、ノルマの管理力がなってなかったお方が、いいんですか? それでしたら交通裁判所へ。最高裁まで戦いま……。」

「待て、待て。『確認したいだけ』、そう言ったな? 閲覧権限だけでいいんだな?」

「っええ。」

「そのスマホの管理者権限を『閲覧のみ可』にしておく。これが、あなたの願いの1つ目で、いいな?」

「はい。それならいいんです~。」

よし、やった。

これで私は、ライバルの「恋心の有無とその相手」情報にアクセスできる。


その指定方法は簡単だ。スマホを相手のステータス・ホログラムにこっそり触れさせるだけでIDが紐付けられる。

「ベアトリーチェさん、ね、お知り合いになれたんですもん。ステータス・ホログラムを見せっこしませんか?」

「はい、でも妾《わらわ》はあんまり鍛えられてませんから期待しちゃいけないですよ。」

「わあ……Bランク。」

あれ? あんまり私のイケメンとは吊り合ってないのかも。

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