初ギルドと獣人娘と私
昨日の買い物はやむなく一人だったけど、でもなんだか楽しかった。
日用品を買い、ちょっとしたお化粧品も買ったり、ビキニ形状ではないちゃんとした防具も見つける事ができた。
それに。デートは叶わなかったけど、お家に帰ればその下階にはイケメンがいるんだもの。
何か買って渡したりするのはまだ段階が早いかなと思ったけど、お揃いのアクセも買っちゃった。まあ私用になるかな。
お土産は渡さなくても、私がダルクルトの部屋の扉を叩く理由はある。
Tシャツの上に防具を身に着けて、明日の出発時刻合わせだ。この時代の時計はというと貴族や商人には懐中時計もあるようだけど、町の鐘で始まる人々の暮らしが規則的に回っている。ここのダイニングバーにある柱時計は毎朝鐘の音に合わせられて、5分や10分くらいの誤差で時刻を知る事ができる。
そうして朝の9時に出発すると決めた。私の防具も見てもらったりした。
「ビキニアーマーじゃないな……。」
それしか言わなかったけど、無口なイケメンと間近で話せた。素敵な一日だったな。
そう言えばダルクルトはステータス・ホログラムを開いて右下の隅を見ていたっけ。私も同じようにすると、なんだここに小さく時刻表示されてる。
そして今朝。待ち合わせた朝の9時というのは、ここの宿屋では朝食の2時間後だ。
時間に正確な男性って素敵よね。
そして食後の休憩時間はミーティングとなるわけ。
私たちがパーティーを組むかはまだ決まってない。お互いのステータス・ホログラムを比べ合ったところ、似たような初心者同士なのよね。近いレベル同士で組むのがいいと思うな。
「強いパーティーが私たちみたいな初心者を仲間に入れてくれると思いますか? だから最初は細々と行くほうが良いと思うんです。」
「ギルドに行けばビキニアーマーが大勢見られる。」
ああ、それで早く行きたがってるのか。というわけで決めごとはギルドでもできるのだからと予定よりも30分早く宿屋を出発した。
冒険者ギルド。建物は1階がかなり広い。
正面に受付カウンター、壁に依頼書の掲示板、依頼達成の報告をする窓口、奥に職員用の区画。ここまでなら仕事の発注と受注の取引集会所なのだけど。隅のほうには冒険者が座って相談するテーブルが幾つか並んでいて、商談ができるのは分かるけど、なぜか簡単な酒場になっている。
「冒険者登録をしたい。」
「お願いします~。これ、国王閣下からの承認証です。」
「あらお待ちしておりました。召喚された2人ですね、一昨日のうちに通知が来ております。本人確認、そしてこちらへの記入をお願いします。登録手数料は、召喚冒険者さまからは頂いておりません。」
王様、ありがとうございます。
「一般冒険者はFランクからですが、その召喚者バッジをお付けですから1つ上のEランク依頼も受注できますよ。」
王様、ありがとうございます。……でもランクを最初からいきなり上げるのも危険かな。
「じゃあこれを。」
「はい……ダルクルト様、こちらはEランク。グラディオ街道にオーク3体が討伐依頼ですがゴブリンも目撃されていて見つけ次第駆除ですね。パーティーは3~4名いたほうが安全かな……と。」
「大丈夫だ。」
「え~私たちで大丈夫ですかぁ。」
イケメンは決断力も早い。……ちゃんと考えていて早いんだよね?
この異世界に来て初めての討伐依頼を受け取って、私ミレフィアとダルクルトはギルドを出る。その時、後ろから声がした。
「にゃあ、あんたたち。」
振り返ると、あら、さっきテーブルのほうに見かけていた獣人の女子が立っている。そしてしゃがむ。可愛い。
頭の上の灰色の耳を頭の上で左右に動かしている。髪の毛は肩まで伸びて、人と同じ形のお鼻の先が茶色い。
体毛というよりはちょっと産毛がちな人肌で、人間の女子とそう変わらない。それでしゃがんで前足もとい両手を着いて、腰の後ろにはモフりたい尾が左右に跳ねているのだから。私はつい頭を撫でたくなってしまった。
もし革鎧の腰に短剣や手裏剣を吊ってなかったら、きっと顎下まで撫でていただろう。
「何?」
「今受けた依頼は、グラディオ街道かにゃ。」
「ああ。」
「私も一緒に行っていいか。獣人は依頼を受注できないんにゃけどパーティー戦力にはなれるぞ。」
「あ、小猫ちゃんっぽい、あのね、私たちは一昨日召喚されたばかりで、この世界にまだ……。」
「いいよ。助かる。」
「話が早いにゃ。」
即答が早いだけじゃないの?
「ルネアン。ルネアン・グラウだよ。このとおり獣人で、斥候と近接戦闘が得意なんだにゃ。」




