恋とイケメン冒険者と私
「それじゃえっと、宿屋探しをすればいいのかな。ギルドってとこで登録すればいいんですよね。案内してくださいネレリラお婆様。」
「儂はもう足腰が弱いんじゃ、若い案内係を付けてもらっておくれ。誰がいいかのう……。」
そうしていると、国王の侍従が私たちに声を掛けてくる。
「ネレリラ老賢者、ミレフィア魔剣士、もう少しこの場で待たれよ。」
「そうじゃった、今日はもう1人召喚しておるのじゃったな。」
「ふうん。私以外に、もう一人……どんな転生者だろう。」
さっきの召喚の間から現れたのは、剣を2本差した男性だ。
「盾を持っておらぬな。ほう、双剣戦士とはやや珍しいの。今日の召喚は剣使いが多いようじゃ。」
「いいなぁ、防具がちゃんと胸元とか急所を護っていて。あああいうのが良いんだけど。……えっ、男性!?」
「勇者召喚の儀、完了にございます!」
侍従が声を響かせる。すると、王の間にいる人たちがざわつく。
「おう、勇者じゃと……。久しいではないか、そうか。」
「あれ、ネレリラお婆様? 勇者って功績を評価されてからの称号じゃないんですか? 職業が[勇者]な人なの?」
「そんな疑問を持つ者は聞いた事が無いわい。よいかミレフィア、この世界には魔物討伐を生業とする冒険者がいるわな。その中には、魔王に立ち向かう事を誓う者がおる、それが勇者じゃ。」
「ああそうか。私みたいに単なる冒険者じゃなくて、大きな誓いを立てるとそれだけで勇者なのね。何だか素敵だわ……あれっ私、冒険者だっけ?」
「今自分で言い出したじゃないか、まだ受け入れてないのかえ。」
「その者、ダルクルトよ。間違いないようだな。そうか勇者が現れたか、期待しておるぞ。」
私の時と同じように。侍従から書簡とバッジ、貨幣の入った革包みが授けられていく。
そうかぁ私と同じかあ、なんだか嬉しい。
「今日この同じ日、セレンテルー王国に招かれた2人の冒険者よ。王の前でそなたらの手合わせを披露せよ。」
「ミレフィア、お主の出番じゃ。魔剣士と双剣戦士、見応えがありそうじゃわい。」
「今から? 体育の時間みたいですね。あ、はい、この木の剣で。模擬戦をすればいいんですね。」
「分かっとろうが本気で交えるでないぞミレフィア。寸先で木剣を止める、国王は主らの剣技を見たがっておるのじゃ。」
「ダルクルトだ。よろしく頼む。」
「ミレフィアです。お手柔らかによろしく。」
きゃあ、イヤだ私のほうをじっと見つめてる。いえいえイヤじゃないですもっと見つめていて欲しい。だけどその視線の間には、私の1本の剣先と、彼の2つの剣先が邪魔をしている。
「両者とも、……始め。」
彼の長剣だけが私の視線を漂わせる。だけどここは後ろに引いた短剣のほうが重要な事を見逃さない。
一歩引いてから私は身を屈めた反動で、彼への間合いを詰める。長剣は誘導なので避けるのではなくスレスレに流し、私の剣は彼の短剣と噛み合う。
次の振りに入った彼の長剣には、私の開いた右手が向けられて、それは魔術攻撃を意味している事が瞬時に伝わる。彼は身を翻してそれを避け、両剣の交差で防御に入ったところに、私は踊らせた剣を斬りかけて、3本の剣が1つになる。
今度は私が翻って後退したところに、2本の剣がそれぞれ斬りかかってくる。右、左、上、下。距離を取らなければ剣の本数の差で私が負けてしまう。ちょっと不利かな。
だけど誘導の短剣が間合いを失った時に、私の剣はそれを弾き飛ばす。彼の長剣は私に振り被り、私は左手を大きく開く。
両手持ちとなった彼の長剣は私の首筋の前で止まり、私の左手は彼の頭部に向けてしっかりと開かれていた。
「両者そこまで。」
「互角のようであるな。2人とも精進せよ。」
「はっ。」
「はい。」
「やりおるのう、ミレフィアよ。どうじゃ身体が勝手に動いてくれるもんじゃろ?」
「た、大正時代の剣術なら画面内で少し心得があるもので。でも自分で振りかざすのは初めてですよ~。」
私はネレリラお婆様とすっかり盛り上がる。
そして戦った相手はというと、そこには無口な男性冒険者が佇んでいる。無口って素敵。挨拶したくなって私は駆け寄る。
「お手合せありがとうございました。あの、もしよろしかったら、その。」
「ねえ君ってさ……ビキニアーマーを着ないの?」
なんなのよこの異世界は。私は恋愛ができるはずなのに、そんなにビキニアーマーが必須ですか。その恋愛に奥行きはあるのか奥行きは。
でもイケメンだし、きっと上手くいきそうな気がする。恋愛の障壁ってきっとそういう所だと思う。




