国王とグラビア雑誌と私
ウーブン生地だけど丸首で肩ボタン式の一応Tシャツに、ジーンズ。やっと人前を歩ける格好になった私は、またお婆様を羽交い絞めみたいに肩を組みながら城門に戻る。
「私たちはお友達だもんね、お婆様?」
「ああ、この者は大丈夫じゃて。兵どもよ心配は要らぬ。」
やっぱり門兵からだいぶ怪しまれたけど、城内に戻る事ができた。
「国王様に謁見すればいいんですよね。」
「そうじゃ、この廊下の一番先じゃ。そろそろ儂に回した腕を解いてくれんかいの。」
両脇に衛兵が整列する赤い絨毯の上を進む。壁には王家の紋章が大きく彫り込まれている。
玉座にあられるのは猛々しさと気品を纏う国王陛下。何だか、待ちくたびれて雑談中のご様子だった。
私とお婆様は並んで床に膝を着く。侍従が声を張り上げる。
「魔剣士召喚の儀、完了にございます!」
「異世界の次元よりよくぞ参られた、魔剣士よ。名をなんと申す。」
「陛下、この女子は己の名前を決めておりませぬじゃで。ミレフィアでいかがですかの。」
「お婆様。ミレフィア、良い響きね。どんな意味なのかな。」
「別によくある女子の名前の1つじゃ、それほど意味はないぞ。」
「ふ~ん、お花の名前とかお菓子の名前みたいで期待しちゃった。あっ国王陛下、ミレフィアと申します。」
「そうかミレフィアよ。魔剣士であるはずだが……んん、その、そなたはあまり露出の無い恰好をしておるのだな。」
「冷え性ですので。」
「あの、あれだ、勇ましい武具は持っておるのだよな? 確かに冷えそうではあるけど、ああいうほうが動きやすくて戦いに向いているのであろう?」
「売りましたよ、さっきのお店で。急所を護らない武具って何の意味があるのか説明できる人がいるなら呼んできて欲しいんですが。」
「あ~、まあ、いいんだけどさ。う~む。」
なんなの。その、コンビニで当たり前に買った男性週刊誌にグラビアページがなかったような残念そうなご態度は。
そうしていると、侍従が私に書簡とバッジをくださる。そして一包みの金貨・銀貨・銅貨。
「これが国王殿下から直々の冒険者承認証、そして贐である。」
「この国のために働くがよいぞ。」
「よかったのうミレフィア。これでそなたはギルドに登録できて依頼を受けられるし、宿にも泊まれるぞい。」
「わ~、良かった。……えっ私は戦いたくは無いんですけど。事務員のお仕事とかないですか。」
「そんなに立派な魔剣を持っておるじゃろうが。それこそは戦う冒険者の証じゃて。」
「さっきのTシャツ屋でこの剣も売れるなら一緒に売ってましたよ。うちでは買取できないって言われたんです。」
「好みに合わなかろうとも、さっきの武具もその魔剣も、そなたにはめっぽう扱いやすいはずじゃ。」
「ふうん。確かにこんなに大きくて重そうなのに、まるで竹刀みたいに振れちゃう~。」
「ミレフィアや、振るのも大概じゃが王の間で鞘を抜いたりしないでおくれや、見ちゃおれんわい。」
「でもねお婆様、Tシャツとジーンズってとっても動きやすいんですよ。私はこの格好が気に入っちゃった。」
「良い良い、ネレリラ老賢者。異国の者が作法知らずな度に取り押さえていては切りが無かろうからな。……なあ魔剣士ミレフィアよ。その布の服については、もう少し胸元をだな。」
「冷え性だって、私言いました。」




