エルゼとヒュドラー討伐と私
私たちが今回依頼受注した討伐相手は、ルオネレバ沼地方面に生息が目撃された魔物ヒュドラーの通常個体だ。
多頭毒蛇ヒュドラー。何匹もに分岐した体を持ち、毒牙で攻撃してくるだけでなく、個々の首を斬り落としてもすぐ再生する上に、場合によってはさらに分岐して首が増えていく。頭1つ分の相手だけでも十分危険で大変なのに、10個くらいのそんな頭がつながっていて回復してくる。
そうなってくると今回のように、それぞれの首を全部同時に魔力で封じ込める人数がいると頼りになるわけね。
それにしても、うちの魔法使いたちは可愛い。まるで、魔法学園の物語に登場するヒロインがそれぞれの個性で5人集まったような魔法少女たち。
「だから魔法使いさんの人数が揃っただけじゃだめで、みんなの協調性が大事なの。私たちも頑張るからよろしくね。」
「やった事ねーし。」「力を合わせるとか笑う。」「だめだったら逃げるわ。」
「ミレフィアちゃん、ベアトリーチェちゃん、みんなたのしくなさそう。……このこむすめどもはわれのはなしがいぺっとのいきえになるありかたをふふくとしておるのか。」
「エルゼちゃん、それどこで憶えたの~? 長いお喋りが今日もかっこいいわね。」
「戦います真面目に戦いますから。うぎゃああん。」「あたしたち今すごく楽しいんですよ。えひひ~~~い。」
沼地から這いずり出させた中型のヒュドラーは1体。私たちは岩壁の立つ泥の荒れ地にこの魔物を追い詰めた。
5方向に配置した魔法使いたちそれぞれが両手で2頭ずつに魔力を掛ける。
それでも毒牙で噛もうとしてくる首があるで、ベアトリーチェが全員の解毒に専念する。
そうなる前に、襲ってくる首から魔法使いたちを剣で防御するのがダルクルト3人分と、私ミレフィア2人分。
無防備な年長さんにベアトリーチェが加護を配る余裕はないので、エルゼは私に背負われたままだ。
首の1つ1つを斃していく段取りと、再生していく順番がせめぎ合う。延べ回数で言えばもう何十回その首を斬っただろうか。
「あんたたちやれてる? ほらセランツァ 、もうしょうがないわね。」
「あぁっフィオルネ何するの。今からその首やるとこだったっての。」
「向かってこない頭にも攻撃しなよ、ダルクルト君が大変じゃないの。」
「ベアトリーチェっちに治癒の手間かけた奴はあたしがヤキ入れるからな。」
「あんたたち喋ってる暇……って楽しい~。攻撃は一瞬も止めるなよっ。」
ちなみに私たちはだいたい同い年か、離れていても1~2歳違いです。
ギリギリ攻勢かな、と思っていたところ。ヒュドラーの1頭分とと紛らわしい1匹の蛇型魔物、スワンプサーベントが斜めから出現する。防御と治癒に専念するベアトリーチェに襲い掛かり、私の魔攻撃が急遽そのスワンプサーベントを狙う。ベアトリーチェはみんなへの防御を欠かさないため自分の身体で攻撃の体当たりを受けて、倒れてしまう。
私はベアトリーチェの助けに走りたい。
「ダルクルト! 1人で5人を守れる?」
「まかせろ。」
倒れ込んだベアトリーチェは失神しているようだ。ランクの低い私たち大勢に全力で防御をし過ぎだよ。
「ミレフィア……っは、妾とした事が。大丈夫、防御を再開します!」
「スワンプサーベントは私が片付けるから。」
ダルクルトは10個の首に戻ろうとするヒュドラーを一人で相手してる。
「うぅおおおああ!」
こっちを済ませてすぐ加勢するからね。
ああ……でもこの1匹の乱入で、ちょっと劣勢になっちゃうかな。
私もダルクルトもベアトリーチェも、まだ全力で戦っていられる。
だけれど魔法使い5人の持久力がちょっと限界か、ヒュドラーの再生能力を抑えきれなくなって、私たちは劣勢になってしまっている。
魔法使いの5人も自分で防御魔法を出せるので、私たちが守り切るかは完璧ではない。だから少しずつ彼女たちは疲弊と共にダメージをも受けている。
う~ん、ここは一時撤収かな? 見た感じは大丈夫そうに見えるんだけど。何か、こう……。
「怖い……できない、それなのに身体が勝手に。心が勝手に動く……みんなを助けるなら私はどうなってもいい!」
「怖い……できない、それなのに身体が勝手に。心が勝手に動く……みんなを助けるなら私はどうなってもいい!」
「怖い……できない、それなのに身体が勝手に。心が勝手に動く……みんなを助けるなら私はどうなってもいい!」
「怖い……できない、それなのに身体が勝手に。心が勝手に動く……みんなを助けるなら私はどうなってもいい!」
「怖い……できない、それなのに身体が勝手に。心が勝手に動く……みんなを助けるなら私はどうなってもいい!」
吐血し、泥の中に倒れ、5人が最後の力で手を合わせる。
変身シーン。さっきまでの地味な服から、何か脱いで鮮やかな5色の少女戦士となる。という表現もできるけど、つまりローブを脱いだだけですはい。
「スーパーマジカルフィジカルケミカルサブカルアターーーック!」
ああ、ちょっと低学年向けだけどなんて可愛いんだろう。
「あたしたち、一緒に戦えて幸せだったよ……。」
「あたしたち、一緒に戦えて幸せだったよ……。」
「あたしたち、一緒に戦えて幸せだったよ……。」
「あたしたち、一緒に戦えて幸せだったよ……。」
「あたしたち、一緒に戦えて幸せだったよ……。」
「みんな……すまないっ。」
ダルクルトが、仲間を失う悲しみに嘆き吼える。イケメンだなぁ。
「出血少量、内出血も含めて傷は塞がったし、脈拍は正常値に回復中ね。」
「お疲れさま、私たちの魔法使いさんたち。5人とも健康な状態だよ~まだどこか痛い? 泥だらけだよ~大丈夫?」
「カッコいいよね~あたしたち。」
「あ~こうしてしばらくしんでいたい。」
「魔法をスッキリ使い切ったわ~。」
「あのさ筋肉痛って名誉の負傷のうちだよね。」
「明日の朝こっぱずかしくて黙り合うやつだこれ。」
みんな目を開けないけど、口元が5人とも全員ニヤニヤしてる。




